NHKスペシャル「藤井聡太二冠 新たな盤上の物語」9/20放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

感想
将棋は小学生の頃、伯父から教えてもらった。私が中二の時、脳溢血で倒れて半年ほど寝たきりの後他界したが、倒れる少し前から自分が勝てるようになって「変だな」とは思っていた。
そんな伯父が得意にしていたのが「棒銀」。

先行する歩の後を付いて行きながら銀が敵陣に攻め込む。
だから「攻めは銀」「守りは金」というイメージは持っていたが、藤井君は戦局によっては、守りを捨てて金が攻め込む時もあったという。
代表的な戦いの中の一手を取り上げて、その意味も説明され、ちょっとかじった程度の者でもかなり楽しめた。

渡辺明氏の奥さん(伊奈めぐみ)がスゴい。

亭主が負けた試合をちゃっかりマンガにして、キッチリと回収。


何といっても最後の一言がシビれる。

将棋の神様への願い事が「一局手合わせ願いたい」だって(絶句)


概要
棋聖戦は、トーナメントを勝ち上がった者がその挑戦権を得る。

81マスの盤面には10の60乗の局面があるという。

相手の玉をいかに追い詰めるか。頭脳の格闘技。
棋聖戦。渡辺明 三冠。「魔王」と呼ばれている。

彼が放つ「4-六金」 クラっと来る一手。
渡辺は天才少年と言われ中学生でプロ入りし、二十歳で「竜王」を獲得。そんな彼に挑んだ藤井。

 

最終番の第4戦。守りか、攻めか。「1-三角成」攻めた。
解説では「渡辺が自分有利と見ていただろう」
だが藤井は違った。玉は詰まないと見通していた(師匠の杉本昌隆八段)。その後の渡辺の連続王手をすり抜けて行く。それを漫画家の、渡辺の妻(伊奈めぐみ)が描く。藤井君は勝つ局面だと静かになる・・・


16連続王手をしのぎ、逆王手で仕留めた。
詰む、詰まないの読みが異次元。幼い頃からの膨大な訓練。

五歳の冬、将棋会館に通い始めた藤井。夢中て取り組んだ詰将棋。

問題の一例が目隠し詰将棋。特訓を重ねると、頭の中で駒が動く。
解答ノートがある。藤井は解いた詰将棋は一万以上。

「考え続ければ、必ず答えに辿り着く」

子供の頃のあだ名は「泣き虫聡太」。

負けると悔しさで泣き出し、手が付けられない。負けず嫌い。


棋聖戦第二局。金が出て攻め上げる。セオリー無視。玉のすぐ上に飛車を打つ。「玉飛接近すべからず」という常識に捉われない。
衝撃の一手が出た。角で金を狙う。「3-一金」で金を逃がすのがこの場合の最善手だと皆が思ったが、「3-一銀」で守った。


驚きの手。

アマチュアが打ちそうな、素朴で単純な手(強い棋士ほど打たない)。
AIの評価グラフでも「3-一銀」だと形勢が悪くなる。
だが予想外の展開。攻めの手がかりがなく、銀が玉を守り続けた。

渡辺は一度も王手を掛けられず負けた。
ブログに書く渡辺。いつ不利になったか分からないまま敗勢になった。
読み切っての「3-一銀」。この手はネット上でも話題になる。
AIに4億回読ませた段階では「3-一銀」は選択の5番手でしかないが、6億回読ませると、それが最善手になる。
ソフト開発者は杉村達也さん。「水匠2」というソフト(藤井も愛用)。
4億回読ませると25手先まで読める。6億回だとその3手先まで読める。そこまで読んで初めて最善手だと分かる。

なぜそれが出来るのか
藤井が語るイメージ:最初は符号で進んで行って、たまに盤が出て形勢判断。読み進める時は符号で考える。
大半の人間は頭の中で盤面を作って考える。計算スピードが桁違いに高く、本人でも意識していない。読みの深さの進化。
杉本八段の師匠 故板谷進九段も写真で観戦。

東海地方へタイトルを、の悲願を孫弟子が達成。


この才能はどの様にして生み出されたか。
幼い頃の藤井は、積み木で何時間でも遊ぶ子だった。
子供には子供の時間がある。大人はそこに立ち入ってはいけない」これが藤井家のモットー。
師匠の杉本氏に弟子入りしたのは小4の時。

指し方の指導はして来なかった。独自の道を極めてほしい。
14歳でプロデビューし、29連勝して社かい現象を引き起こした。

自らの将棋を語ったインタビューがある。

最初に感覚だけで切り捨てたものの中に、実はいい手があったという事がある。そういう手を拾えるようになりたい。
どうやったら? 自分の感覚を変えて行く。

1年ほど前、師匠の杉本に弱音を吐いたことがあった(負けた直後)。手が見えない。ライバルが徹底した藤井対策を研究していた。

連敗する事も。異変を感じた。

いつもは攻めるところで守りに入る。読みにも狂い。
昨年タイトル挑戦の「ための大事な一局を落とした。
転機になったのは「コロナ」
4月に入ってからの二ケ月。負けた対局と向き合い続けた。
対局期間が空くことで、普段の2倍の一日7時間研究に打ち込む事が出来た。負けの原因の一つが長考して時間をなくし自滅。

自分の手を信じ決断することが大切。

棋聖となった時のインタビュー
「人間」である棋士の存在意義とは?
AIとの対局は「対決」を越えて共存の時代になる。

盤面の物語は不変。その価値を伝えて行きたい。

王位戦(二つ目のタイトル)
一局が二日間で行われる。保持者は木村一基 王位。
「千駄ヶ谷の受け師」と言われる。24歳でプロ入り。

昨年49歳最年長でのタイトル獲得。
第四局。ほぼ互角の局面。
藤井の飛車に対し銀を打った木村。

いったん横に振り飛車を逃がすのが、長丁場としては正しい選択。
解説者の話では、銀は木村の注文。どいてくれれば飛車は使いづらくなる。
だがこれに藤井が長考。しかし銀を取るのはリスク大。
次の一手を封じた藤井。立会人は執念を感じた。
翌日封じ手を開封。同飛成り。


攻める。何とか勝負しようと考えた。その4手後に王手。

粘るスキさえ与えない驚異的なスピード。
史上最年少での二冠。

どこまで行くのか。
どこまで強くなっても終わりがない。探求心を持って新しい景色を見たい。
常識を疑い、変化を恐れず。特別な「天才」タイプではない。地道な努力の積み重ね。将棋に対する好奇心。もっと上を見つめている。
将棋の神様は、なぜこの少年を選んだのか? ただ強くなりたい。

もし将棋の神様がいるなら、何を願うか?
せっかく神様がいるのなら、一局お手合わせねがいたい。