溺れるナイフ  2016年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督 山戸結希
脚本 井土紀州
原作 ジョージ朝倉

 

キャスト
望月夏芽               - 小松菜奈
長谷川航一朗(コウ)       - 菅田将暉
大友勝利               - 重岡大毅
松永カナ                - 上白石萌音
広能晶吾(カメラマン)      - 志磨遼平
望月鉄男(祖父)           - ミッキー・カーチス
長谷川航司郎(コウの父) - 堀内正美
蓮目匠(宿泊客)          - 嶺豪一

 

 

予告編

 

感想
BSでたまたま録画しておいたものの視聴。

中味は全く知らずに観始めた。

菅田将暉はTVの「3年A組-今から皆さんは、人質です-」が記憶に新しいが、ホント活躍している。
この作品は彼がブレイクし始めた頃のもの。

原作が少女マンガ、監督が女性という事で、細かいプロセスがないまま夏芽がコウに愛情を感じてしまうところにビックリ。
コウの設定も、家が町の有力者という点と、親子でお面を作っている姿が芸術家なのか、祭で使うお面を作っている伝統工芸家なのかイマイチ判りづらい。

 

夏芽とコウの関係は、恋愛というより「ごっこ」的なフンイキ。
そんな状況で、夏芽が宿泊客の蓮目に拉致されたのに、コウは救い切る事が出来なかった。
あれだけのダメージを受けて動けないというのは判るが「その程度か」という中途半端な気持ちが残る。
まあ、襲われる場面がもう一度出て来るので、それに向けての伏線と言えば言えるが・・・

 

この映画の一番の見せ場は、翌年もう一度「祭り」の時期に繰り返されるレイプ事件。
男が、なぜあの山小屋に夏芽が居る事を知ったのか、なぜわざわざ踊りの場から見える様に行動したのか、不自然な部分はいっぱいある。
襲われた夏芽が目を覚まし、何事もなかったかの様な状況に、夢を見ていたかと錯覚する場面から、あった出来事を思い出す所は、それなりに引き込まれた(火踊りの場面はやや冗長だったが・・・)
「コウちゃん、殺して。やっつけて」という夏芽の言葉は、彼女の闇の部分を表現して秀逸。

結局、コウの事を好きだったカナが協力して、蓮目の死体とナイフの処理をした。それと引き換えに夏芽を東京に追いやった。

この黒さにも戦慄。

 

結局、いいネタがあったのに料理の仕方がちょっとマズかったカナ?という印象。
コウは生い立ちも含め、神に近しい存在。

それに夏芽が反応して恋に落ちた。その辺りの表現がイマイチ浅い。
コウとの関係を乗り越えて主演女優賞を勝ち取った夏芽の心象風景として、コウとバイクで走る姿が、これまた浅い。
原作を読めば、多分その残念さは解消されるのかも知れない(読まんけど)。

 

オマケ
ミッキー・カーチスは、今昼ドラの「やすらぎの刻」で不良ジジイやってるのを思い出してワラた。
志磨遼平は、ロックグループをやっていたらしいが「そのまんま松本人志」。こんなサイトもある(笑)

 

 

あらすじ
ティーン雑誌のモデルとして注目され始めた中三の望月夏芽。

父親の実家の老舗旅館「あづまや」を手伝うため、一家で広島近くの浮雲町に引っ越して来た。
同級生として知り合う長谷川航一朗(コウ)、大友勝利、松永カナ。
東京から来た事で浮いた存在の夏芽に、優しく接する大友とカナだが、そっけないコウ。

ある日海岸にある、立入禁止の社に行った夏芽は、そこで泳いでいるコウを見つける。案内されて海の絶景に見とれる夏芽だが、海に落とされる。海の中でのじゃれ合い。


急速にコウに惹かれて行く夏芽。

 

モデル界からは手を引いた状態の夏芽に、写真集を作りたいと言って高名なカメラマン広能晶吾が訪れる。

コウに注目されたいとの思いもあり、それを受けた夏芽。

写真集の注目もあって、広能が作るという映画へのオファーも来た。

相談されたコウは「力があったら使おうと思うもんじゃ」
映画出演を決める夏芽。

 

旅館の宿泊客の若者、蓮目匠を夏芽に紹介する、祖父の鉄男。
その晩は町で開催される「火祭り」があり、コウたち男衆が踊りを奉納する。

 

それを見物していた夏芽のところへ客の蓮目が、鉄男が倒れたと言って呼びに来た。
その場にいたカナだが、夏芽たちが行った後クラスメートから鉄男を祭りで見掛けたと聞き、コウにその事を教える。

踊りから抜け出して走り出すコウ。

 

車で病院とは違う方向に走る蓮目。夏芽が東京に居た時からのファンだった。車を降りて逃げる夏芽を追い詰める。
そこに駆け付けるコウ。崖から夏芽を引き上げようとした時に、蓮目が後ろから石を落として攻撃。ダメージを受けて動けないコウ。
夏芽にのしかかる蓮目。追いかけて来た若者たちが蓮目を見つける。

 

蓮目は暴行未遂だったが、世間では夏芽がレイプされたかの様な噂が立ち、映画の話も立ち消えになった。
お互いに距離をおく夏芽とコウ。

翌年高校生となった夏芽たち。

そこでもレイプ疑惑に振り回されて孤立する夏芽に声を掛ける大友。
コウは悪い仲間と付き合う様になっていた。
たまたまコウを見かけて話をする夏芽。

お前の人生に巻き込まれるのは嫌だと言って去るコウ。

 

そんな夏芽を慰め、友達でいいからと交際を申し出る大友。

広能から再び映画の申し入れが来る。

だがその台本にはレイプシーンがあり、抵抗を感じる夏芽。
学校帰りの夏芽を待ち伏せていた広能が数枚の写真を撮る。だが今の夏芽では撮る気がないと去って行った。

 

コウに会う夏芽。山小屋で結ばれる二人。遠くへ行けるのがお前の力、俺はお前に何もしてやれん、と言うコウ。
大友に、映画に出ると言って別れを告げる夏芽。

 

再び訪れた「火祭り」。そこで男衆の中に一人だけお面が違う男が山の方へ行くのを見たカナが、それをコウに告げる
祭りから抜け出して山小屋に向かうコウ。
山小屋に居る夏芽のところへ来たお面の男は蓮目だった。再び襲おうとする。抵抗するが、そこで気を失う夏芽。

目覚めた夏芽だが、男の姿はなく、昨年の事件の夢を見たと錯覚するが次第に思い出す。

 

男は、夏芽を襲う事より、この場で自殺して、それがメディアに報道される事を夢見てナイフを出していた。


そこに駆け付けたコウと蓮目との戦いが始まる。

止めようとするうちに気を失う夏芽。

 

山小屋から出て歩き出した夏芽の前にカナが現れ、血の付いたナイフを見せる。全部、海に沈めるからもうコウには会わないでと言うカナ。

 

数年が過ぎ、広能と共に主演女優賞の受賞の場に居る夏芽。
喝采を受けながらも、ずっとコウの背中を追い続けている夏芽。

一生解けない呪い。でもそれが幸せ。
受賞作品でバイクの後ろに乗っている夏芽の映像が映し出される。運転している若者がいつのまにかコウの姿に。


コウは離れて夏芽を見守る選択をした。

互いを互いの「神さん」とする選択。