働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 水町委員発言

2018年11月26日 | 雇用類似の働き方
厚生労働省の雇用環境・均等局が実施する第1回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」が2018年10月19日、中央合同庁舎第4号館会議室で開催されました。なお、検討会の趣旨、検討事項、委員名簿等は開催要綱(PDFファイル)を御覧ください。

雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 開催要綱(PDF)

第1回 雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会
水町勇一郎(東京大学社会科学研究所教授)委員発言
東京大学社会学研究所で労働法を研究している水町(勇一郎)と申します。よろしくお願いいたします。

非雇用型・擬似自営業者的な労働者の増加
皆さんは御存じのように、シェアリングエコノミーやプラットホームビジネスの発展の中で、世界的に非雇用型、擬似自営業者的な労働者が急速に増えて、それは労働法の観点から言えば、最低賃金法や労災、更には社会保険の事業者負担のないような形態の労働形態、労働者が急速に増えています。

日本でも同じように、イノベーションとの関係で、世界に比べて早い遅いというのは若干あるかもしれませんが、大きな流れとしてはシェアリングエコノミーとかプラットホームビジネスがどんどん発展していくことが考えられます。既に、伝統的には運輸業、出版業、小売業などで、こういう形態の人たちは日本でもたくさん存在していて、これから他の業態にもかなり広がっていくのではないかと思われます。

更には、今回働き方改革関連法案が成立し、これから施行を迎える中で、かなり労働法の保護強化が進んでいく中で、コスト削減を求める動きとして、このような動きが加速していくことが容易に予想されるわけです。

そのような中、どういうことを行っていくべきかという点で、先ほど局長から適切な保護という話がありましたが、もちろん、公正労働条件というので、労働者に適切な実態にあった保護を及ぼすということも大切ですが、他方では、公正競争条件、公正な競争条件を整えて、どういう働き方であっても、それが健全な働き方として労働市場の中でバランス良く発展していくことも大切なので、労働法の保護という観点からと、健全な経済政策や労働市場政策として、健全に発展をするためにどういう競争条件を設定すべきか、ということを考えることが必要かと思います。

労働者概念そのものをどう考えるか
制度設計として簡単に、私自身が今思っている方向性としては2つあります。1つは、労働者概念そのものをどう考えるかということです。

これまで伝統的に、指揮監督とか人的従属性と言われるものに重きを置いてきた労働者概念が、指揮命令はしないが労働者という、例えば裁量労働者ですが、裁量労働者はほとんど現場で指揮命令をしませんが、労働基準法や労働法の適用がある労働者と言われていまして、指揮命令は逆にしないけども、成果を上げて、売上げだけ上げてこいというような労働者が世界的に増えていて、もう指揮命令をしなくても、逆に指揮命令の責任は本人任せにして、結果だけ取ってこいというような実態としての労働者が世界的に増えているので、労働者概念について、余りに指揮命令とか人的従属性にこだわっていくと、労働者の底が簡単に抜けてしまうという事態なのです。世界的に人的従属性も含めながら、更には経済的従属性をどう労働者概念の中に入れていくかということが、大きな流れとして言われています。

日本では、経済的従属性を取り込んだ概念として、労組法上の労働者というのが労基法と違うということで定義されて運用が始まっていますが、労基法や労働契約法上の労働者について、人的従属性を重視し続けていいのか。労働法の本丸であるところを、経済的従属性という観点からどう基盤を見直していくかということが、世界的に行われている重要な課題なのです。

ただ、これはかなり骨の折れる作業になります。これは法律で全体を変えていくか、それとも実態に合わせて判例等、個別にだんだんシフトしていくかというやり方は世界でいろいろありますので、それに対してこの検討会でどういうふうな方向性を示すか、示し方は幾つか工夫はあると思いますので、これは機会があればこういうお話をしていきたいと思います。

労働者概念自体を変え労働法の構造を大きくシフトする
もう1つが、労働者概念自体を変えて、労働法の構造自体を大きくシフトさせていくことを見据えながら、優先度の高い事項については、なるべく早く各法、個別の立法等の整理をしてきちんと対応していくということです。

例えば契約条件を明示するとか、報酬がきちんと支払われるという履行を確保するとか、更には安全衛生・労災というのは、各国で優先事項の高いものとしてはやられておりますが、そういうものについては、各法を部分的に修正していくことによって射程カバーを広げていくという工夫の仕方もあるかもしれません。そういうことを視野に入れながら、政策的に、ただこれはかなり大変な大きな作業にはなりますが、社会の動きを見ますと、5年も10年も掛けてやっていくと、あっという間に労働法とか競争条件の底が抜けてしまう事態になってしまいますので、社会の動きを迅速に察知しながら早く検討を進め、講じることができるところはなるべく早く講じていくことが必要ではないかと私は思います。

何らかの形で貢献できればと思います。ありがとうございます。(第1回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」議事録より抜粋)

なお、第2回「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」は、2018年12月3日、厚生労働省会議室にて開催される予定ですが、)<非公開>かつペーパーレスで開催されます。

議事内容は「雇用類似の働き方に関する関係者からのヒアリング」ですが、<非公開>の理由は「公開することにより特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある」ためだとされています。(厚生労働省ホームページより)

第1回雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会 議事録(PDF)

雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会のページ(厚生労働省ホームページ)


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