新聞小説 「カード師」 (1) 中村 文則 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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超あらすじ  (1)~15まで

       15~21(最終)まで

 

朝日 新聞小説 「カード師」 (1)  10/1(1)~10/13/(13)

作:中村 文則   画:目黒 ケイ


感想
新しい新聞小説が始まった。今まで読んだことのない作家。
タロット占いと、いかさまポーカーのディーラーで生計を立てている「僕」。二段目が済んでもまだ名前が判らない・・・
ポーカーのルールが判った方がいいのだろうが、面倒そう。まあ、そこは筆者の腕次第、カナ?
カードを題材にしたドラマというとアニメ「マルドゥック・スクランブル」を思い出す。


「掴み」としてはまあまあか。英子はやはりエイコだろう(ヒデコではダサい・・・)。女の姿見ただけで鼓動が上がるのはかなりのチキンなのか?(それほど怖いとか・・・)

スマホごと渡された「屑」と言われた男は一体何者か?

 

しかし差し替えるのはいいけど、トランプ五十数枚のうちのエースとキング全部抜いたら八枚で一割以上。

ちょっと慣れた相手にならバレるだろう(まあいいか・・・)

 

挿絵作家は目黒ケイ(女性)。非常に精緻な絵の中に時々原色の絵の具がダラっと入る。この緊張感は好き。
彼女の紹介記事

各副題が短めなので、2~3副題の単位で進めて行くつもり。


以下は小説の紹介記事

 


あらすじ

表裏 1~4
タロットカードで目の前の女性、市井の占いを行う僕。
いつも怯え、自己肯定感の足りない女性。
「上手くいきますよ、面接では堂々と」と出たカードの説明。
タロットとトランプの違いについてしばしレクチャー。
「本当は、恋愛の相談だったんでしょう?」
市井の細い目が開く。気の流れからの判断だと言って、そちらの面もアドバイス。でもまずは面接。

満足そうに帰る市井を見送った後、整理していたカードを一枚取り落とした。落ちた「聖杯5」に意思を感じた。意味は「半分以上がなくなる」
小さく笑う。カードの並びなど関係ない。

背景が黄色になるものが多くなる様にしただけ。

 

ビルから一階に降りて出る。占いのためだけの高級マンションは、顧客対応。
路地を歩いた先に立つコート姿の女性。鼓動が速まる。
「まさか、私から逃げたわけじゃないでしょ?」
まだ逃がさない、と言った彼女。ギリシャ神話のヘラが浮かぶ。夫ゼウスの浮気相手らを呪った。
スマホの画面を見せる。「占いの顧問になって情報を伝えて」

 

また鼓動が速まる。関わらない方がいいという予感。
「大丈夫、この男は屑だから」と彼女。
スマホごと渡される。これが連絡手段。
正体を隠してこの男の企業に入り込む。そういうの、平気でしょ?小さい頃からずっとそうやって生きて来た。

お金も必要でしょ?と部屋に来るそぶりを見せる彼女を断る僕。
誘いを断られて、四十前で枯れたの?とディオニュソス(地下サークル)会員だった事を引き合いにしての驚きに「これから仕事なんです」


ポーカー 1~9
古びたマンション。目当ての階の部屋の前でカメラのチェックを受けて入り、タキシードに着替える。違法のポーカー賭博。
最初にカードを教えてくれた人間の言葉。

マークの強さは ♠ ♡ ♦ ♧ の順。

トランプのいいところはジョーカーがある事。

格差に混乱や誤差を与える存在。
さっきの彼女、英子も共にベッドに居た時、トランプの話をした。

恐らく本名じゃない。

 

テーブルに向かい、そこの従業員と交代する。ここでのポーカーは「テキサス・ホールデム」。世界大会も行われる形式。
各々に配られた二枚のカードと、場に並べられた三枚を皆で共有して役を作って行く。そこで繰り広げられる駆け引き。

 

以前プロのポーカープレイヤーが来た事がある。

テーブルには完全な素人が一人入っていた。多分自営業者。
ゲームが始まり、自営業者が賭けるのは少額。

最初の3ゲームは他の客が勝った。
次のゲームでプロが仕掛けた。
カードを配った段階で、僕は自営業者がエースのワンペアだと推理。

プロが弱気そうに賭け金を吊り上げる。自営業者を狙っていた。
自営業者がそれに乗った。プロはキングのスリーカード。同額を掛ける自営業者は、プロの方をキングのワンペアと推理したと踏む僕。
プロがまた賭け金を吊り上げ、自営業者も応じる。

自営業者は蒼白になり、汗が流れる。
更に演技を重ねてプロが全額を賭けた。場に緊張が走る。
負けた時のその後の人生が見えている。

人生の敗北まで賭博で取り返そうとする。
その賭けに乗った自営業者。もう乗るしかない。
そして互いの手札が開示される。

プロはキングのスリーカード、自営業者はエースのスリーカード。
熟練のプレイヤーの様に、完全な無表情になった自営業者。
自営業者は、その晩620万稼いでいつのまにか消えた。もう二度と来ていない。全額を失ったプロは半年後に死んだという。

 

この賭博場にあるもう一つのテーブルで、通常のポーカーによる賭博も行われる。
その円テーブルに立つ僕。客は四人。
会社員風が二人、チェック柄の男と高級腕時計の男。
金のウブロ。380万程度か。いい時計だがスーツとは合っていない。彼を敗者に決めた。
クイーンを三枚仕込んだ上でシャッフルし、配る時にチェック柄の男にクイーンが三枚行く様にした。

そのゲームは、程よく金を吊り上げチェック柄の勝利。

カードには特殊な仕掛けがあり、裏向きでもカードの判別が出来る。正規の場ならバレるかも知れないが、だからこそ照明を落としている。
様々に工夫されたシャッフルの技。会社員を適当に勝たせ、腕時計にも一度勝たせた。だが次に惜しくも敗れる演出を仕込む。
そこで腕時計にストレートの役を回す。だがチェック柄はフラッシュ。自分が強いと思い込んで賭け金を吊り上げる腕時計。うまくそれに合わせるチェック柄。カードが開示され、腕時計の負け。

 

既に75万負けている腕時計は「イカサマだろ」とネジ込む。
そして俺に混ぜさせろ、と言い出した。一度は断るが、一回だけと言うのに押されて僕は目尻を掻く。
そして、今はいい流れではないから、普通なら引き時だと忠告。その言葉にかかった腕時計。
腕時計がシャッフルしたカードを受け取り「せめて一度混ぜます」と他のメンバーに同意を得て、半分ほどの束を持ち上げ上下を入れ替えた。腕時計が更に「上から5番目から配ってくれ」。

重ねて会社員風が8番目と言い、腕時計も納得。

 

ゲームが始まり、腕時計とチェック柄の勝負となって、腕時計は敗北。彼は120万を負けた。
仕掛けは簡単。目尻を掻いたのは合図で、束からエースとキングを全て抜いたとチェック柄に教えた。

彼は同じ柄の手持ちのキングを使って入れ替えた。
隣りのディーラーと交代した僕。もうイカサマはない。

 

朝、客が全て帰った後にチェック柄と飲む僕。本名は知らない。いつも来ている服で「チェック柄」と呼んでいる。
腕時計から奪った金の分配。半分は店へ、残りの半分を山分け。
もっと取ってよかった、と言うチェック柄に、やりすぎたとたしなめる僕。

手品商品を売る手品師の話をするチェック柄。
手品を覚えたいと言って訪れた客に、買わせるためいろいろ実演した。感心されて喜んだ店主。
結局客は一番安い商品を買って去って行った。気がつくと店のあらゆる商品がなくなっていた。
店主は技に集中し過ぎて・・・騙すのに集中し過ぎて騙されていた。
客が店に入った瞬間の「こいつはいける」という判断の視線。
店主を騙したのは、このチェック柄だった。

 

「依頼が来たよ」と英子から言われた、ある男の占いの顧問になる話をした僕。
ここで働いている事を彼女に話したかを確かめたが、否定するチェック柄。嘘ではないだろう。
彼は、依頼が来たことを人に話すべきじゃないと言った。

上の方で権力の動きがあるらしい。
彼女が上を目指しているのだろうか、という僕を言下に否定する。女に使われるのは好きじゃないとも。

「物足りなくないか?」の質問。
依頼を与える相手と寝る様な緩さの英子を嫌うチェック柄。

 

「規律と真面目さがないと企業は潰れる」

末端なのに経営者の様に語る。

そもそも僕たちは何から依頼されているのかを知らない。

英子氏たちは、表向きには経営コンサルタントと言い、マーケ会社や探偵・調査会社も傘下に置く。得体が知れない。

僕の仕込む仕掛けに苦情を言うチェック柄。互いの腹の探り合い。