幸町IVFクリニック院長 雀部です。
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幸町IVFクリニック


今日は、体外受精児の学業成績の話題です。今年の1月に発表された面白い論文を紹介します。凍結胚移植妊娠児の15-16歳における卒業成績を、新鮮胚移植妊娠児と比較しています。

Spangmose, A. L., et al. (2019). "Academic performance in adolescents aged 15-16 years born after frozen embryo transfer compared with fresh embryo transfer: a nationwide registry-based cohort study." Bjog 126(2): 261-269.

デンマークにて、1995~2001年の間に体外受精の結果生まれた6495人の児を対象としています。6495人の内訳は、凍結胚移植423人、新鮮胚移植6072人でした。

主要評価項目は、15-16歳で受ける卒業試験のデンマーク語、数学、英語、物理・化学それぞれの点数と総合点です。デンマークでは7ポイントグレーディングスケールという評価システムがあって、最低点は-3点、最高点は12点、2点以下は落第だそうです。

その結果、凍結胚移植妊娠児の成績は、新鮮胚移植妊娠児を比較して、デンマーク語、数学、英語、物理・化学それぞれの点数と総合点に有意差を認めませんでした。IVFとICSIを分けて、凍結胚移植妊娠児と新鮮胚移植妊娠児を比較した結果でも、有意差を認めませんでした。

最近、凍結-融解胚移植の症例が急速に増えてきています。患者さんの中には、一旦凍結することにより胚に何か影響がでないかと心配する方がいらっしゃいます。その影響を検証する研究というと、大抵は妊娠中~分娩までに起こる影響を検証したものが多くなります。この論文の様に、15-16歳の卒業成績を検証した研究は非常にめずらしいです。

この論文を読んでいて気になったのが、デンマーク語、数学、英語、物理・化学それぞれの点数と総合点すべてにおいて、有意差は出ていませんが、凍結胚移植妊娠児の方が素点数が高い傾向にあったことです。IVFとICSIを分けて検証したデータでも同じ傾向が出ていました。凍結と何か関係があるのでしょうか?凍結を選択するご夫婦の背景の差でしょうか?もちろん、有意差が出ていないので凍結胚移植妊娠児の方が優秀という結論にはなりませんが、気になります。