悲しみは時と共に薄れていくものだと思っていた。

 

悲しみの底には居つづけられないので、できるけ早く抜け出したいと頑張っていた。

一日止まる事なく動いていたら、気を紛らわせる事もできるし

夜になって涙が流れても、眠って起きたら、自動的に時は進行している。

そうして、生きていけばいいんだと。

 

ところが、悲しみからの脱出は、そう易々と計画通りにはいかない。

 

この空気、この温度

この風、この匂い

この空の色、この雨の音。

 

感じた事がある。

嗅いだ事がある。

見た事がある。

聞いた事がある。

 

夫と共に歩んだ年月が、体の中に染み込んでいる。

染み込んだ場面場面が浮かんでは消えていく。

 

声を出して泣く事は減って来たけれど、

涙は深々と流れ、頬を伝う。

少し前より、涙の量が増えている。

 

蹲る。

心が滞る。

 

そんな日々。

 

悲しみは、愛に似てる。

 

夫が恋しくてたまらない。