岸辺のアルバム(TVドラマ) 1977年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

追記
八千草薫さん死去
2019年10月28日の報道。命日は10月24日。ご冥福をお祈りします。


原作・脚本   山田太一
製作総指揮   大山勝美
プロデューサー 堀川敦厚
制作      TBS 6/24~ 毎週 金曜 22:00-22:54 
テーマ曲 「ウィル・ユー・ダンス」 ジャニス・イアン     


キャスト
田島則子          :八千草薫
田島謙作          :杉浦直樹
田島律子          :中田喜子
田島繁          :国広富之
篠崎雅江(アイシュウ)  :風吹ジュン
北川徹            :竹脇無我
沖田信彦          :新井康弘
丘敏子            :山口いづみ
川田時枝          :原知佐子
川田祐作          :園田裕久
時枝の男・二宮       :保積ペペ
秋山絢子          :沢田雅美
中田敏雄          :村野武範
堀先生            :津川雅彦
宮部              :山本廉
ホテル支配人         :睦五朗

 

オープニング(テーマ曲)

 

1974年の、東京都狛江市で起こった多摩川水害をヒントに、山田太一がドラマ化したもの。

 

超あらすじ
多摩川下流域で、堤防のすぐそばの一戸建てに住む田島一家を舞台にして、家人それぞれの持つ問題点が次第に表面化し、修復困難になって行く。
妻 則子は、電話での会話がきっかけで見知らぬ男北川と不倫。

父親の謙作は会社の不振から汚い仕事に手を染める。

姉 律子は外人に犯されて妊娠、中絶。

弟 繁がそれらの混乱に心を乱し、受験失敗。
その頂点で起きた水害。頼みにしていた本堤防が決壊し家が流されるが、改めて家族が心を寄せ合うきっかけとなる。


感想
TV放送当時は二十代前半。穏やかな題名から、ごく普通のホームドラマかと思っていたら(八千草薫だし:笑)これがまた妻の、妻子ある男との不倫やら、娘の中絶、夫が会社で売春斡旋まがいの仕事などなど。結局最後まで驚きながら観てしまった。
ジャニス・イアンの歌うテーマ曲「ウィル・ユー・ダンス」も雰囲気にぴったり合って毎週が楽しみだった。

 

やはり、当時好感度バツグンの竹脇無我と、これまた理想的な母親像の八千草薫を不倫関係にしてしまったのがスゴい。
竹脇無我は当時「三人家族」や「二人の世界」で、栗原小巻との爽やかコンビを組んだ二枚目。それが本当にゲスな内容の電話で主婦にコナをかける。
しかし、昼間一人で家に居る主婦が、マメに電話をして来る男性と仲良くなってしまう事が本当にあるんだ、という可能性は、世の亭主どもを震撼させた事だろう。

 

杉浦直樹は、独特の粘着系で、あの薄毛隠しのピッチリしたヘアースタイルがいつも気になった。こういう役をやらせると絶品。後の「あ・うん」も名演技。

中田喜子は後に「渡る世間は鬼ばかり」の三女文子でお馴染みになったが、まだこの頃はそんなに知名度もなかった。

バーガー店員の風吹ジュンがカワイイ(こんな時からモスバーガーあったんだ)


今回のドラマで狂言回しをしているのが繁役の国広富之。後にヒット作となる「噂の刑事トミーとマツ」の前で、これがデビュー作。

母、姉、父の問題にどんどん首を突っ込み勝手に悩んで、肝心の受験を失敗してしまう。
だが家族の絆について一番深く悩み「こんな家族はインチキだーっ!」と嘆く姿が、こっけいながら胸を打つ。

 

意外だったのは堀先生役の津川雅彦。女たらしで崩れた役柄が多く「時代屋の女房」のマスター役が大好きだったが、ここでは人情味溢れる高校教師。これはいい役。
当初北川と堀先生の配役が逆だったらしいが、こっちも観てみたかった(俗っぽくなりすぎるか・・・)

8時のゴールデンタイムでは厳しいが、10時のオトナの視聴帯だから、それなりに高く評価された。しかしこの水害を実際体験した家族にとっては厳しいドラマだっただろう。

 

オマケ
連れ込みホテルの支配人:睦五朗はTVで一世を風靡した「逃亡者」のリチャード・キンブルの吹替えをした人。渋いなァ・・・・

 

オマケのオマケ
推奨はしませんが、現時点で全話視聴出来ます。YouTbeの検索から「ksbnarbm1-1」で第一話(各話5分割の構成)。アップされて10年近くそのままなので、多分観られるでしょう。 

 

あらすじ(詳細版)

1、2話
河川敷で赤いラジコン飛行機が飛んでいる。それが堤防を越えて田島家の二階に突っ込んだ。出勤前の田島謙作は相手を怒鳴り付け、妻の則子に指示だけして出勤。
その後、則子一人の自宅に無言電話がかかる。
それが数回続いてから、今度はアンケートと言って男の声で質問。

 

亭主との月当りのSEX回数や、不倫の経験などを聞く。そして世の主婦の七割は不倫をしていると言った。
不愉快になり途中で電話を切る則子。だがその後も同じ男からの電話。迷惑だったのが、話すうちに、次第に会話が自然になって行く。

 

謙作は中堅商社の部長であり、接待漬けの毎日。仕事に批判的な言動の部下、中田。
長男の繁は高三の受験生だが、友人の沖田信彦とつるんで遊んでばかり。バーガー店の女店員に気がある信彦。

則子は、電話の相手から一度会って欲しいと言われている。

 

そんな時に、謙作の友人川田の妻で入院中の時枝を見舞って、気安さから電話の話をする則子。興味を持つ時枝。


3話
男の懇願に負け、指定された喫茶店に行った則子は、相手が思いがけず美男子なのに驚く。
帰りに時枝の見舞いに行き、彼と会った話をする則子。

バーガー店で信彦が、繁の母親と男が喫茶店に入った話を自分の母親から聞いていた。悩む繁。

 

長女の律子は大学で翻訳研究会の活動。そこに近づく同学年の丘敏子。へり下った様子に閉口するも、悪い気がしない律子は、申し出を受けて敏子の家を訪れる。だがとてつもなく裕福な家に圧倒される。
大学での飽き足らない交友関係に不満の敏子は、律子を友人にして遊ぶつもりだった。

 

それからも相手の男性北川と喫茶店で会う則子。もう4回を数えた。
事実を確かめたい繁は、信彦の母親経由で、見たという主婦から喫茶店「フィリッポ」の名を聞き出す。


4話
喫茶店を張り込んで、母則子と北川が話している現場を見た繁。家で問い詰めると中学の同級生だと言い訳。
時枝に羨ましいと言われたが、昼どきに会えるなんてあやしいとも言われ、北川に素性を聞くとクラシックレコード製造メーカの課長代理だという。

 

律子と親しくなる敏子は、面白いアメリカ人がいる、と言った。

則子が寿司折りを買って帰り、謙作も久しぶりに早く帰ると聞いて、追加の寿司二人前を注文した繁。

 

久しぶりの団らん。だが帰って来た謙作は不機嫌。出前なんか頼むことない。特上の寿司と聞いてまた怒る。
繁と父の口論を聞いて「寿司ぐらいでいじましい・・・」と律子。

会社での謙作。抑え込まれて不満を持つ部下の中田。繊維だけではやって行けないので、小銃の銃身の話を持って来た。武器には手を出すな、と謙作。岩田工業の息子に武器を作らせたくない。

 

バーガー店員の女が信彦と繁に色目を使う。期待した信彦だが、実は繁が目当て。私、アイシュウっていうの、と女。喫茶店に入って繁に体を触らせる彼女。

北川に誘われ、同伴喫茶に入った則子。

だが北川は手も握る事が出来ない。

 

後でそれを聞いて笑う時枝は、いずれオオカミに変わると忠告。
その後はゴルフ練習場。次はクラブで踊る。

こういう関係って新しい、と言う北川。

 

社長に、下請けへの武器製造を賛成されて、中田の提案を受け入れる謙作。だが家で則子に八つ当たり。

何度目かの北川との逢瀬で、浮気を提案される則子。

基本ルール:秘密を守る、お互いの家庭を壊さない、片方が止めると言った時点で止める。

 

5話
友人川田の妻、時枝の事を聞く謙作。入院して一ケ月。則子の目にも具合の悪さが判った。
次に見舞いに行った時、時枝は個室に移っていた。すい臓がんらしい、と言う時枝。
会ってもらいたい人がいると言う時枝。「私の男」
主人が良くしてくれるから、決まりを付けたい。

 

使いとして喫茶店で相手の若い学生、二宮に会う則子。渡した封筒の中味は一万円。手紙はない。「本気でナニするわけない」と二宮。奥さんなら半額でいいと言われ、あわてて逃げ出す則子。
時枝に報告する則子。もうじき死ぬ身、自分を褒めてやりたい。男買うなんて、よく勇気出した・・・

北川の会社に電話をして別れを告げる則子。
あの提案は忘れて、また会って欲しい、と北川。そして再び喫茶店「ルミエール」に行ってしまう則子。
ドビュッシーの話、印象派の話など聞いても頭に入って来ない。今まで通りとは行かない事を思い知る北川。

 

再び浮気の提案を重ねる北川。

主人と20年一緒に暮らして来たと言う則子。
確かにキレイかも知れない。でも本当に満足ですか?
つまり私が相手ではその気にならない? いいえと否定する則子。
これ以上の追及を諦める北川。しつこくするのはいけない・・・

 

家へ中田を連れて来る謙作。最初は上機嫌だったが、意に沿わない契約で次第に乱れて来る。早々に帰る中田。
その後時枝の死亡連絡。

 

病院の霊安室。家内は喜んでいた、と見舞いに感謝する川田。子供は出来ず、義母の看病に明け暮れ、それが終わって一年足らずでの発病。「いい思いをさせてやりたかった・・」

買物の帰りに踏切で北川を見かけ、思わず追いかけて声をかけてしまう則子。
この町では会ってはだめだ、と言った北川が土曜「ルミエールで」と言い残して去る。

夜の晩酌をしながら、則子の不愛想をなじる謙作。イラつく則子。

 

「ルミエール」で北川と会っている則子。店を出てホテル街へと向かう北川。途中で断ろうとした則子だが、車をよける振りをしてホテルに引き込む北川。


6話
夕方に帰宅の則子。着替えながら北川との事を思い出す。


飲まずに帰って来る謙作。元気がない。緊張した則子だが「財布掏られた」と聞いて笑う則子は「仕事の話かと思った」。それを聞き、つられて笑う謙作。

 

北川とのひと時。人を裏切るのはイヤなもの。でもこうしなければ主人を恨んでいた。後悔していない。止めたくもない。

 

敏子の家に泊まる律子。乱チキ騒ぎがしたいという。唇を重ねる二人。
敏子はあと十日でニューヨークに行くという。一人アメリカ人を紹介すると言った。
例の女性アイシュウと夜の公園でデートする繁。匂いを嗅いでいいという彼女に「オレ受験中だから」と遠慮する繁。

 

退社時、事務員の絢子(あやこ)に呼び止められる謙作。先日酔って謙作を困らせた。
また飲みに行く二人。会社で嫌われていると嘆く絢子は、謙作を好きだと言った。「冗談いうな」・・・・冗談です。

 

担任の堀と話す信彦。進路についての相談だが繁が心配(女の事)。
繁も対応に困っている。妙にしつこい。思わせぶり。訳があるのだろうが、言わない。

敏子に案内されてアパートに行く律子。「チャーリーよ」

 

繁が駅で母の姿を見た。身なりを整えて美しかった。男に会いに行くと直感して尾行する繁。渋谷の連れ込みホテルに入って行った。
ホテルに入ると支配人に止められる繁。


7話
入った女は自分の母親だと言う繁だが、生死に関わる事でないなら呼べない、帰るんだ、と追い払われる。
ホテルの陰で待つ繁を諭す支配人。女の人は自分で来た。良く考えなくちゃいけない。すごすごと帰る繁。

 

母さんが連れ込み宿に行ったと姉に話す繁。浮気ぐらい許してやれば?とつれない律子。
チャーリーの部屋で彼とSEXをする律子。

 

家に良く電話をかける様になる繁。母親が浮気で出掛けないかの確認だが、ノイローゼかもと疑って、則子が堀先生に相談。妙な女にしつこくされていると、信彦から聞いた話をして様子を見る様言う堀。

 

ある日、勘違いで学校を早退してホテルを張り込む繁。

会社では中田が銃の製造だけでなく輸出も提案。会社の状況は厳しくなっており、板挟みの謙作。

帰宅した謙作が、繁の早退を聞き叱る。

 

大声が外まで聞こえる、と帰宅した律子。生意気な口ぶりにまた怒る謙作。
私だけじゃ抑えられないと言う則子に、会社が危ない、俺には余裕がないと言って逃げる謙作。

 

北川と喫茶店で話す則子。

もう逢わないとの宣言。仕方がない、と北川。
だがその時繁が家に電話を入れる・・・・誰も出ない。


8話
母の事で堀に相談する繁。それを聞いて駆け付ける律子。

心配ないと言って繁を引き取る。
浮気ぐらいして当たり前、と母を庇う律子。
男ものの編み物をする律子に「恋人でも出来たのか?」と繁。

 

家で則子と繁が二人で居る時に停電。ロウソクの下で、以前話した中学の同級生の話をする則子。「あれ、もうやめたの」。

喜ぶ繁「勉強しなきゃな」

律子にバイトの事を聞く則子。電話番号を貸している事務所で伝言を受ける。それは五時まで。その後何をやっているのか・・・もう二十歳だから大丈夫。

 

律子の事が気になって会いに行く繁。確かに電話番をしていた。五時になっても帰らない繁。そこにチャーリーが来た。三人での夕食。
母さんが聞いたら大騒ぎ。ご飯食べるだけじゃないだろ?・・・・
放っといてと言う律子に「赤ん坊産んだりするな」と言うと「そんなヘマしない」
SEXをして帰って来たと思うと嫌悪感がする。

母さんの時もそうだった、と繁。
気持ちがついて行かない。

何をしようと自由でも、この影響から抜けられない・・・

 

大晦日も過ぎ、正月に喫茶店で信彦と会っている繁。
そこに律子が走り込んで来る。顔は真っ青。
二人になって事情を聞くと「復讐出来る?」
夕飯を作りにチャーリーのところへ行ったら、知らない男が居た。「彼は結婚を恐れている、別れたい。私はその引き継ぎ・・・」


9話
その男に強姦された律子。チャーリーは「これからはデイブとうまくやれ」と言ったという。

復讐したいのはチャーリー、母さんには言わないで。
逆上して仕返しに行こうとする繁だが「お前を軽蔑する」の英語を知らず、律子に教えてもらう。

「I despise you」を繰り返しながらチャーリーに対峙。
だが圧倒的な体力差で返り討ちに遭う。空しく響く「I despise you」

 

傷だらけの繁は謙作に叱られる。一月になって何してる。

やる時はやれ。
中田が自宅を訪れる。緒方専務からの話。

会社がある人物に弱みを握られた・・・・

スーパーで北川とばったり出会う則子。向こうは妻と娘の三人連れ。


あわてて逃げる則子。

 

会社でいろいろ工作をしている謙作、中田、緒方。

それを怪しむ絢子。

入試の発表。繁は三つ受けて全部落ちた。

信彦は何とか一つ合格。
帰宅した謙作が繁を殴る。

「三流大に落ちて泣いているとは、恥を知れ!」
自身に納得する繁。みんな人のせいにしていた。

母の浮気、姉の件。
堀先生に報告。

浪人なんてのはしておくもんだ。俺も一年やった、と堀。

春、しばらくは我が家も平穏だった。ほんのしばらく・・・


10話
律子が繁の部屋に来る。

担任の堀先生に頼みたい事があるという。
問い詰めると、あの日アメリカ人に乱暴された時に妊娠した。
先生を利用しようなんて、よく思いついたとなじる繁。

先生とは2、3度しか会っていないのに。

「・・・いい人だと思った」

 

堀が律子を連れて怪しげな事務所を訪れる。モグリの産婦人科。

堀の友人。費用は堀の立て替え。

 

堀の家で休む律子。
自然に先生の顔が浮かんだ、と言う律子に、そんな事は言っちゃいけない、と堀。嘘は嫌い。

手ひどい嘘をつかれた事があった。
役に立ってよかった。

これからもし会う事があっても事実だけを言って。

 

北川から再び電話がかかった。

正月はスーパーで会い、昨日は電車で会った。
ボランティアで施設に労働奉仕に行っていると話す則子。

余計な事を考えないために。

 

堀に金を返す律子。乱暴にされただけじゃなくて、アメリカ人の男と関係を持ち、マリファナも吸っていたと自嘲した。
人がどんな風に生きてもいい。ただ人間の根源にある様な事をバカにするのはイヤだ、と言う堀。

 

北川に電話をしてしまう則子。思ってもいなかった、と北川。

そしてルミエールで会う約束。

雨の日。堤防の上から田島家を見下ろす絢子の姿。

それを訝って咎める繁に泣きついた。

 

11話
絢子を喫茶店に連れて行く繁。自分の事は明かさず、あなたのお父さん、どんな仕事してるか知ってるかと聞く絢子。
会社に脅迫されて東南アジアから女性が来るのを助けている。

社員として研修名目で送り込みバー、クラブ等で働かせる。

 

会社の中田に会う繁。聞いた東南アジアの女性の事を聞くと「誰に聞いた?」と言ってうろたえる。

ルミエールで会う北川と則子。自分が情けないと言う則子。

息子の事を聞かれ「落ちたわ」
家庭は壊せない、止める潮時だった。冷静に出来たのにどうして電話したのかしら、と則子。

これから先は僕も自信がない、と北川。
ただ、ネックレスをプレゼントさせて下さい。

僕の痕跡を残したい。

そして別れ。

ルミエールの店を電話帳で調べて駆け付けた繁だが、遅かった。
だが一人残っていた北川をバーまでつけて話す繁。

 

母と別れてくれと言う繁に「もう逢わない。お母さんとは今日そういう事にした」  終わった事だ。

取り返しがつかない事はするな、と北川。

 

バーガー店でアイシュウに会う繁。

大学に落ちたのは知っていた。
声をかけた理由を話し出すアイシュウ。
彼女の名は篠崎雅江。

本当ならあの家は彼女の家になる筈だった。
手付けを打ったが、その後不良品を出して会社が倒産した(計算尺の会社)。川向うにアパートを借りて、それから九年。

「本当ならうちのものだった」と父は言い続けている。
初め気付かなかったが、田島の姓で分かった。色仕掛けでダメにしようとした。途中でやめたけどやっぱり落ちた。
「俺んちなんて幸せなもんか」

 

繁を家まで連れて来る雅江。家で酒を飲んで寝ている父親。

女房は他の男の所に逃げた。二年こうして娘に甘えている。
その事に感激する繁。

俺んちの奴らなんかロボット。傷付かない。

そんな人間あるか。
家で歌って騒ぐ繁。謙作が怒鳴る。


12話
繁が騒ぐ事について堀に相談する則子。
繁を呼び出して聞く堀。

家をメチャメチャにかき回してやりたいと言う繁。
理由を言わない繁を何とかとりなす堀だが、平穏無事ならいいのだろうか、と返す繁。

休みに、久しぶりで一家揃っての散歩を提案する謙作。

写真を撮らないかと言う謙作に、うちのアルバムなんてインチキだと八つ当たりする繁。
怒りに任せて、母親が男と渋谷で腕組んで歩いていたと謙作に言う。

 

バーガー屋で雅江に会う繁。喫茶店で話す二人。
そこに一家で来る北川の家族。和気あいあいとしている姿にイラつき、わざとらしく挨拶する繁。

家に戻って惨事を期待したが、仲良く話している父母。
律子はまた編み物。「男が出来ると編み物か・・・」さらに怒る繁に「父さんにも弱みあるのよ」と律子。インチキだと言う繁に「インチキに食べさせてもらっているあんたもインチキ」

父に怒りをぶちまける繁。お父さんは東南アジアから女を輸入してクラブに送り込んでる。母さんは男と連れ込みホテルで常連。そして姐さんはアメリカ人に乱暴されて子供を堕した。

これが俺んちさ。
取っ組み合いになる謙作と繁。

だが体力に勝る繁が謙作の顔を殴って倒し殴り続ける。

 

多少落ち着いて、則子が「あれは終わった事なのよ」と言うが謙作は「終わったらそれでいいのか」とイラ付く。
繁は、もう大学へは行かないと宣言。

働く事への甘さを言う父に「女を輸入しなくちゃ食って行けないなんて事あるかと言い捨てて部屋に戻る。

 

次は律子。蒸し返したくないと言う律子に、生死に関わる事にもなるから相談するんだと諭す。

二人が部屋に戻ってから則子を問い詰める謙作。

平然とだましたと、また怒り。
目の下が腫れ、則子が心配するとそれも気に入らない。

明日は大事な会議がある、と妻の事を忘れる姿に幻滅。

 

その晩繁は家を出た。翌日眼帯をして普通に出社する謙作。
律子が則子に話す。繁はあれだけの事を言っては引っ込みがつかない。相手の人のところへ行くなら応援すると言うが、別れたくない、家に居たいと言う則子。

ただの浮気、とっくに終わってるのよ。
今晩帰って来て、言いたい事言うわね、と律子。


13話
雅江の紹介で、ラーメン屋に住み込みで働き始める繁。


繁が友人の信彦に二千円借りた事を則子に話す律子。こんな時にも夕食の支度をする母にあきれる律子。「弱腰はだめよ」

 

会社での商談が成立したが、祝勝会は謙作抜き。

絢子を誘って飲みに行き、悪い酔い方をして、絢子に「つき合わないか」と誘う謙作。

元々気があったのは絢子の方。
半月早かったなら喜んでついて行ったのに、今はもう部長さんの事何も感じない、と絢子。深夜に帰る謙作。

自分はソファに寝る則子。

 

翌日は早く家を出た謙作。

夫が早急に結論を出さないのは有り難い。

繁からの電話を受ける則子。ちゃんとやっていると言う繁。
律子からも電話。今夜は友達の家に泊まる・・・・

帰宅した謙作が則子に話す。

改めて、いつからいつまでの話だったかの確認。
その男の所へ行けばいいとの言葉に、ずっとお父さんと居たい、許してください、と則子。生活に必要という事ではなく、今まで通りのお前と居たい、と言う謙作。
俺への不満だろう。だが今は余裕がない。

本気で忘れるというなら、俺も忘れるように努めよう・・・

 

翌日、声を掛けて出掛ける謙作。

面白くない律子だが、からかわないで、と則子。
会社で厳しい顔の謙作。会社での負債隠しが発覚した。
そんな時に中田の相談。実は弱電の営業に引き抜かれた。

7月いっぱいで辞める。
さすがに抜け目がないと感嘆する謙作。そしてもう一つ。

絢子と結婚すると言う『中田の奴引っかかりやがった』

一人で飲み、終電を逃した謙作が駅で倒れ、救急車で運ばれた。


14話
信彦経由で父が倒れた事を知る繁。

彼に代役を頼んで家に駆け付ける繁。
四日も寝ている。動けない、痛い。脊椎分離症との診断。
こんな事で戻って来てはダメだと叱る謙作に、またケンカのぶり返し。飛び出す繁。

会社の部下宮部が見舞いに来て、関連会社の倒産を知らせる。

 

脊椎分離による座骨神経痛が長引いて、一ケ月近く休んだ謙作だが、ようやく少し歩ける様になった。
そんな時律子が、会ってもらいたい人が居る、と父母に相談。
結婚を考えている、本気。会ってのお楽しみだと言い、本人はこれから一ケ月山中湖でバイト。

爆弾落としてから、鎮まるまで会わない作戦。
その男、中絶の事知ってるのか?と則子に聞く謙作。

「言うわけないか・・・・」

 

律子が連れて来たのは、繁の担任だった堀。

37歳、今まで結婚しなかったのは縁がなかったから。
堀を帰したた後で文句を言う謙作。見切りと付けたのか?どう見たって夢中になる男じゃないと言う謙作に

「現実を知らないのはお父さん」と反抗。
あの人は人間らしい。

ただ働いて酒飲んでるだけじゃない。お父さんなんて最低。
会わせただけで、これから山中湖に行く、と律子。

 

夜、二人で居ても話す事がない。結局仕事にしか興味がない。
景品の花火を庭でやる謙作と則子。

 

8月31日、急に雨が強くなる。台風16号が近づいている。

川が大変だとの話。ここは小堤防と大堤防に守られているが、小堤防が決壊。
大事なものは二階に上げようと動き出すが、腰が悪く思うようにならない謙作。
大事なもの、と言ってアルバムを思い出す謙作。

21年間の家族の記録。なぜ忘れてたんだ。
避難命令が出たと言って家に駆け付ける繁と雅江。

初めて見る女性に謙作は「この人誰なんだ?」


15話(最終話)
小学校に避難する四人と雅江。

雅江が、外堤防が溢れそうだと聞いて来た。
そこに会社の宮部が見舞いに来た。

こっちも大変だが会社が大変。
明日の新聞に出るが、会社が持ちこたえられない。

首脳陣は総退陣して倒産は避けるが、希望退職八百名を募る。

市長が自衛隊に派遣要請をした。

何でもないなら、どうして機動隊まで来る?といきり立つ謙作は家に戻る。5分で戻って下さい!の声。

 

家中の電気を点ける謙作。この家までやられてたまるか。守ってやるぞ。一緒に流されてやる。お前も勝手に生きる筈だ。
確かにあなたのおかげで食べていた。なぜ潰れたの?みんな人のせいなのね。お前は家に居て男を作った。
本気で向き合おうとしなかった。

キレイごとのアルバムと家が大事だった。

 

自衛隊が「早く開けなさい!」  

本堤防が決壊。

一段高い堤防でそれを見る謙作。

「なるべく家のそばに居たいだけ」
流される家。写真を撮る報道陣。流出した家屋は10戸。

 

救援物資が届く。手伝いをしていたのは北川。

謙作に会う北川だが、お互いを知らない。

北川からもらったネックレスを川に投げ捨てる則子。

それを見ていた繁が聞くと「いらない物だから捨てたの」

 

堤防爆破で流れが変わったが、結局流出家屋は19戸に増えた。

田島家も流出。

避難所で落ち着く家族。雅江がみんなに枕を持って来た。

 

日が経って、すっかり水が引いた川。

何か残がいが残っていないか川岸を歩く四人。
笑いながら歩く謙作と則子。
赤い屋根だけが放り出されている。

「アレうちのよ」「まるでフタみたいだな」

四人でその上に座る。良く壊れないで・・・・

いいじゃないか、みんなで働けば、と謙作。

さっぱりしていい。出直せという事だ。

希望退職の募集に応じる。別の生き方が出来る筈。
律子に、掘君ともう一度会ってみよう、と言う謙作。

そして繁には「店に戻れ、やるだけやってみろ」
「あんまりもの分かり良くなるなよ」と繁。


これが三年前の田島家。あとは皆さんの想像に委ねる・・・