100分 de 名著 アーサー・C・クラーク1.太陽系最後の日2.幼年期の終わり NHK Eテレ | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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番組紹介

3、4回のレビュー

 

感想
アーサー・C・クラーク作品は「2001年宇宙の旅」の原作者というところから入ったので、他はあまり読んでいない。

「2001年--」は本当に理詰めで構築されており、モノリス以外は小説としての「遊び」が少ない気がしていた。
だが今回初期の作品に接してみて、その発想の柔軟さに圧倒された。

 

「太陽系最後の日」は伊集院が言う様に、この番組で以前取り上げられた小松左京の「日本沈没」の本質が描かれている。

沈みゆく日本から脱出した日本民族は、その勤勉な性格から、多分20年もすれば世界の脅威となる存在を予感させる。

逆にクラークが日本を意識してこれを書いたとも思える。

  
「幼年期の終り」も同じく小松の「果しなき流れの果に」の中に、地球滅亡の危機に陥った人類を救う異星人が出て来る。宇宙は意識体という事や「階梯」の概念もクラークに影響されていた様だ・・・

続く3、4回も楽しみ。

オマケ
語りの銀河万丈さんは「ガンダム」のギレン・ザビ総帥でおなじみ(イイ声)

 

 

第1回 知的好奇心が未来をつくる 3/2放送
~「太陽系最後の日(1947年)」~ 

進行役:伊集院光 安部みちこ 
ゲスト  :瀬名秀明(作家)     語り:銀河万丈   

 

アーサー・C・クラークはSF界の代表的作家。
イギリスで生まれ、海好きな理科少年だった。
12歳でSFに目覚め、成人してからは英国惑星間協会で「宇宙開発の伝道者」として活動した。
28歳でデビュー作の「太陽系最後の日」を発表。
第二次大戦中に「地球外の中継」という、通信衛星に関する概念の論文を発表。ビジョナリスト(未来予測者)の位置付け。
キーワードは「センスの良い好奇心

 

作品導入
太陽が新星化して爆発するのを前に、地球を救おうと超大型の宇宙船を進める異星人船長のアルヴェロン。


残された時間は4時間。救出隊が向かうが、人の姿はどこにも見えない。
トンネルを発見して、中の地下鉄に乗ると自動的に閉まり走り出す。大陸間横断用であり、途中で降りられない。残された時間はあと30分。

 

原題は「レスキュー・パーティ(Rescue Party:救助隊)」
視点の逆転。異星人が未開(だと思っている)人類を上から目線で見ている。その中で列車に閉じ込められる。コントっぽい、笑える展開。

 

救出隊のパラドー人の能力で何とか脱出し、地球から離脱。

太陽は消え去った。
地球から出されていた電波を辿ると、人類の宇宙船団が現れた。
劣っていると思っていた種族が、太陽系を脱出した勇気と行動力に驚愕。
あの連中は怖い。礼儀を尽くした方がいい、と言うアルヴェロンを笑う部下。20年後、その言葉は笑いごとでは済まされなかった。

 

日本沈没と響き合う感じがする(伊集院)
1970年「SFマガジン」創刊号に本作品が載り、小松左京がこれを読んで夢中になりSF作家を目指したという逸話がある(瀬名)
こういうものを「俺スゲー小説」と呼んでいるが、自己陶酔の恐れもありSFのいい面と悪い面を刻み付けた。

ここに出て来るパラドー人に、ある思いが投影されている。

地球外生命の予感。
あらゆる知的種族は、最終的に個々の意識を犠牲にし、大宇宙には集合精神しか残らないだろう。
物質の形を取らないという考え方も出来る。精神的、宗教的存在、かも知れない。

 

クラークに影響を与えた作品
バナール宇宙・肉体・悪魔」群体知性、サイボーグ等の未来予想図
ステープルドン最後にして最初の人類」数十億年に亘る人類の興亡を描く。イギリス人の伝統を受け継いだ(ヘンな小説)

SFは、科学を正確に書いてないといけない、と言われがちだが、今回の若きクラークが好奇心をストレートに出した作品は今でも通用する。

 

 


第二回 人類にとって「進化」とは何か 3/9放送
~「幼年期の終わり(1952年)」~

クラーク最高傑作と言われる。テーマは「人類の変容の可能性」
現在言われている、人間とAIとの一体化、電脳世界に精神が入るといった概念の先駆け。

 

作品導入
ある日、巨大な宇宙船の群れが全世界に現れる。

異星人オーヴァーロード。


地球上の問題を総督カレランが解決してくれる。
武力を使わない平和な社会の実現。カレランの正体は謎。
50年後にカレランが姿を現した。革で出来た翼を持ち、神話に出て来る悪魔そのもの。

 

一見ユートピアだが、人間は無気力となる→人類家畜化小説の代表。
オーヴァーロードの目的は何か? 家畜化ではない
なぜ悪魔と思うか。 未来に対する人類の記憶。

未来に悪魔がやって来るというビジョン。 神秘×科学

 

50年経った結果、人々は大きく変化。

労働は短縮され、人々はスポーツ、娯楽に時間の大半を使う。
彼らの目的は謎だが、オーヴァーロードのラシャヴェラクが世界中の神話を読み漁っている。
人々が行うこっくりさんの様なゲームを監視するラシャヴェラク。

リーダーのジャン・ロドリゲスがオーヴァーロードの母星を訊ねると、複数の人が持つ棒が、ある文字列を指す(NGS549672)
その時、メンバーの一人ジーン・モレルが気絶。
その事をカレランに報告するラシャヴェラク。

彼女は重要人物だが、プライム・コンタクトではない。
後に彼女は息子ジェフリーを産む。

文字列がオーヴァーロード母星の座標だと知り、彼らの宇宙船に密航したジャン・ロドリゲス。母星に行って彼らの技術力に驚く。
一方カレランは地球人に、自分らは格上の存在「オーヴァーマインド」に命じられていると言った。君たちは絶滅の一歩手前に居たと言う。
そして、君たちは太陽系を制する事は出来るだろうが、人類が宇宙を制する日は来ないと宣告。

 

科学とオカルト→食い合わせが悪い。
オカルトの話から、人類の可能性の話へと変貌。
現代でも、AIが発達して人の雑用を引き受ければ、ベーシックインカムさえあれば、人が芸術等に専念出来るという考えがある。

 

ジェフリーが7歳になった時に激変が起こる。
超能力で、触れずに物が動かせたり、精神体となって宇宙を探検出来るようになった。


実は人類をメタモルフォーゼ(変容)させる事がオーヴァーロードの目的だった。
この日を境に、10歳未満の子供たち全てがメタモルフォーゼを起こし、一人ひとりの意識が繋がり、オーヴァーマインドとの一体化が可能になった。


オーヴァーロードは種族としての限界があり、メタモルフォーゼが出来ず、他の種族を助ける事しか出来ない存在。

子供たちは、親が理解出来ない存在に変貌し、彼らが起こす超常現象で地球は滅びる。
地球に戻ったジャン・ロドリゲスは、子供らのメタモルフォーゼのエネルギー源となって地球が消滅するのを見届けた。

 

肉体は滅んで、魂が天国にいます、という話・・・・
オーヴァーロードが切ない感じ(実はいい奴だった)
未来学者 レイ・カーツワイルが言うシンギュラリティ(技術的特異点)を予見。2045年頃に、AIが人類を越える。

遺伝子工学、ナノテクなどにより人類が変貌する。

我々は最後の人類かも知れない。

→子供たちがメタモルフォーゼするのを見守る産婆役。

 

本当のユートピアとは何か、の問題提起。
次の「都市と星」で答えが描かれる・・・・