(チャクムルのデビュー盤 シューベルト ピアノ・ソナタ第7番 バルトーク 戸外にて) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

昨年秋に行われた第10回浜松国際ピアノコンクール(それについての記事はこちらなど)で優勝したピアニスト、ジャン・チャクムルのデビュー盤が先日発売された。

曲目は、ベートーヴェン(リスト編)のアデライーデ、シューベルトのピアノ・ソナタ第7番、ハイドンの「アンダンテと変奏曲」、バルトークの「戸外にて」などである(NMLApple MusicCD)。

詳細は以下の通り。

 

 

 

 

 

2018年第10回浜松国際ピアノコンクール第1位 ジャン・チャクムル

 

 


緊急リリースの大注目盤!
第10回浜松国際ピアノコンクールの覇者、
ジャン・チャクムルのデビュー盤がBISレーベルより発売!


SACDハイブリッド盤。2018年第10回浜松国際ピアノコンクール第1位のほか、同コンクールの室内楽賞、札幌市長賞など数々の賞に輝いたジャン・チャクムルのデビュー盤がBISレーベルより緊急リリース! 2019年1月、コンクールの会場となったアクトシティ浜松におけるセッション録音です。
収録作品は予選でも絶賛されたハイドンのアンダンテと変奏曲、バルトークの戸外にて、当コンクールの委嘱作品である佐々木冬彦[1965-]作曲の「SACRIFICE」、さらにはベートーヴェン/リスト編曲のアデライーデ、シューベルトのピアノ・ソナタ第7番、そしてチャクムルの母国であるトルコ出身のピアニスト、ファジル・サイ[1970-]作曲のブラック・アースです。繊細で透き通るように美しいチャクムルの演奏を堪能することができます。
1997年トルコのアンカラ生まれのジャン・チャクムルは、レイラ・ベケンシル及びアイシェ・カプタンのもとで音楽を学び始め、6年間師事した菅野 潤やエムレ・シェンに多大な影響を受けました。2012年にアンカラの高校を卒業後、パリのスコラ・カントルムにてマルセラ・クルデリに師事し2014年に首席で卒業。現在、ワイマールにてグリゴリー・グルツマンに師事し研鑽を積んでおります。
2017年にはスコットランド国際ピアノコンクールで第1位、翌2018年には第10回浜松国際ピアノコンクールで第1位を受賞するなど、現在その活躍が最も期待される若手ピアニストのひとりです。なお、チャクムルは同コンクールの優勝者ツアーとして2019年4月より全国20公演をこえる演奏会が予定されております。日本語解説付ブックレット。(輸入元情報)

【収録情報】
● ベートーヴェン/リスト編:アデライーデ S.466, R.121
● シューベルト:ピアノ・ソナタ第7番変ホ長調 D.568
● ハイドン:アンダンテと変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII/6
● サイ:ブラック・アース(黒い大地) Op.8
● バルトーク:戸外にて Sz.81
● 佐々木冬彦:SACRIFICE (2017)


ジャン・チャクムル(ピアノ/Kawai SKEX - Shigeru Kawai Concert Grand)

録音時期:2019年1月
録音場所:静岡県、アクトシティ浜松コンサートホール
録音方式:ステレオ(DSD/セッション)
SACD Hybrid
CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD 5.0 SURROUND

輸入盤国内仕様(日本語帯・解説付)

 

 

 

 

 

以上、HMVのサイトより引用した(引用元のページはこちら)。

 

 

ハイドン、バルトーク、佐々木冬彦は今回の浜コンで弾いた曲だが、ベートーヴェン、シューベルト、サイは今大会で弾かなかった曲であり、それもややひねりの利いた面白い選曲となっている。

 

 

聴いてみての印象は、まずまず悪くない。

ベートーヴェンやシューベルトやハイドンといった古典派から初期ロマン派の作品を、それらにふさわしい様式感を保ちながら演奏することに成功している(具体的には、タッチの歯切れの良さや安定したテンポ感などが特徴)。

ただ、私の好きな録音、例えばシューベルトのソナタ第7番ではヘブラー盤やシフ盤、ハイドンの変奏曲ではグルダ盤やケフェレック盤ほどの個性的な味わいがあるかといわれると、そこまでではないようにも思われる。

全体的に、音楽性がエモーショナルというよりは淡白でからっとしており、聴き手の心を直截的にぐっとつかむといったタイプの演奏家ではなさそう。

とはいえ、無味乾燥では決してなく、音色にも少し鄙びた味がある。

それに加え、テクニック的に安定しており、ムラもほとんどなく、これらの曲の代表的な録音といってもいいのかもしれない。

いわゆる超絶技巧曲を選んでいないという点も、プラスに働いていそうである。

 

 

バルトークにおいても、他曲と同様、軽快で歯切れのよい明瞭なタッチが聴かれ、いつもの力強いバルトークのイメージとは少し違っていて面白い。

ただ、こちらも私の好きなタラトゥシキン盤(2015年浜コンライヴCD)あたりと比べると、少し物足りない面もある。

例えば、終曲「狩」の主要主題は当初かなりの高速テンポで奏され、なおかつタッチは明快で見事なのだが、それをオクターヴで繰り返すときにテンポがぐっと落ちてしまう(難しいだろうから仕方ないのだけれど、やや安全運転的に聴こえる)。

この主題が最後に現れるときにも、同様にテンポが落ちる。

バルトークは、ベートーヴェンのようにクライマックスへ向けて高まっていく音楽の一貫した流れがその重要な持ち味の一つだと私は考えているのだが、これらのテンポ変化はその流れを中断してしまう。

 

 

というわけで、とりわけ気に入ったというほどではないのだけれど、それは過去の名盤とつい比べてしまう私のほうに原因があるかもしれない。

デビュー盤として、まずまず良質なCDなのではないだろうか。

 

 


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