【抜粋】
音成:それにしてもこれほど日本の社会へのAI導入が進まないことの、根本的な原因は何なのでしょう? 個々の会社に多少の投資余力があったとしても、判断を行う経営層にAIリテラシーがないとか。

松尾:そうですね、日本企業の経営者の勉強不足です。「経営者は技術のことを分からなくてもいい」といった甘えがはびこっている気がしますね。

松尾:客観的に見ると、私の研究室なんて、米中という二大大国に挟まれた小国かつ後進国の中の一研究室です。そう考えると、日本がこの両国のマーケットにリーチするための窓口を作る動きをするのは当然で、我々は今、日本と中国の企業をつなぐ活動をしています。

プライドは捨て、こちらが向こうの技術を真似するのです。GoogleやFacebook、テンセントなどが出した技術や論文を真似して実装し、日本にローカライズさせること。そして優秀な人間は米中に行き、現地でビジネスをして活躍することが必要です。

音成:これまで、AIなど技術を活用した起業は理系出身の学生が中心だったと思いますが、今後は、外資就活ドットコムのユーザーに人気の外資系投資銀行や外資系コンサルティングファームを志望するような、特に文系出身の人間も「AI業界」に参入していくでしょうか?

松尾:それはあると思います。現在のディープラーニングの状況は、1990年代後半の「インターネット」みたいな状態です。つまり当時は、HTMLファイルを書くことができてウェブサーバーを立てられれば、企業からホームページ作成の注文がたくさん来ました。

でも当時、そのHTMLファイルを書くとかウェブサーバーを立てるために、何か特殊技能が必要だったかというと全く不要でした。ディープラーニングも同じなわけです。特殊技能ではなく、時代感を読み取り、技術が切り開く先の世界に一歩踏み出す力が必要なのです。

今の段階で全くAIの知識がない、投資銀行やコンサル志望者でも、勉強したらあっという間ですよ。半年とか1年でトップレベルに近いところまでいけます。その上で自分が切り込みたい領域を決めて、仲間を集めて起業すれば、非常に大きなバリューを生み出せます。

松尾:私の研究室もディープラーニング講義など開催していますが、あれも英語圏だと通用しません日本語圏のレベルが低すぎるので、当たり前のことを当たり前に提供するだけで、「すごい」と言われる。嬉しいけど悲しい、そんな複雑な感情ですね。

【引用】
既得権者が甘い蜜を吸うだけの日本AIに未来はない~“資金の補給路なし” 負け戦と認識せよ
マッキンゼーいくくらいなら、AI学んで起業せよ ~「外コン・外銀志望者もAI勉強すれば半年でトップレベルに」