耳に残るCMは、やっぱり覚えてるもので、上の句を言えば下の句・・・!みたいな勢いで発話されますね。
他には、「ひとよひとよに・・・?」「ひとみごろ!」
といったキレある語呂合わせも、いいですね。
残念ながら「1192つくろう鎌倉幕府」は出てこなかった。日本史はお嫌いでしょうか??
・・・そんなお手軽リハビリな日常の一コマでした〜
~11月の読書日記~
「冷たい校舎の時は止まる」 (辻村深月/講談社文庫)
辻村深月キャンペーン3月目。
この作品も、けっこうな分厚さですが・・・しかも主な登場人物が8人もいて大変ですが・・・ちょっと久々に深い読書体験をしてしまったかも知れません。
例えるなら、映画「ネバーエンディングストーリー」の主人公のように、物語の世界に入り込んでしまって、何かの用事で中断せざるを得なくても、「あ~もっと読んでいたい」・・・世界と自分が引きはがされるかのような一体感を覚えるのです。
ホラーな場面もとても上手くて、「怖い、怖い・・もう無理!」と思いつつ、もっと先を覗きたくなるのです。
これは一種の中毒です
雪に降り込められた校舎の中に、高校生8人の仲間どうしが閉じ込められてしまいます。
しかし、慣れ親しんだ校舎のはずなのに、何かがおかしいパラレルワールド・・・読者もろともこの世界感に引きずられていってしまいます。
ここで「精神世界に閉じ込められる」的な、にわかには信じがたい奇譚が苦手な場合は、いったん頭を切り替えてそういうものだと、仕切り直して読んで欲しいです。
自分の体験の延長上に無さそうな空想世界は読みたくないなぁ・・・なんて気持ちも分かるのですが、ここでやめてしまうのはもったいないです!
その理由は、「登場人物が多いなぁ」・・・の状態から「もっと彼らのことを知りたい」と、一人ひとりに共感し、涙させてしまう圧倒的な巧さに他ありません。
学園祭の終わりにクラスメートが自殺するという、ショッキングな体験をした8人。
大学受験も控えたナーバスな時期、大人と子どもの間に揺れる不安定な時期でもあります。
そしてみんな、めっちゃいい子です。
「辻村深月」/作者と同じ名前。つまりは作者が自己投影しているであろう、大切なキャラクターだと思います。不安神経症というのか?8人の中でもとりわけメンタルが弱く、拒食症に陥ったこともあり、仲間から非常に心配されている。そして深月自身は歯を食いしばって、仲間に心配かけまいとする健気さがある。
「鷹野」/深月の幼馴染。クラス委員長。典型的な優等生にして足も速いし人望も厚い、ハイスペック男子。
「菅原」/茶髪にピアス。登場シーンから停学明けで、一見素行不良のようで、口も悪いが、度胸があって優しい。子どもに慕われる天性のものがあるが、救えなかった命を思い、胸に刻んでいる。
「梨花」/あけすけな物言い、化粧&ミニスカート&高級ブランドバッグ。問題児・・・と思われた背景には、あまりに過酷な家庭環境があった。自分は頭が悪いと思い込んでいる。担任の榊先生が大好き。
「景子」/長身で中性的なイメージ。さばさばしていてクール。意外に家庭的な一面を持っているが、女性的な自分を否定している傾向がある。梨花とは幼馴染。
「昭彦」/クラスの副委員長。芯が強くブレないイメージ。女子人気が高いけれど、嫌味が無く、平等に優しい。中学時代に親友を失ったことで、密かに自責の念を抱えている。
「清水」/ぶっちぎりの成績優秀者にして、絵画コンクールでも評価される才女。誰からも一目置かれるが、自分は世界の狭い凡人に過ぎない、鷹野のような人物が天才なのだと、比較して実はギャップに苦しんでいる。
「充」/可愛がられるいじられキャラ。梨花のことが好き。自分には胸を張れるものが何も無いという、思いを抱えている。優しく気弱なイメージのせいか、不安定な女子を引き付けてしまう魅力がある。
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・・・といった、男女8人の子たちですが、とにかく自己否定、無価値観、劣等感を胸に抱えているのが、痛々しいんですね。若いというだけで、もう眩しいじゃないですか?オバちゃんになってみると、そんなに苦しまなくてもいいんだよ~と思える一方、あまりに文章でそれぞれのキャラを掘り下げるのが巧くて、強く共感しちゃう。
不思議な世界から、ある一定のルールで一人また一人と仲間が消えていきます。
消えた先にどうなるのか不安・・かと言って残されるのも不安・・・という状況の中で、これでもかこれでもか、と謎を引っ張り続けます!
即ち、学園祭で自殺したのは本当は誰なのか?このパラレルワールドはどこなのか?という謎です。
辻村深月作品らしく、謎は解かれ、切なくも清々しいラストが待っています。
ミステリーと深い人物考察に、感動した長編小説でした
「猫と漱石と悪妻」 (植松三十里/中公文庫)
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・・・やられたっ!この作品、油断して読んでたらまんまと泣かされた!
夏目漱石の生涯を、妻鏡子の目を通して描いた小説なんです。
夏目漱石の、いちいち面白い・・というか、良くも悪くもネタになる人生の起伏については、色んな本で知識を得てきました。漱石先生自らの文章でも読みました。NHKのドラマでも観ました。
ですので、目新しさも無いなぁ・・ぐらいに読んでいたのですが・・。
子ども達の健気な様子の描写になってから、にわかに涙腺崩壊!!
今で言う、うつ病のような症状になってしまった漱石は、自分でも押さえられない暴力で家族を恐怖に陥れます。
とうとう別居することになり、離縁も目前というところで、幼い子どもたちが訴えるのです・・・「一緒にパンを食べる時、いっぱい、いっぱい、お砂糖をつけてくださるの。・・・筆(←長女の名前)は、また、お父さまと一緒に、パンを食べたい」
うわ~ん
暴れる怖いお父さんは病気のせいなんだ、本当は誰よりも優しく愛情深いんだと、子どもは知っている。
妻、鏡子も自分が暴力の盾になればいいと、腹をくくり、その後も生涯、漱石を支えていきます。
ちなみに、この場面だけじゃなく、4〜5回は泣きました。
ますます夏目漱石が好きになるし、やっぱり鏡子さんは悪妻じゃなく、肝っ玉母さんであり最強賢母です。愛情に満たされなかった漱石がお見合いで選んだ、その目は確かだったのだと思います。
あ、もちろん「吾輩」の猫も出てきます。
すっかり寒くなってまいりました。
令和になっても師走はやっぱり忙しい!?
健康第一で過ごしましょう!
読んでくださってありがとうございます