アド・アストラ   2019年 アメリカ | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督・脚本  ジェームズ・グレイ
製作       ブラッド・ピット他
 

キャスト
ブラッド・ピット          : ロイ・マクブライド
トミー・リー・ジョーンズ    : クリフォード・マクブライド
ルース・ネッガ         : ヘレン・ラントス
リヴ・タイラー          : イヴ・マクブライド
ドナルド・サザーランド   : プルーイット

 

 

予告編


感想
つい先日観たばかり(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)のブラピだが、実はこちらを本命として期待していた。
「2001年・・・」やら「ブレードランナー」やらでSFものは大好き。

 

宇宙を描いた映画としては多少不満もあるが、要するに父と息子のドメスティックなドラマ、という理解をする必要があると考える。
後からさんざんツッコミを入れる予定ではあるが、この前提を考えれば、まあ許せるかな、と。

 

ロイが少年もしくは青年の頃に、知的生命体を求めて宇宙に旅立った父。尊敬する父を追って、自分も宇宙飛行士になったロイ。
また父から植えこまれた意識や、宇宙飛行士としての訓練を通じて、どんどん孤独癖を強めて行った。

妻とうまく行かなかったのも、それが原因か。

そんな時に発生した地球での「サージ」という障害に、父が関係している可能性があると聞かされる。
任務に対する意識と、父親に対する思い。

表面上、その心のうちは判らない。

 

そんなロイが父親に思いを吐露するのが、火星基地で軍の指示を受けて父へのメッセージを語った時。
初めは軍の指示通りの文面だが、何度か繰り返されるうちに、原稿を捨てて自分自身の思いを語り始める。
この辺りは「なんてスナオに育った息子だろう」と逆にびっくり。

後に語られる父の「家庭や子供の事なんかには関心がなかった」という言葉との落差に、しみじみとした思いが残る。
例え与えられなくても、子供は勝手に親を尊敬して美化する。

早くに親を失った者の特性。

 

長い旅を経て対峙した父親。どれほど感動的な場面だろう、と思ったが、透明な床を介して語る時の父親のそっけなさ。

ロイが求めようとしても、感動的な親子対面とは程遠い場面。
任務への固執と、乗組員との軋轢。「サージ」を止めるために努力している様にも見えるが、その真剣度が疑わしい。

そして宇宙空間での親子の別れ。ロイは意外にスンナリとフックを外したな、という印象だったが、父がこのまま地球に戻っても「どうしようもない」という理解をしたのだろう。

 

地球に戻ってからのロイの心の救済が描かれ、この旅が父親からの卒業だった事を改めて感じた。
年齢を重ねたなりの、リヴ・タイラーの美しさ。

 

 

とは言っても当Blogの性格上これは外せない。怒涛のツッコミ!!!
最初に出て来た塔(?)。成層圏に届きそうなノリだが、地上から立ち上げた設備なら、あんなに細いまま伸ばせるわけがない。

アーサー・C・クラークの「宇宙エレベーター」とかならわかるけど・・・

 

ロイが火星ロケットに潜入したところも、どう考えてもありそうにない話。ロイが乗ろうとしていた場所は、メインエンジンの下方であり、燃料が満タンに入っている場所。そこから居住区域まで内部に通路があるなんて設計はないだろう。違法侵入だとしてもロケットの上方の入り口まで行かなければならない。

 

クリフォードが探査に出掛けたのが30年前で、反乱が起きたのが16年前だとしたら、軍の言うサージの確認が11日前だという、それまでの間ずっと一人だったのか?
ロイがステーションに入った時、あちこちにあった死体は、もし14年前のものだったら白骨化している筈。なんか最近のものに見えた。
16年前の事件で、数名を残して乗組員が死に、最近になって残りのメンバーがサージを発生させ、それを止めようとしてクリフォードが争って皆殺しにしたという内容ならナットクが行くけど・・・・そういう説明にはなっていない。

 

クリフォードが宇宙探査に行ったという「リマ計画」が何とも意味不明。そもそも太陽系内の生命を探査するなら、木星の衛星「エウロパ」や「イオ」を調べるのが先。それが終わったという前提なら、それよりはるかに遠い海王星の辺りに生命体があるなんていう発想など出て来る筈がない。そんな場所で14年も生命体の調査・研究をしていたとしても、何の成果もなかっただろう。

 

サージのために太陽系全部が滅びるとか言う、軍の説明も意味不明。たかだか数百mのステーションの、どんな機械からそんなエネルギーが出て来るのか。
やっぱSFと言ってもそれなりの「確からしさ」が欲しいのです。

クリフォードの旧友だったというプルーイットも役割り不明。

ロイの監視役と言っても、もう少しクリフォードとの関連性に深いものがなければ、この役割りとして弱すぎる。

 

オマケ

「Boss」のCMで日本では手アカの付いたトミーリー・ジョーンズだが、今回はヒゲ面のせいか、あまりネガティブなイメージはなかった。

 

 

あらすじ
超巨大な宇宙アンテナの建設現場。宇宙からの強烈なサージを受けてクレーンが動作異常を起こし、作業員が空中に放り出された。

 

それを救おうとするロイ・マクブライドだったが、自分も放り出されて落下を開始。
姿勢が保てない中、ようやくスカイ・ダイビングの体勢を取ったロイは、濃い大気に達したところでパラセイルを開く。
だがそこに爆破時の破片が落ちて来てセイルに穴を開ける。

落下速度を増すロイだが、何とか着地して生還。

 

宇宙軍の基地に呼び出されたロイは、そこで驚くべき情報を与えられる。30年前に、知的生命体探求の目的で企画された「リマ計画」。

その責任者がロイの父クリフォードだったが、その探査に出発した父たちチームは、16年前に消息を絶った。

ステーション内で叛乱が起き、クリフォードがそれを鎮圧したらしい。
リマ計画のステーションは海王星付近にあり、今回地球全体に多大なダメージを与えたサージがその近辺から出されたものとみられる。
宇宙軍としては、このサージにクリフォードが何らかの関わりを持っていると考え、息子であるロイに、サージの影響から逃れた火星の地下基地から、父への通信を行わせる命令を出す。

 

まずロイは一般旅行者として月に行き、そこから火星へ向かった。
ロイの監視役として、クリフォードと以前から仕事上の関係があったプルーイット大佐が同行。


宇宙船では一般客の前提なので、ブランケットも有料(125ドル)
月の空港に降り立つロイ。

火星行きの宇宙船「ケフェウス」号へは多少の砂漠を走らなくてはならないが、略奪者に備え護衛を付けるという。

 

三台の体制で出発するが、二台の略奪者に襲われ、護衛二台が全滅。最後の車も操縦者が死んだため、ロイが運転を引き継いで、何とか発射場に滑り込む。


プルーイットは事件のショックか不整脈となり、同行を断念。別れ際、軍に気を付ける様に言い、データを手渡す。

 

ケフェウス号で火星に向かう途中、遭難船の救難信号を受ける。

火星行きを優先する様言うロイだが、秘密のミッションの事は言えず、船長が救助に向かうのを認めざるを得ない。
船長に協力して遭難船に同行するロイ。二手に別れて船内を探すが、誰もいない。
引き換えした時、船長が不自然に佇んでいるのが見えた。肩を引くと、ヘルメットが割れており、その向こうに大きな口を開けて威嚇する類人猿。ロイも襲われるが銃で応戦し、倒す。

類人猿はもう一匹いたが、それも倒したロイは、船長のヘルメットをテープで応急処置して船に戻る。
だが船長は助からす、宇宙葬として船外に放出された。

 

火星への着陸時、再びサージが船を襲い、自動操縦が狂いだす。

船長に替わって副長が操縦していたが対応出来ず、ロイが指揮権を奪って手動に切り替え、無事に着陸。
死に直面して、父との別れや、心を閉ざした上、妻のイヴとも別れた事などを回想するロイ。

 

軍のセッティングで、父に向けたメッセージの読み上げを指示され、実行するロイ。だが反応はなく、再び別の文が提示された。
だが読み上げる途中からロイは、自分の言葉で語りかけ始める。

幼い頃連れて行ってもらった映画、父に憧れて宇宙飛行士になった事などなど・・・
軍の側で何か反応が出た様にも見えたが、通信は中断された。

 

その後ロイはメンタルチェックで不適格とされ、この関連ミッションから外される。海王星に行く事も中止になった。火星基地で孤立するロイ。
そんな時に接触して来た火星基地の長官ヘレン。彼女は火星で生まれて育ち、地球へは一度しか行った事がない。彼女の両親も「リマ計画」に参加したが、鎮圧の巻き添えで犠牲となった。
ヘレンが見せるクリフォードからの最後の通信。地球に帰りたいクルーが、探索を続けたいクリフォードに向けて起こした叛乱。

 

その結果皆を殺してしまったクリフォード。軍はその事を隠し、クリフォードを英雄のまま行方不明として扱っていた。

軍はケフェウス号に核爆弾を搭載して、海王星のステーションに向かうという。何としても乗り込まなくてはならないと言うロイに協力し、発射場近くまで車で送るヘレン。
水路を通り、発射場直下まで来たロイは、秒読み状態のロケットの点検口から入り込む。

 

コックピットでは人の侵入を検知したが止められず、宇宙船は発射された。乗員の三名は、軍の指示でロイを殺そうとする。防御する中で不幸にも全員を死なせてしまうロイ。
ロイは、自分が一人で使命を果たすと軍に連絡して通信を断った。

 

数ケ月の航行を経てステーションを発見し、小型艇で乗り込むロイ。ドッキング部の故障で接岸出来ず、小型艇は放棄。
爆弾だけ持ち込んでセットしたロイは生存者を探すが、数体の遺体があるだけ。その時、クリフォードが声をかける。


父の説明では、最後に残っていた反乱者がサージを発生させた。

一人になったクリフォードにはサージを止める方法が見つからない。

知的生命体に対する探究を続けようとする父に、サージの危険から地球を守るためステーションを破壊する事を説得するロイ。

父の研究データを全て吸い上げる作業も行って、ようやく納得するクリフォード。

 

爆弾のタイマーを三時間にセットして、命綱を父と繋ぎステーションから出るロイ。
だがクリフォードが、宇宙服の推進装置を暴走させる。

命綱で繋がれているロイも宇宙空間に投げ出される。
やっとの事で父を捕まえるロイ。
地球には戻らない、フックを外してくれと懇願するクリフォード。

 

命綱のフックを外したロイ。父の姿が次第に小さくなって行く。

ステーションに戻ったロイは、回転するバーアンテナに注目。そのパネルを外してアンテナの端に掴まり、惰性でステーションから飛び出す。
パネルで小隕石から身を防ぎ、何とかケフェウス号に辿り着いたロイは、地球に方向をセットする。
そしてステーションが爆発。
その爆発の推力を利用しての慣性航行で地球に帰還したロイ。

 

宇宙飛行士を続けているロイ。心理検査で異常値は出ない。

だが以前とは違う心情が湧いている。
先の事は判らないが、心配していない。身近な人に心を委ね、いたわり合う。
そして元妻のイヴとの再会。