2020年6月24日に弁護士法人の東京ミネルヴァ法律事務所(以下、東京ミネルヴァ)が負債51億円で破産したと報道され、その負債金額の大きさに驚かれた人も多いと思います。
士業は基本的に仕入原価がないビジネスのため、どうしてこのような負債額が生じるのかが謎です。
東京ミネルヴァはテレビCMやネット広告、全国での無料相談会のチラシ配布など、派手に広告を行うことでも知られていましたが、そうした過剰な広告も経営を圧迫したのでしょうか。

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ダイヤモンドオンラインによれば、東京ミネルヴァは依頼人からの預かり金を流用したうえ、同法人を実質的に支配する広告会社に30億円も還流させており、横領などの疑義もあるとのことです。

この規模の事件は雲の上の話として多くの事業者は無関係だと感じるところでしょうが、ネット広告に過剰出費して費用対効果が悪化しているビジネスも多く、そんな苦境から転落した先に待ち受ける地獄図として、そのようなリスクを避けるための教訓として記憶に留めたい話だと思います。

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この事件の経緯は6月26日に公開されたダイヤモンドオンラインの記事に詳しく書かれています。


消費者金融を利用したことがある人に、過払い金利の返還が受けられるとの広告を大量に流していたことで知られるが、破産の背景には、依頼者に支払われるべき過払い金、少なくとも30億円が弁護士法人を実質的に支配する広告会社により流用されてきたという、弁護士にあるまじき不祥事があることが分かった。

(略)

実は東京ミネルヴァが返還前の過払い金(預かり金)に手を付け始めたのは、かなり前からのことである。

 初代代表の室賀晃弁護士が15年に死去し、後継者の河原正和弁護士も体調不良で辞任した末、川島弁護士が3代目代表に就任した17年8月には「預かり金に4億円の穴があいていた」(同)という。

 だが、過払い金返還請求の依頼者は消費者金融との交渉をすべて東京ミネルヴァ任せにしているため、資金の返還が遅れてもそれほどせっついてこなかったようだ。

 川島弁護士は状況を打開するため、集客アップで収益改善を図り、依頼者へ返す資金を捻出しようとした。

(略)

川島弁護士はことあるごとに是正を試みたが、兒嶋氏は「広告をストップする」「派遣社員を引き揚げる」などと脅すような態度を取ったり、「一蓮托生よろしくお願いいたします」といったメールを送ったりするなど(右の写真)、一切逆らうことができない状況に追い込んだという。

(略)

前出の事情通によれば「兒嶋氏の実質支配下にある事務所は東京ミネルヴァだけではない」という。

 都内や大阪のいくつかの弁護士事務所と司法書士事務所が実質的に支配下にあるとされ、同様の問題が起きている可能性が高い。

 士業の資金管理や外部業者への業務委託のあり方、弁護士法人や司法書士法人の財務諸表の会計監査・公開制度の必要性なども含めた抜本的な制度改革の議論が求められる。


過払い金CMの大手弁護士法人、「東京ミネルヴァ」破産の底知れぬ闇|ダイヤモンドオンライン(2020年6月26日)



この記事内容が事実であれば弁護士業界にとっては信用を損なう大問題であり、すぐに厳正な対処が求められるものだと思います。

しかし、これに関連する事象は以下のリンク先記事のように2012年にも報道がされており、予兆はあったものの長年に渡り放置されてきた問題ともいえるようです。


紹介屋、顧客リスト…悪徳弁護士たちの“客集め”裏テクニック|ビジネスジャーナル(2012年7月29日)



事件の紹介屋や広告業者、事務員を派遣する人材派遣業者という形で士業事務所とのつながりを深め、営業や経理のコントロールを強めていく手口は以前から存在したものの、東京ミネルヴァの破産によって広く知れ渡る事態になったということのようです。

士業事務所ではない一般的なビジネスでも、広告会社からSEOやネット広告のコンサルティングの(迷惑な)セールスを受ける機会は多いものです。
また、通販ビジネスでのショッピングモール、飲食ビジネスでの口コミサイト、宿泊ビジネスでの予約サイトなど、集客のための広告をプラットフォームやコンサルタントに依存する実態もあります。

そうした集客や広告のための経費について、売上の50%を超えるような異常な事態を継続しているケースでは、広告費を工面するための自転車操業の様相を呈して本末転倒といえるでしょう。

そこは事業者と集客・広告のプラットフォーマー(コンサルタントも含む)との適正な距離感が必要なところであり、売上に対する集客・広告のための経費はせいぜい10%〜20%に留める自制心が求められるのではないでしょうか。

プラットフォーマーに集客・広告を依存して多額の経費を投入し続けるビジネスモデルは、とても持続可能性があるものとはいえません。
もちろんプラットフォーマーを利用して集客・広告の一部を補うのは適正な選択肢ですが、そこに全てを依存するのは高いリスクがあるということです。
例えそこに不正行為は無い場合でも、プラットフォーマーの集客力低下や広告費の急騰などの環境変化があった場合には、他の集客手段を持ち合わせていないとビジネスが早期に行き詰まってしまいます。

そこでビジネスのリスク管理の観点では、集客手段を複数確保したうえで、広告費が極端に高い割合を占めることが無いようにコントロールすることが必要です。
集客手段については、検索エンジンの自然検索流入で一定量を保つウェブサイトを運営すること、メルマガやSNSグループでの会員を確保すること、リアルの常連客を増やすことなど、複数の手段を維持することが望ましく、そのうえでネット広告を適正予算内で利用して新規客の獲得を目指すべきでしょう。

ネット広告を扱う企業の大多数は適正な事業者ですが、利用する事業者側がその広告に依存しきってしまう状態はよくないということです。
その程よい距離感を保って、複数の集客手段を維持できるように努力したいところです。

東京ミネルヴァの件については、最も闇が深い事例として記憶に留めておくものです。
同法人を破産に追い込んで、依頼人の預かり金が詳細不明で消費者被害も生み出した事件の真相が究明されることを願います。


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インターネット取引と消費者法」(PDF)


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