イブラギモヴァ ティベルギアン 大阪公演 ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第1~3番 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

アリーナ・イブラギモヴァ & セドリック・ティベルギアン

 

【日時】

2019年2月14日(木) 開演 19:00

 

【会場】

いずみホール (大阪)

 

【演奏】

ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァ

ピアノ:セドリック・ティベルギアン

 

【プログラム】

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 「雨の歌」 op.78
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 op.100
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 op.108

 

※アンコール

クララ・シューマン:3つのロマンス op.22 より 第1曲 Andante molto

 

 

 

 

 

以前の記事(当記事下方のリブログ元記事)で紹介した、イブラギモヴァとティベルギアンによるリサイタルを聴きに行った。

イブラギモヴァというと、五嶋みどりと並ぶ世界最高峰のヴァイオリニスト。

そんな彼女の弾く、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会である。

悪かろうはずがない。

 

 

ブラームスのヴァイオリン・ソナタには数多くの録音が存在し、ダヴィド・オイストラフ、イツァーク・パールマン、ヴィクトリア・ムローヴァ、庄司紗矢香、イザベル・ファウスト、セルゲイ・ハチャトゥリアン等の盤を私は好んで聴いている。

ただ、これらにも増して素晴らしかったのが、五嶋みどりによる実演だった(第1番と第2番だけだけれど)。

 

第1番の演奏会(五嶋みどり)の記事はこちら

第2番の演奏会(五嶋みどり)の記事はこちら

 

これは、私がこれまでに聴いた多くのコンサートの中でもとりわけ印象深い、決して忘れることのできない場面の一つである。

これほど美しいブラームスのソナタを弾くことのできる人が五嶋みどりの他にいるとすると、それはアリーナ・イブラギモヴァを除いて他にいない。

そう思いながら、今回の演奏会に臨んだ。

 

 

聴いてみると、期待通りの名演だった。

一つ一つ丁寧に紡がれていく細身の音はあまりにも繊細で美しく、五嶋みどりに匹敵する。

第1番の第1楽章、永遠の名旋律ともいえる穏やかな第1主題に、より情熱的に歌い上げられる第2主題、これらがいかにさわやかに奏されることか。

コーダでは第1主題がより高音域で、少し変化されて装いも新たに歌われるが、ここはブラームス特有の和声進行をしっかりと体現した、いっそう美しい演奏となっていた。

和声進行というと、第2楽章の中間部から再現部へと移る際の「転調感」の出し方も絶妙だった。

そして、夜の雨のようにほの暗い美しさをもつ第3楽章、その最後に置かれたコーダの、雨上がりの朝露のような清冽な美しさ。

 

 

次の第2番、なかでも、上記の第1番冒頭主題に匹敵する名旋律をもつ第3楽章。

G線で奏される重心の低いこの旋律を下手に味付けすることなく、いかに素材本来のノーブルさを引き出せるかということは、私の中でヴァイオリニストの一つの試金石となっている。

ここでのイブラギモヴァの演奏は端正にして高貴、聴き手の心をまっすぐに打つ、文句のつけようのないものだった。

最後の第3番も、序奏なくいきなり始まるメランコリックな冒頭主題から、激烈な和音をもつ終楽章に至るまで、情熱的ながら決して荒れることのない、集中力漲る演奏を聴かせてくれた。

 

 

ただ、私にとってブラームスは「秋の音楽」である。

第1番の第1楽章、展開部から再現部へと移る瞬間、ドミナントの和声を心一杯に感じる箇所。

第2番の第1楽章冒頭、ピアノの弾く主要主題に応答して、ヴァイオリンが何気なくも美しい下降音型を奏する箇所。

同じ楽章の再現部直前、ピアノの憂愁に満ちた旋律をヴァイオリンが受け継ぎ、そして短調から長調へと転調し淡い光が差す箇所。

こういったところでは、イブラギモヴァの演奏はややあっさりしすぎているように感じなくもない。

こうした箇所での五嶋みどりのそこはかとない切なさ、侘しさが少しばかり懐かしくなってしまった(録音では、例えばチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲で五嶋みどりのこうした面を聴くことができる)。

とはいえ、これは贅沢な次元の話。

凡百の演奏とは比較にならない名演であった。

なお、一年余り前に聴いたイブラギモヴァのモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトのリサイタルでは、彼女の演奏のもつ初夏のような明るさ、清々しさが曲にぴったり合っていた(その演奏会についての記事はこちら)。

こうした個性の違いは、音楽を聴く上での大きな醍醐味の一つである。

 

 

長くなったのでもう詳しくは書かないけれど、ティベルギアンのピアノ演奏の素晴らしさも特筆すべきものがあった。

この2人のデュオ、今後もできるだけ末永く続けてほしいものである。

 

 

 

(画像はこちらのページよりお借りしました)

 

 

 

 

 


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