電撃ブックハンター

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正しく恐れるために

2020-04-19 22:34:04 | 日記
私が勝手に勉強学の先生にしている佐藤優氏は、外交官としてロシアとの北方領土返還交渉に関わっていた時に権力争いに巻き込まれ、冤罪で東京拘置所に512日間も拘留されました。
絶望の事態ですが、師はその状況を最大限に利用したそうです。
すなわち、独房の中で読書と思索に没頭したのです。


この時の詳細は「獄中記」に書かれていますし、最近刊行された池上彰氏との共著でも触れられています。
佐藤師曰く、
「独房は最高の読書空間」
だそうです(笑。

●「獄中記」 佐藤優・著 岩波現代文庫



●「知的再武装 60のヒント」 佐藤優・池上彰 共著 文春新書



普通に生きているとなかなか独房に入れてもらえませんけど、コロナ騒ぎで家にいるしかない現況は閉じ込められている様なものです。
だったら我々もこれを最大限に利用するのが吉でしょう。
という訳で、まずタイムリーな分野から始める事にしました。


まずはコロナにやられてしまっては元も子もないので、正しく防ぐ知識を身に付けたい。
そこでこの1冊。

●「新型コロナウイルスの真実」 岩田健太郎・著 ベスト新書



ダイヤモンド・プリンセス号事件で一躍有名になった岩田氏ですが、そもそも感染症対策の専門家として世界中で活躍してきたプロ中のプロです。
この本の中では新型コロナ対策としてシンプルに2つのポイントを挙げています。
それは「距離」と「」です。


新型コロナウイルスは感染した人から咳やクシャミ、あるいは会話で「飛沫」として飛び出し、それを体内に取り込んでしまうと伝染るので、直接「飛沫」を浴びない距離を保つ事。
また、飛沫が飛んだ所を触れると手を通じて体内に入るので、とにかく「手を洗う」こと。
人間は何をやるにも手を使うので、手にウイルスが付いているという前提で行動する事が重要だそうです。
今、テレビで盛んに言われているのは、感染症予防のデフォルトだった訳です。


麻疹のように空気感染する病気だと家にいても罹ってしまうかも知れませんが、新型コロナは飛沫やウイルスが付着したものに注意しておけば大体OK。
逆に言ったら家に籠もっていれば伝染るチャンスがないのです。
だからこそ現在、外出規制みたいなものが掛かっているわけで、フラフラ遊びに行ってしまう人はそこら辺を理解していないのではないでしょうか。



岩田氏はダイヤモンド・プリンセス号に正式なスタッフとして追加で乗り込んだのですが、2時間で追い出されてしまいました。
その詳細もこの中で書かれています。
お役所の仕事、というかメンツにこだわって本質を見失う日本人ならではの悪癖が現れているように思います。


それからもっと核心的な話も書かれています。
「安心」を求める事の弊害、間違っていたらすぐに認めて正すこと、本当の勇気とは何か、などストレートに心に響いてきます。
新型コロナは迷惑ですけど、そのおかげで岩田先生に出会えたので、これも巡り合わせというものでしょう。



その他、これらの本を読み直してみました。


●「感染症と生体防御 ’08」 河原和夫・岸本忠三・岩本愛吉 編著 放送大学教材




●「公衆衛生’15」 田城孝雄・横山和仁 編著 放送大学教材



ご存知の方も多いと思いますが、放送大学はテレビ・ラジオ・インターネットを利用した授業を行う正規の通信制大学です。
看護師の資格を取るための補助的なカリキュラムもあって、これらはその講義に使われるテキストですので、医療従事者が身に付ける正しい知識を学べます。
ちなみにBSやラジオで誰でも放送大学の番組を視聴できますし、大きな書店やアマゾンでテキストを購入できますので、学位には興味はないけど知識は吸収したい人には超オススメです。
私も以前は放送大学の学生でしたけど、リーマンショックで金がなくなってからはテキストだけ買って拝聴しています(笑。


「感染症と生体防御 08」はちょっと古いですが、免疫システムの基礎や代表的な感染症について一通り展望できます。
放送大学の授業の後継は「感染症と生体防御 18」で新しいテキストも出ていて、前述の岩田先生も講義を一部担当されていますので、最新の情報を得たい方はこちらを読んでみてはいかがでしょう。


ただ最初の免疫システムの話が全く前知識がない人にはとっつきにくいかも知れないので、免疫について分かりやすい本として別口でコレをおすすめします。

●「絵でわかる免疫」 安保徹・著 講談社




「公衆衛生」はもうちょっと視点を高くして疫学や健康保健について俯瞰しています。
昔、コレラがイギリスで流行った時にスノウという医師が実態を見極めて感染を止めた事がきっかけとされる疫学は、今でも基本は同じです。
その手法を基礎から学べる一冊です。


その他、本ではないですが、インターネット配信のビデオニュース・ドットコムの番組、インタビュー動画は質・量ともに充実しています。
月550円(税込み)で全ての配信を視聴できます。
テレビや新聞では知ることができない様々な課題について徹底的に議論する、見る人は必ず見ている(中央官庁の役人も(笑)番組ですので、これを機に会員になってみてはいかがでしょう。


新型コロナという脅威は今の所、逃げ回る以外どうする事も出来ません。
今後も長い付き合いになってしまうのでしょう。
別の機会にウイルスについての本も紹介しますけど、この世界はウイルスで満ち溢れており、人間が活動範囲を広げれば広げるほど同じ様な騒ぎは起こります。
だったら正しく恐れて正しく回避するしかありません。


私の場合、せっかくの独房シチュエーションを活かして溜まりに溜まった未読の書を読み、思索し、自分のものにしていこうと思います。
貧乏人の強みは「転んでもタダでは起きない」ところですからね!(笑










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