面会時間の午後2時になると、
デートの約束があるみたいな気がして落ちつかない。
昔と違ってここは
生け花とか食べ物は一切禁止。
手ぶらで出かける。
アイスクリ-ムでも口に入れてやりたいが、
持っていくのは夫婦のいとしい気持ちのみ。
昨日と余り変わりなし。
絶対に脱げない着衣を脱ごうとあばれている。
立ち上がろうとするが無理。
でも、
じっとしているよりは良いのかも、と。
床擦れにならない為にも。
手を握って耳元でささやくデ-トの言葉。
愛してる、なんて白々しい。
この現実では愛も遠ざかろうとする。
「お母さんは大事な人だから、 がんばってね。
こんな所へ入れてゴメンな、家にいたいよな」
分かっているのか、うなずく 。
手を握って沈黙のデートTIME。
別れ際が難しい。
「もう帰るよ」
耳元で言うと首をふる、手を離さない。
目をつぶって、手が離れるのを待つ。
明日もまた、ワンウェイで沈黙のデ-トが待っている。