今回から数回にわたって、ブライトリング・ナビタイマーに搭載されている回転計算尺の利用方法を解説します。
 
「そんな時計持ってないし。」「21世紀に何で計算尺?」更には「計算尺って何?」
と思った貴方! 全く正しいです。
 
回転計算尺が搭載された時計が手元にあるより、はるかに高度な計算が簡単にできる計算機アプリが標準搭載されたスマートフォンが手元にある確率のほうが遥かに高い!
 
それでも、この記事を書いているのは、外出禁止期間中に勉強したことを形にしたいと思ったから。そして将来のいつかブライトリングの時計だけを身につけて計算が必要な時が来るかも知れないから。(ない!ない!笑)
そして、使い方を知ることで、この腕時計をコレクションに加えたいと思ったからです。
 
外出自粛で時間が有り余っているなら、ここで勉強しなければ一生知ることもないだろう回転計算尺の使い方をぜひ学んでみてください。
 
第一回は、基本中の基本の掛け算と割り算の方法そして通貨換算を勉強しましょう!
ポイントは対応する外周の目盛りと内周の目盛りの比率が全て同じことです。
 
 
さて、写真の例を使って計算をしてみます。
3時位置付近の内周の赤字の「10」が計算を行う際の基準になります。
写真は 30×? の例。
外周目盛り「30」(掛ける数字)を内周目盛り「10」に合わせます。
次に「掛けられる数字」を内周目盛りから選ぶと、対応する外周目盛りが答え(積)です。
 
30×20=600
 
6時位置の内周の「20」の外周目盛りを確認すると赤字の「60」。(赤字であることは意味がありません。)
 
30×28=840
 
8時位置の内周の「28」の外周目盛りを確認すると「84」。
 
「600」「840」ではなく、「60」「84」であるのは、計算尺の特徴で限界です。
計算尺の目盛りは10〜99までしかないので、計算に使う数字は下桁を省略して3桁にする必要があります。従って、正しい答えを知るには概数を暗算しなければいけません。
正しい答えが「6」「60」「600」「6000」それ以上かは計算尺は教えてくれません。
 
30×28、300×2800、3×280、30×2.8  計算尺では全て同じ組み合わせで計算します。それでも電卓などがなかった時代には、暗算が難しい大きな数値の計算などで筆算をすることなく概算が簡単に計算できるので十分便利でした。
 
計算尺が実用品だった1960年代。アポロ宇宙船を月まで往復されたヒューストン指令センターのスタッフ(殆どが物理学・工学・理学などの博士!)が宇宙船からの連絡を受けて一斉にポケット計算尺を取り出して計算する印象的な映像が残っています。
 
 
割り算の場合も、計算の基本原理は一緒です。外周目盛りを「割られる数字」、内周目盛りを「割りたい数字」に合わせると、内周の「10」に対応する外周目盛りが答え(商)になります。
 
120÷4=30
 
上の写真では、10時位置の外周が「12」と内周が「40」、内周目盛り「10」に対応する外周目盛りは「30」になっています。
 
 
 
 
当然、割り算の答え(商)は上2桁しか分かりませんので以下の数値は概算になります。
上の写真の場合
 
595÷24=24.7917
 
7時位置で「59.5」と「24」を組み合わせと、内周目盛り「10」が「24.8」付近を指しているのが読み取れると思います。
 
電卓で簡単に正確な数値を計算できる現代人は曖昧で不安を感じますが、実生活では概ね十分な精度です。
 
例えば何かの金額を計算していて正確な答えが162万8千円の場合、計算尺では160万円までは正確な数値、2万8千円は矢印の位置からの推測値。目盛りとの位置関係で2〜3程度とは読み取れますので許容可能な範囲でしょう。
 
 
最後に海外在住者や海外旅行時に便利な通貨換算への利用方法を説明します。
見方によっては、この通貨換算こそが現代人にとって最も役に立つナビタイマーの利用方法かもしれません。
 
特に東南アジアの数カ国を周遊する場合など、国ごとに通貨単位や両替レートは様々。土産物店や屋台などで電卓で計算するほどの大きな買物でない場合、腕時計で円換算金額をさっと確認できるのはとても便利です。土産店などで電卓を出すと買う気を見透かされて値引き交渉にも不利(笑)
 
2枚目の写真は、マレーシアでの利用例。この日のレートは 1リンギット = 24.8円
内周目盛り「10」に外周目盛り「24.8」を合わせます。
あとは換算したいリンギット価格を内周目盛りから探せば、外周目盛りが円価格です。
 
大きな金額は上3桁にするので、どんな金額でも換算できます。円価格も3桁表示となるので実際の金額は1円がリンギットの30倍程度であることから推測します。
 
私の場合、両替レートは日々変動するので、通常は「30倍して1割引」(1リンギット=27円)と暗算している場合が多いですが、最近は円高で「100倍して4で割る」(1リンギット=25円) 整数の場合は良いですが、スーパーなどの端数のある数字は少し面倒。また、高額な買い物では誤算が思いのほか大きくなるので、ナビタイマーのような簡単な換算器は便利です。
 
この換算機能、実は長さや重量など一定比率の換算なら何にでも応用可能です。3個80円の餃子を40個買った場合の金額など。1個で売ってくれるかは別問題ですが。(笑)
 
次回は、距離換算を説明してみます。