働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

持続化給付金と持続化給付金事務再委託問題

2020年06月02日 | 持続化給付金
持続化給付金とは
持続化給付金とは「感染症拡大により、特に大きな影響を受けている事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧となる、事業全般に広く使える、給付金」、また「農業、漁業、製造業、飲食業、小売業、作家・俳優業など幅広い業種で、事業収入(売上)を得ている法人・個人」が対象。持続化給付金の申請は、2020年5月1日より、申請受付を開始。

持続化給付金事務局とは
東京蒸溜所 蒸溜日誌が作成した「持続化給付金事務局の謎めいた正体を考える(要約版)」によると

持続化給付金の事務局に選定され、国から約769億円の事務費が支給される「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」。公式HPも持たない謎の団体の正体を探ってみたら、電通出身の理事やパソナ出身の職員などが出てきて、あらビックリ。てっきり、電通やパソナ、トランス・コスモスにお金を流すためのコンソーシアム(共同事業体)かと思って深掘りしたら、それどころか、経済産業省の主導による新手の「外郭団体」だった(と思われる)というお話です。

では「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」とは?

一般社団法人サービスデザイン推進協議会とは
再び東京蒸溜所 蒸溜日誌の「一般社団法人サービスデザイン推進協議会とは何者か。「持続化給付金」事務局の謎めいた正体を考える。」によると

2兆3,176億円という壮大な予算額を計上し、2020年5月1日より受付が開始された政府の「持続化給付金」。所管は経済産業省(正確にはその外局たる中小企業庁)ですが、経産省はその執行にあたって「民間団体等に委託する」旨を、当初から明らかにしてきました。
民間団体への委託規模としては、類例を見ないほどに巨額のお金(しかも国費)が動く、今回の持続化給付金。しかも委託先にはその事務費(手間賃)として約769億円が支給されます。政府による布マスク配布事業の2倍近いお金が、一団体に流れ込むというのです。
令和2年(2020年)補正予算案のもう一方の目玉であった10万円の一律給付(特例定額給付金/総務省所管)については市区町村を介しての給付となりましたので、民間委託はこちらのみ。委託先はどこが選定されるのか、(わたくしどもの)注目を集めておりました。
明けて2020年5月1日。
持続化給付金 公式ページがオープン。申請方法の案内・電子申請のガイダンス等などの情報を見つつ、トップページをスクロールしていくと、一番末尾に委託先の表示がありました。
そこに表示された持続化給付金の政府委託先の名は「一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」。経産省肝いりの「おもてなし規格認証」の元締め(認定団体)として知られる民間団体です。これまた経産省肝いりの「IT導入補助金」の事務局として、過去数年間にのべ数十万社の中小企業を相手としてきた経験があり、数百万の中小企業および個人事業主を相手とするであろう、今回の事業については打って付けの選定とも思われます。
ただ、この団体は不思議な組織で、これだけ大規模な委託事業を手がけながら、団体自身の公式HPを持っておりません。service-design.jpの名でURLを見てみると、そこにあるのは上述の「おもてなし規格認証」の公式ページ。軽く調べてみても、組織自体が一体どういう構造なのかが全く判然とせず、狐につままれた様な思いでした。―以下略―


「給付金」委託費 電通、パソナなど法人設立3社で分け合う
東京新聞(電子版)が『「給付金」委託費 電通、パソナなど法人設立3社で分け合う』との記事を配信(2020年6月2日 07時14分)。

中小企業に最大二百万円を支給する持続化給付金で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会から事業の再委託を受けた広告大手の電通がさらに、人材派遣のパソナやIT業のトランスコスモスに業務を外注していたことが分かった。法人の設立に関与したこの三社が給付事業の大部分を担っており、実体に乏しい法人を経由して、国の委託費を身内で分け合う不透明な構図が浮かんだ。(森本智之、桐山純平)
経済産業省が一日、国会の野党合同ヒアリングで明らかにした。法人の職員全員が、三社を含む設立に関与した企業からの出向者であることも判明。給与は法人と元の企業の双方から出ており、野党議員からは法人の存在意義を問う声が強まった。
 法人から七百四十九億円で業務の大部分の再委託を受けた電通は、給付金の申請の受け付け業務を四百五億円でパソナに外注、トランスコスモスにもコールセンターの運営を任せていた。給付金の振り込み業務についても、法人が電通子会社の電通ワークスに外注するなど複雑な取引関係が明らかになった。
電通やパソナはこれまでの本紙の取材に、「経産省の事業なのでコメントを控える」としている。
経産省は、電通の役割を「業務全体のコーディネート(調整)」と説明。だが、法人の役割についてもこれまで同様の説明をしてきており、電通と法人の役割が重複することで税金の無駄遣いになりかねない。野党議員は「なぜ法人を経ずにまっすぐ電通と契約しないのか」と批判した。
厚生労働省の元官僚で行政に詳しい神戸学院大学の中野雅至教授は「緊急性がある事業でも税金の無駄にならないようにしなければならない。法人の介在で税金を中抜きしているような構図になったことについて、経産省には説明責任がある」と指摘した。


持続化給付金事務「再委託」をめぐる疑惑
立憲民主党国会情報+災害対策のツイッターアカウントは5月29日に「川内博史議員 持続化給付金の事務委託団体『サービスデザイン推進協議会』について経産省からヒアリングを行った。776億円の予算に対して769億円で落札 769億円のうち749億円を電通に再委託 社員は14名しかいない 税金の無駄遣いがないか調査を進める」とツイート。

また、立憲民主党国会情報+災害対策のツイッターアカウントは6月2日に「本日6/2(火)9:00~(6月2日午前9時~) 野党合同『国対ヒアリング』を開催します。 持続化給付金の委託団体『サービスデザイン推進協議会』による再委託が、税金の無駄遣いや、給付が遅れる原因となっていないか、経産省、財務省、総務省、会計検査院よりヒアリング」とツイート。この野党合同ヒアリングについては、NHKニュース(電子版)が次のように報じた。

「持続化給付金」をめぐる野党側のヒアリングで、出席した議員が国から業務を委託された社団法人が再委託している理由をただしたのに対し、経済産業省は、社団法人が給付金の振り込みを行い、再委託先が申請の審査などを担っていると説明しました。
新型コロナウイルスの影響で売り上げが大幅に落ち込んだ中小企業などに給付される「持続化給付金」をめぐって、立憲民主党など野党側は、(6月)2日国会内で、経済産業省などからヒアリングを行いました。
この中で、出席した議員は競争入札の結果、国から業務の委託を受けた、一般社団法人のサービスデザイン推進協議会が、業務のほとんどを大手広告代理店の電通に再委託した理由をただしました。
これに対し、経済産業省の担当者は、社団法人は給付金を実際に振り込む業務を行い、再委託先の電通は、申請の受付や審査、広報などを担っていると説明しました。
一方、議員が社団法人の業務体制などを確認する必要があるとして、入札の際に作成された実施計画書を示すよう求めたのに対し、経済産業省の担当者は「企業秘密に関わることもあり、公開できるかどうか検討が必要だ」と述べました。―以下略―(NHKニュース電子版『「持続化給付金」再委託 野党側のヒアリング』2020年6月2日 14時10分配信)


経産委員会で持続化給付金集中的質疑(6月3日)
立憲民主党国会情報+災害対策のツイッターアカウントは本日(6月2日)「経産委員会 田嶋要理事・山岡達丸理事 ・明日6/3(水)9:00~(6月3日午前9時~) 経産委員会(衆議院・経済産業委員会)で持続化給付金について集中的に質疑をする。・ほとんど実態がない組織によって国民の貴重な税金が無駄遣いされていないか質す。・サービスデザイン推進協議会の理事長を、参考人として出席を要請したが、与党から拒否された」とツイート。

なお、立憲民主党の逢坂誠二議員は6月2日にツイッターアカウントで「安倍政権は公文書の廃棄、隠蔽、改竄、捏造を繰り返しています。事務遂行能力のない団体に持続化給付金事務を委託し、その団体設立に関与した電通、パソナ、トランスコスモが再委託や外注を受けていた事実も明らかに。情報操作や公文書の出鱈目な扱いを繰り返す安倍政権は退陣すべきです」とツイート。

追記(2020年6月4日)
久原隠氏が「持続化給付金事業を受託したサービスデザイン推進協議会は、電通に丸投げしただけで人件費として1・7億円を手にした。21人で山分けしたとすると、濡れ手に粟で800万円。ふざけた話だ。代表理事は「我々はプラットフォーマー」とうそぶいた。クラウドワーカーから搾取するブラックな商法そのものだ」とツイートした。
クラウドワーカーやフリーランスといった(雇用関係ではない)「雇用類似の働き方」の視点からも「持続化給付金をめぐる電通やサービスデザイン推進協議会の問題」は許されないこと。なお、久原隠氏は東京新聞・中日新聞編集委員、著書に「働き方改革の嘘 誰が得をして、誰が苦しむのか」(集英社新書)などがある。

追記(2020年6月4日)
朝日新聞デジタルは「国から持続化給付金の業務を受注した一般社団法人サービスデザイン推進協議会が、2016年の設立以降、法律で定められている決算公告を一度も出していなかった」と報じた。
一般社団法人サービスデザイン推進協議会はウェブサイトに所在地とメールアドレスは記載されているが、「電話番号が明示されていないなど、運営の実態がはっきりしない」と指摘されていたが、新たに財務情報を公開していなかったことも判明した。このような「不透明な民間団体に巨額の公的事業を発注した経済産業省」の責任は大きい。
なお、一般社団法人は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき、定時社員総会などの終了後、遅滞なく貸借対照表を公告しなければならない。また、法律に基づいて公告しなかった場合は、「百万円以下の過料」という罰則もある。
朝日新聞デジタルは「衆院経産委員会で経産省は野党の質問に対し『(サービスデザイン推進)協議会に確認したところ、設立年度である16年度以来、3カ年分の決算は適切に行われているものの、決算公告は行われていない』と答えた」と伝えているが、「国から巨額の公的事業を多数受注してきた一般社団法人がしていないというのは異例だ」と指摘した。このような杜撰な社団法人が巨額の公的事業を受注するなど考えられない。

追記(2020年6月4日)
文春オンライン(6月3日午後4時0分配信)が、一般社団法人サービスデザイン推進協議会と経済産業省最高幹部との関係を報じた。
サービスデザイン推進協議会は2016年に設立されたが、サービスデザイン推進協議会を「実質的に運営していたのは、電通社員(当時)のA氏」。また、当時の代表理事は「経産省の方から立ち上げの直前に代表理事を受けてもらえないかという話があって、それで受けた」と証言しており、文春は「経産省が(サービスデザイン推進協議会)設立に関与していた」と指摘。
また、文集オンラインの記事によると「この時、経産省は肝いりで始めた『おもてなし規格認証』事業の公募を開始。不可解なことにサービス協議会(サービスデザイン推進協議会)が設立されたのは、公募開始日と同じ日だった」とのこと。そして「2カ月後の2016年7月、従業員4人のサービス協議会(サービスデザイン推進協議会)は4680万円で、この事業を落札。さらに、2017年度にはサービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金を約100億円で、サービス等生産性向上IT導入支援事業費を約500億円で落札。これらの三事業はいずれも、経産省の商務情報政策局が所管しており、当時、同局を担当する大臣官房審議官を務めていたのが前田泰宏氏だった」とのこと。
現在、前田泰宏氏は持続化給付金を所管する中小企業庁の長官を務めているが、文春オンラインの記事によると、サービスデザイン推進協議会は「持続化給付金事業(769億円)を含めて、設立以来4年で1576億円を経産省から受注しているが、そのうち少なくとも1300億円以上、率にして8割以上が、前田氏が幹部を務める部署からの受注だった」とのこと。

追記(2020年6月5日)
6月3日に行われた衆議院経済産業委員会での持続給付金をめぐる集中審議で質問した大串博志議員が、同日、「持続化給付金の事務の競争入札は談合まがいだった」という記事をブログ(衆議院議員大串ひろしブログ)に投稿。
衆議院経済産業委員会で質疑に立ちました。取り上げたのは、持続化給付金の給付事務事業を、中小企業庁から委託事業として落札した、サービスデザイン推進協議会の問題について。委託額のほとんどを電通の再委託したことの是非についてです。
質疑を通じて、驚きの事実が明らかになりました。
この事務事業を、中小企業庁が一般競争入札にかけるために公示をしたのは4月8日。ところが私が問い詰める中で、中小企業庁は、その前の4月2日に既に、サービスデザイン推進協議会ともう一社を呼んで、ヒアリングをしていたということが明らかになりました。
すなわちサービスデザイン推進協議会は、持続化給付金の給付事務が競争入札にかけられる前に、その内容を知っていたということです。これでは競争入札とは言えません。談合まがいです。
さらに問題なのは、梶山経産大臣が、なぜこのように二社だけ事前にヒアリングを行なったかという理由として、競争入札を行う際の「仕様書」をどう書くか、ということを相談するために呼んだと言ったことです。
仕様書とは、競争入札公募を行う際、「このようなスペックの事務事業をやれる人は手を挙げて下さい」ということを規定したものです。すなわち入札の中で求められるものの本質を書いたもの。
これを事前に知っているということは、実際に入札の際にはかなり有利になります。このようなことから、私が知るところでは、例えばITシステム等の導入の入札などにおいては、仕様書を作るためにアドバイスを行った会社は、入札には参加できないというルールにするのが普通です。
そんなルールをいとも簡単に破って行われた今回の入札。そしてその結果落札したサービスデザイン推進協議会。そしてそこから当たり前のように大部分の再委託を受けた電通。
極めて歪んだ構造が浮かび上がってきました。(衆議院議員大串ひろしブログより転載)


追記(2020年6月5日)
持続化給付金事務を一般社団法人サービスデザイン推進協議会に委託している問題で6月4日にも野党合同ヒアリングが開かれた毎日新聞(電子版、6月4日配信)によると、原口一博・衆議院議員と経済産業省担当者の間で次のような「やり取り」があったが、資料を提出しようとしない経済産業省の態度は相変わらず酷い。ただただ時間稼ぎをしているとしか思えない。
原口一博衆院議員「私が求めているのは入札の時の資料。協議会の再委託契約書、仕様書、再委託承認の実施状況など、前回も持ってこなかった。(経産省は)協議会が作った全体業務のフォロー図もあると言った。前回、みなさんが作ったものを持ってこられたが、協議会が作ったものを前回もお願いしている。ファクト、物をください。これで3回目なんで。」
経産省「ご要望は認識しているが、民間側の提案書、契約書の中身は、民間の競争で不利が発生する場合もあるので。その点を確認して、今、作業しておりますので。」

追記(2020年6月9日)
毎日新聞電子版(6月9日配信)は、「持続化給付金の支給業務を受注した一般社団法人『サービスデザイン推進協議会』と、業務の97%を再受託した広告大手『電通』が8日、東京都内で記者会見を開いた。協議会の平川健司・業務執行理事は『中小企業支援を目的に設立され、電子申請のノウハウを持つ協議会がやるべきと考えた』とし、電通の榑谷典洋・副社長は『通常と比べ低い営業利益になる見通しで、非常に難しい業務に取り組んでいる』とし、中抜きで巨利を得ているという見方を否定」と報じた。


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