担任を拒否する学級 | 中学理科教師のつぶやき

中学理科教師のつぶやき

中学校理科教師として25年。ひとつの意見として、ここに私の日々考えたことを記録していきます。同業の方、現役生徒、現役親御さんとのネットでの交流もできるといいですね。

ご同業の方からコメントで質問相談をいただきましたので、回答させていただきます。

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こんにちは、いつも大変参考にさせてもらっています。
私はこの春に転勤をし、中学3年生の担任をしています。ただ指導方針をめぐって生徒から「去年はこうだった」「○○先生の方がよかった」といったことを言われ、「みんな先生のこと嫌いだよ」とも言われます。私の話は聞かない、注意してもおしゃべりが続くかと思えば、○○先生のときにはすぐに従います。毎日がストレスでたまりません。何かよい具体的な行動もしくは、考え方を変える方法がありましたらご教授ください。よろしくお願いします。

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コメント質問ありがとうございます。

私も経験があります。担任教師を敵視する学級。毎日、学校行くのが嫌になりますし、ストレスで吐きそうになりました。他の先生の言うことを聞いたり、わざわざ「嫌われている」とか「親も文句を言っている」などと言われて、それまで培ってきた教師としての自信も人間としても自信も貶められて苦しみました。

 

そんな時期に心がけたのは


①ともかく教育実践を真摯にやり通すこと

生徒は、素直でかわいいときもありますが、不満を持ってストレスを感じていると、そのはけ口を求めておかしなことをやり始めます。

先生に対して、「嫌われている」「○○先生の方が良かった」などと、言ってもしかたのない情報をあえて持ってくるのはその1つです。先生を動揺させて、自分の都合の良いようにルールや組織を振り回したいのかもしれません。そんなときは、自分が値踏みされてんなーと自覚しながら、どういう反応が理想とする姿なのか考えました。

私は、ときに感情的に、ときに冷静にいろいろなパターンで反応して、生徒のリアクションを見ましたが、結果として良かったのは、明るく前向きに受け流すのが後腐れがなくていいなと思いました。

「そんなこと言うなよ」とか「でも、○○だろう」といった否定や対決姿勢でいくと、生徒の仕掛けた権力闘争の舞台に自ら上がってしまうことになります。勝っても「先生はやっぱり支配的」負けると「情けない先生の話は聞くな」となってしまいます。生徒が感服するくらい良いことを言えたら良いのですが、なかなかね。

それより「まじ?気をつけよう。教えてくれてありがとう」とか「去年のやりかたがいいの?じゃあ任せるよ。○○時までに終わらせるのが目標ね」といった好意的協力的な姿勢でいきました。あくまでも、「私はあなたを信頼している、一緒に取り組もう、最終的には自分たちでできるようになるんだよ。それを援助するために私はいる」と言う姿勢を根っこに置いて働きかけをしたほうが楽しいからです。てっきり嫌な顔をすると思っていた先生が、へこたれず余裕かまして感謝までするので、生徒の方が意外な顔をするから面白い。生徒が、図らずも自主性を発揮してくれるから、それを見ているのが面白い。

それと同時に、授業の腕を上げるとか、指示の出し方を工夫するとか、準備をしっかりするとか教師として成長しなくちゃならないことを地道に努力して「俺がんばってんなあ」と自信が持てるようにしました。そうすることで、生徒の悪口や陰口、無視といった意地悪な攻撃に翻弄されないブレない自分を保持するよう努めていたのだと思います。頑張っているという確信、自信があると、自分の失敗や不手際についても素直に認めて謝ることができます。その姿勢を生徒に示すことも信頼関係を築くことの1つ、指導の1つと考えました。

教師の態度がブレないと、生徒は変なちょっかいをかけるのをやめます。つまらないからです。生徒の挑発に乗らず真摯に教育実践に向かう担任をないがしろにしていると、「悪い生徒」になってしまいます。どの生徒も「悪人」にはなりたくないので、怒ったり泣いたりする面白い反応がなければ、生徒は危険な教師いじりから手を引きます。生徒のいじりが続くのは、まだ自分が「みんなにとって無くてはならない良い先生」になりきれていないのです。本当にそうなるのは難しいけど、それっぽく「なりきる」のは、難しくないので挑戦した方が良いです。

②周りの先輩教師に相談すること

もうひとつは、周りの先輩教師に自分の苦しい状況や日々のエピソードを報告し相談していました。

これは、単純に弱音を吐いて力のある先輩に救ってもらうという受け身の姿勢ではありません。生徒の悪口を言って憂さ晴らしをしているのでもありません。組織的に指導にあたるためには、よい情報も悪い情報も組織で共有していなければならないからです。ですから、出来事事実と自分の気持ちは、分けて話しないといけません。

正直、自分のうまくいかない状況をまわりの先生に話するのは、自分のふがいなさを曝すようで嫌でした。しかし、状況がわかっていれば、まわりの先生もそれぞれの立場からフォローにまわってくれるのです。影で、担任を持ち上げるようなことを言ってくれるかも知れません。直接問題のある場面で、効果的なお説教をもらえるかもしれません。いずれにしても何にもわからないところに担当者でない先生が手を出し口を出すというのはあまり期待できません。良いアドバイスや先輩たちの経験を聞くこともできるかもしれません。あくまでも教師自身が楽になるために相談するのでなく、生徒に効果的な指導を行うための第1ステップとして相談するのです。

もちろん、職員室のメンバーによっては、何のフォローも期待できない場合もあります。それでも、何か大きな問題がおきたとき「なぜ、早く相談しなかった」と言われるのは担任ですから、まずは情報を共有するのがよろしいのです。

また、今の苦しい状況から逆転して楽しい学級を作り上げて見せつけてやりたいという野心もありました。誰もがさじを投げる状況からどこにも負けない信頼感と積極性をもった学級をつくる。そう考えるとわくわくしてきます。あとあと、あの立派な学級は、最初ひどかったんだよ。くす先生が苦労して指導したんだよ。と言われるためには、今の状況をみんなに知っていてもらう必要があります(笑)

私を拒否する学級は、いくつかありましたが、私は以上の2点を貫くことで指導しきってきました。卒業時、別れる生徒と話をしながら、「この生徒を罵ったり、脅迫したりして操作や支配をしなくてよかったな」と思うことを繰り返してきました。

卒業して成人した元教え子から、私の態度が一貫していたことを評価され意外に思いました。脅迫や支配をよしとしない私は、決して押しの強いキャラクターではないと自分で思っていたからです。でも、生徒の方から見ると、自分たちがどんな態度をとっても、同じ距離感と同じテンション、明るさで指導して変わらなかったのはくす先生だけだ。と言われたのです。

どんなに拒否され、逃げられ、あざ笑ったり、いじりを仕掛けてきても我関せず(ま、ときどき注意するけど)淡々と指導をあきらめなかったのが、そんな風に言われるとはびっくりですが、かなり嬉しかったです。

以上が、担任を拒否する学級で私が注意して実践してきたことです。

正直、人間は感情にアプローチされるのが一番ダメージを受けます。このダメージを自分なりに乗り越える術を身につけることができたら、最強なんだろうと思います。学校の生徒だけでなく、同僚や上司、保護者から精神攻撃(笑)を受けることもありますが、その場合でも上記2点の攻略法は王道ではないかと思っています。

質問から推察した状況について一般的な回答をいたしました。
個々のエピソードについての考え方や対処について、質問があればメッセージなどでお寄せください。

私の経験と考え方が参考になれば幸いです。

 

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