子どもの世話で疲れ

【ケース1】30代のAさんは小学校低学年の子ども2人を持つ母親です。在宅勤務をしながら休校中の子どもの面倒を見る毎日で、イライラすることが増えています。息抜きする時間がなく食事づくりも負担です。同じく在宅勤務の夫とは仕事のスペースをどう分けるかなどで意見が食い違い、時々険悪ムードに。そんな雰囲気が子どもに影響しないか心配しています。よく頭痛がするようになったのが気になるということでした。

子どものスマホが心配

【ケース2】40代の会社員Bさんは中学生の子どもがいます。在宅勤務を始めるまで気がつかなかったのですが、子どもは家で四六時中、スマホをいじっています。スマホ中毒ではないかと思うほどで、子どもの今後の教育や進学に不安を感じるようになっています。

子どもに対して罪悪感

【ケース3】30代のCさんは在宅ではできない仕事に就いていますが、小学生の子どもが2人いるためしばらくお休みしています。在宅勤務の夫に少しは子供の面倒を見てほしいのですが協力的でないため、一人で見ている状態です。学校に行けずストレスをためている子供たちを見るのがつらくて、一緒に散歩に出たり遊んだりしていますが、十分にケアしてあげられていない申し訳なさを感じ自分を責めてしまうことが増えたそうです。

「適応障害予備軍」の悩み

新型コロナウイルス感染拡大によって、私たちの生活環境は大きく変化しました。毎年4月から6月は入学・進学や就職、人事異動などで環境が変わり、適応障害になる方が増える時期と言えます。今年はこうした通常の環境変化に加えて新型コロナの影響により「適応障害予備軍」のような方の悩みを聞くことが増えました。

適応障害とは

適応障害とは、はっきり特定できる環境要因のストレスが起こってから3か月以内に起きる心身のさまざまな症状です。自律神経の乱れから生じる身体の症状として不眠、動悸、胃腸障害、耳鳴り、頭痛、めまいなどが現れます。精神的な症状としてうつ状態、不安などの気分障害が起こります。その対策は大きく3つの柱があり、環境を改善すること、自分の視点や意識を変えていくこと、そして周囲のサポートです。

適応障害の原因

新型コロナの影響による適応障害の背景として

・自分の時間がない

・子どもの教育やストレス

・生活リズムの変化

が挙げられます。

適応障害を防ぐ対策

【対策1】体内時計をキープする

外出自粛や休校という環境は自分では変えられませんが、自分でできる環境改善はあります。光療法・生物リズム学会の国際学会から先日発表された「新型コロナ感染症の世界的流行下におけるこころの健康維持のコツ」では、「体内時計」が正確に働くよう努めることでつらい気分をやわらげることができるとしています。体内時計は心地よく過ごすために役立っている脳のメカニズムで、このメカニズムが乱れると心身の状態が悪化します。

規則正しい生活は、体内時計の働きをスムーズにします。そんな生活を送るためのポイントをいくつかご紹介します。親子で一緒に始めてみてはいかがでしょう。ここで大事なのは、単に「同じ時間に起きなきゃダメ」と言いつけるのではなく、「こうした習慣がなぜ大事なのか」をお子さんにきちんと説明して楽しく習慣が作れるようにしてください。

□毎日、同じ時刻に起きる

□朝の光を浴びる(朝日の光を浴びてから14~16時間後に睡眠のためのホルモン、メラトニンの分泌が促される。また朝日を浴びると、その後の行動が活性化する)

□一日2時間は窓のそばで過ごす。あるいは太陽の光を浴びる時間を作る

□在宅の仕事や勉強のスケジュールを決め毎日同じ時間に行う

□毎日、できるだけ同じ時間帯に運動をする

□毎日、同じ時間家事代行サービスランキング10選《家事代行のプロが実際に利用して徹底比較》に食事をする

□昼寝は避ける。どうしても必要なら30分以内

□夜はPCやスマホを見ない(ブルーライトで睡眠の質が低下)

□毎日、同じ時間に就寝する

 

 

【対策2】パーソナルタイムを作る

子どもの世話など、しなければならないことに常に意識を向けていると「個の時間」が失われます。自分の心と向き合う時間がなくなるとゆとりまでなくなり疲労感を感じるものです。一人で散歩する時間を決めておいたり、「お母さんのお勉強タイム」として一定時間を確保したり、毎日少しでも一人で過ごせる時間を作るように工夫してください。母親や妻という役割から精神的に離れ、自分の気持ちと向き合う時間を作ることがゆとりを生み出します。私の場合は、森の中のイメージで作られた環境音楽を10分ほどかけてストレッチするのですが、この時間を自分のパーソナルタイムにしています。

【対策3】子どもに対する視点を変える

新型コロナウイルスの感染拡大は2022年くらいまで長期にわたり私たちの生活に影響するのではないかという予測がハーバード大学から出されています。こうした長期にわたる生活の制限は、これまでのハウツー的なストレス対策では乗り切るのが難しいという気がしています。

子どもの教育やストレスに対して親として十分なケアができていないという罪悪感や、これまでのような教育ができないという不安、なぜこんな目にあわないといけないのかというやり場のない怒りの感情をどう解決するかは、これまでとは異なる視点からアプローチすることが必要です。

◎子どもの自己肯定感を育てるチャンス

親は子どもの生活から困難さを取り除こうとして頑張っているはずです。しかしコロナ禍中では取り除くことができず、これが親の精神的疲労と罪悪感―子どもに対する申し訳なさにつながっています。この視点を少し変えてみてはいかがでしょう。子どもは親からしてもらうことだけを望んでいるわけではありません。自分ができることをして親など他者を助けることで自己肯定感は育ちます。子どもに手助けしてもらえることを見つけて頼む、例えば料理や掃除など何かできることをしてもらい感謝するということは、子どもの心の成長と自立を助けることになるはずです。

◎感情表現はクリエイティブな活動で

親はつらい、不安だという感情を子どもの前では見せないように気を張っていると思います。気持ちを抑え込んだままで過ごすと気分がうつ状態になったり我慢しきれず感情爆発になったり、体に症状を起こしたりします。

一方、子どもも親のつらい気持ちを察して自分も我慢しなければと思う場合もあり、学校に行けず自由に外出できないストレスをどう表現していいかわからない状態に陥りがちです。特に子どもはボキャブラリーが少ないので言葉で気持ちを表現することが苦手です。親も子もいかに感情を表現するかがコロナ対策の大きな課題です。

身体を動かすと身体を通して感情表現できるのですが、残念ながら外出自粛で十分にはできません。そこでほかのクリエイティブな活動を通じて感情表現することにぜひ視点を向けてみてください。例えば、

・絵を描く

・新しい料理に挑戦する

・物を作る(かわいいマスク、おもちゃなど)

など子供が好きで興味があることをテーマにして、与えられるのではなく自分で作り出して楽しむことが感情表現の場として大事だと言えます。

◎学びのスタイルを変えて親も成長

学校や塾という学びの場がない場合、インターネットを利用した学習も盛んになっています。こうした学びは大切ですが、親子で一緒にできる学びをお勧めしたいと思います。今回の新型コロナ問題から学べることはたくさんあります。例えば「手洗い」。

・なぜ手洗いするのでしょう?

・何秒くらい洗えばいいの?

・石鹸を使うのはなぜ?

これを子どもに説明できるでしょうか。ただ単に「手を洗いなさい」と言うのではなく、「なぜ洗わないといけないのか」という科学的根拠をわかりやすく説明することは、親自身の知識の整理と説明をきちんとする習慣のトレーニングになります。

そのほか「ウイルスと細菌の違い」「人と人がなぜ近づいてはいけないのか」「くしゃみするとどのくらい飛沫が飛ぶのか」「ウイルスはどこにどのくらい付着するのか」「消毒しないとどのくらい生きているのか」など生物や科学を学ぶチャンスでもあります。

テレビのワイドショーの知識ではなく厚生労働省や学会のホームページを親が読んで正しい知識を勉強し、子どもの年齢に合わせて説明することも良いと思います。子どもが興味を持ち能動的に知りたいと思うことが何か見つかるかもしれません。子どもが何に好奇心を向けるかに注目してください。好奇心やわくわくした感情はうつを防止します。

ストレスが多い日常で、できないことを嘆きたくなりますが、今できることを工夫しようと意識すると気分は改善するものです。生活リズムをキープすることからスタートして、親も子も適応障害を予防していただきたいと思います。

 

 

 

家事代行も、お母さんに、サプライズになるでしょうね。