火の鳥 太陽編 作:手塚治虫 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

火の鳥 太陽編

   (上)1986年(下)1988年 作:手塚治虫

 

感想
手塚治虫の描いた「火の鳥」シリーズを締めくくる物語。

ただ、彼自身最後として「大地編」の構想を持っていたようだが、プロットだけを残して亡くなった。
さて本編。
二つの物語が同時進行の形で進んで行く。一方は韓国が百済と言っていた時代に、狼の首と同化させられてしまった男(クチイヌ)が、仏教伝来当時の日本に渡って皇位継承の争いに巻き込まれて行く。
他方は2009年。地下組織「シャドー」の工作員として「光」一族の力の源となっている、火の鳥の奪取を命じられるスグル。
互いの人生が、夢を介して繋がっている。
過去と未来が散文的に前後するため、導入としての上巻はややマゴついた。
千年の時を経て繰り返される権力の争いに、男女の愛を重ね合わせる。
何といっても中大兄皇子、大友皇子、大海人皇子を巡る史実上の話がマンガの世界で命を吹き込まれるのが面白い。こういったケースは他の「火の鳥」でも散見されるが、本作はより臨場感が迫って来る。
それにしても手塚が未来として設定した2009年は、既に10年以上前。歳取るわけダワ・・・・

朝日新聞出版の大判(B5)サイズ「火の鳥全集」の最後に、手塚治虫直筆の「大地編」プロット(原稿用紙2枚半)が付いていた。それをのちに桜庭一樹が新聞小説に発表した(コチラ)賛否両論だが・・・

あらすじ

<上巻>
過去
朝鮮半島。唐国軍が倭軍兵の首を刎ねて並べている。

白村江の戦い(663年)を経て攻勢を強める唐軍。
そんな時に若者が捕らえられる。

将軍が若者の肩の刺青を見て、百済国王一族のハリマだと知る。

倭軍を招き入れて刃向かった百済を蔑視する将軍。
若者の顔の皮が剥がされ、死んだ狼の首がかぶせられた。
何日も気を失っていた男が目覚める。男は、水を飲もうとして自分の顔が狼になっている事を知り逆上する。
民家の鶏を襲い、山の兎を食らい、狼の習性そのままだったが、虎と戦い石を使って勝利した事で、まだ人間である事に安堵する男。

 

だが傷の痛みで気を失う。
目覚めた男。戦闘している夢を見ていた。体が手当てされている。

助けたのは、医者であり陰陽師でもあるという「おばば」。

男をクチイヌと呼んで、傷を治すための薬草を塗り込んだ。
狼の首を取ってくれと懇願するが、無理に剥がせば中の皮までめくれるという。

唐軍に追われて逃げる倭軍の船。

座礁して海岸に上がるが、仲間割れを見て嘆く指揮官。

だが負けたのはお前のせいだ、と部下が指揮官を大勢で刺した。
おばばが、占いで唐軍の攻撃が始まるとクチイヌに言う。

いっそ倭の国に渡ろうというおばばの話に乗って、小舟で出ようとした時、倒れている老人を見つける。見覚えのある倭人の指揮官だと言うクチイヌは、おばばの反対を押し切り、彼を舟に乗せて出発した。
途中嵐に遭うが何とか切り抜け、指揮官が目を覚ました。
安部比羅夫。三万近い兵を率いて海を渡った。

白村江の戦いで大敗した責任は自分にあると言った。
こんな顔にされたままでは済まさない。

倭に連れて行って償ってもらう、と言うクチイヌ。
再び海に漕ぎ出した三人。

雁の飛ぶ方向だ、と言う安部を信じてその方角に向かう。
島に上陸すると狼の集団に遭遇した。

顔が融合して狼の言葉が理解出来るクチイヌ。彼らは狗族。
娘の命を助けるため、火の鳥の生き血を探しているという。
おばばから薬をもらって、その娘のところへ行くクチイヌ。
領地まで行くと狼が人の姿になった。娘には矢が刺さっており、それを抜き、おばばの調合を真似て薬草を塗った。


娘は回復した。

そのお礼に里まで案内してくれた父親の首領。ここは倭国。
麓まで辿り着き、村人たちが安部比羅夫を連れて行き看病する。

もてなしを受けるクチイヌとおばば。
未来
並行して語られるもう一つのストーリー。クチイヌの夢に出て来た。
男を銃で撃ち倒す少年。
その仲間の大男と女が向かって来る。倒れた男はゴトーと呼ばれていた。攻撃する少年。
男を倒し、女の足も吹き飛ばす少年。書類ケースと引き換えに命乞いをする女の頭を吹き飛ばす少年。
自分を殺し屋だと言い「俺はおやじさんの命令で動いてるんだ」
過去
酔わされて寝入ったところに火をかけられて、焼き殺されそうになるクチイヌとおばば。それを助ける狗族。
改めて礼を言うと、あの時のかしらはルベツと名乗った。

娘はマリモ。マリモが危険を予感した。
この地方の、人を含めた生き物を守護して来た狗族。
だが数十年前、倭国に外の国の神々が渡って来た。

倭国の王がその神を保護したため、その勢力はたちまち広がった。
仏教のことですか?とクチイヌ。
新しい神々に仕える者が狗族を迫害した。

マリモが襲われたのも彼らから。
十年ほど前にこの地にやって来た四天王(広目天、増長天、多聞天、持国天)。
ルベツが不在中で、マリモの兄ノビルが応対したが、四天王の力で干ばつや飢饉が蔓延した。
里を追われ山に籠った狗族。

何とか倭国の王に訴えたら?と言うクチイヌだが、ルベツの話ではその王「中大兄皇子」が自らを神と名乗っているという。
クチイヌを慕っているマリモを娶ってくれと言うルベツの頼みに、いつの日か自分が人生に勝ったら頂きに来ると言って彼らと別れ、おばばを連れて行くクチイヌ。クチイヌたちを追うマリモ。
一方安部は、恩人だったクチイヌらを村人が焼き殺そうとした事に激怒し、指揮した者の首を刎ねた。

安部らの一行に同行して大津宮に向かうクチイヌとおばば。

その一団を追うメス狼。マリモだった。危険だと言っても聞かない。

兵士に狼を殺すなと指示するクチイヌ。
大津宮の王に拝謁する前の晩、安部がクチイヌへの褒賞を約束した。領地を賜るなら、この西三里にある郡を願い出ろ、とおばば。

そこが大吉。
未来
21世紀を祝う街の賑わい。はぐれて泣いている男の子。

その子手を引いて連れて行く鼻の大きな男。
過去
王族を集めての大規模な狩りを行っている中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)。狩猟に参加しない、弟の大海人皇子(おおあまのみこ)を叱る。土地の神々をないがしろにして、仏教を優遇する兄を批判する弟。
当主の犬上を訪れる安部比羅夫。四年前、安部の推挙のおかげでクチイヌは犬上宿禰(いぬがみのすくね)という名と領土を与えられた。
犬上を訪ね、筑紫の大宰府に派遣される事を告げる安部。

それは王が遠ざけるためだと言う犬上。今は仏を崇める者が高い地位を得る。今建ちつつある国分寺しかり。

わしの事は気にするな、と言って去って行く安部。
おばばは村の者たちの怪我や病気を治して忙しい毎日。

この顔ではこの先の統治が難しいと悩む犬上。

ずっと寄り添って来ていたメス狼が、初めて犬上の心に話しかけた。
「やっぱりマリモなんだな!」だが抱きしめようとすると逃げた。
「もし私が狗族の娘だと判ったら・・・」 自制する事に決める犬上。

各地の国分寺が落雷で焼け落ちる事故が相次ぎ、法隆寺にも出火があり堂塔が焼失した。
地元の神々の怒りだ、と兄の中大兄皇子に進言する大海人皇子。
住職に占いをさせたところ、大海人皇子を仏門に入れよとの卦が出る。王からの使者を迎える犬上。仏に帰依せよとの通達。

近在の豪族にも触れを出している。
信仰は自分で決めるという返事に、罰を覚悟せよと言って去る使者。
おばばの占いで、王の世がもう終わると出た。

犬上も大乱に巻き込まれるという。

側近から、王が行った護摩の結果、仏門にいれよとのお告げだと聞かされる大海人皇子。

 

手を打とうと考えるが、一方で安心させて坊主になる事も視野に入れる。
体調が優れない父、中大兄皇子を見舞った大友皇子

枕元に不動明王が現れ、父亡き後も仏法を継げと言った。
再び犬上の元を訪れた王の使者。縄を打とうとする使者を殺してしまった犬上。何か打ち手が必要だと言うおばばに、大海人皇子に会いに行くと言う犬上。
犬上を見ても驚かない大海人皇子だが、自分は出家するので助けてやれないと言った。

病床で苦しむ中大兄皇子。息子に継がせるため様々な考えを巡らす。
見舞いに来た大海人皇子が、皇位を継ぐのは大友皇子だと言い、自分は出家すると言った。
剃髪した大海人皇子は、大友皇子に別れを告げる時に犬上を大赦する様願い出た。
王の崩御(672年)と、自らの罪が大赦で消えた事を知る犬上。

だがその背中に矢が刺さる。
炎隆寺七人衆と名乗り、仏法の名においてと言って更に攻撃。
瀕死の重傷を負った犬上に近づく影。マリモだった。

霧で目くらましを行い、しっぽを頼りに導いた。
何とかおばばの所まで辿り着いたが意識を失う犬上。

必死で看病するおばば。
未来
ベッドで目覚める少年スグル。自分が狼の首を被せられている夢を見ていた。恋人イノリの話では三日間眠っていたという。

おやじさんが呼んでいると告げるイノリ。
イノリと共に出掛けるスグルは図書館で日本史を調べる。

661年近辺の朝鮮半島。

夢の中で百済の王族の一人ハリマだったと言うスグル。


アジトでおやじさんと言われる男に会うスグル。
スグルが「光」のスパイから奪ったメモが大したものだと言うが、興味ないスグル。地上へ出て「光」の総本山への潜入を告げるおやじさん。
「光」一族のシンボルである「火の鳥」を盗み出す任務。

姉にTV電話をかけるスグル。泊めてくれと頼むが迷惑がる姉。

シャドーの人間を匿ったと旦那にバラすと脅す。
下水管の漏水に紛れて上界に向かうスグル。
上界で攻撃に会うが返り討ちにして、そこの女兵士から服を奪い、ジープで町に向かう。
姉の家に入るスグル。

「光」の総本山へ女装して行くために姉の服が必要。
事の始まりは7年前。「光」一族が日本人を「光」と「シャドー」に分けた時、姉は「光」の側近とつきあっており「光」の人間になれた。
旦那は教宣局のボス。局長夫人に化けて潜入する計画。
その時旦那が帰って来る。絶体絶命の中、姉がわざと会談から落ちてケガをする。姉を連れて病院に行った旦那。
姉に化けたが来客があり、スパイだとばれてその二人を殺し、来た車で本部に向かう。要人同行という事でゲートを通過。
大金庫は地下三階にあり、まともに行って誰も成功していない。

本部の頂上まで行ってエレベーターで地下まで行く作戦。
備品の中にカセットを見つけて聞くスグル。

おやじさんからのメッセージ。
「坂東スグル、驚くことはない・・・・」で始まるその内容。
今から10年前の1999年、惑星探査船のクルー大友が彗星のようなものを見つけた。それは鳥の姿をしており、探査船の中に入って来た。鳥を地球に持ち帰った大友は、鳥の血が不老不死の力を持つ事を発見した。
火の鳥を崇める宗教組織「光」が出来、大友が教祖となった。
それを信じる者と信じない者で人が餞別され、後者が「シャドー」とされて地下に押し込められた。
大友はおやじさんの甥だという。そして彼は自らを「神」だと名乗った。
火の鳥を手に入れて革命を起こすのが今回の目的。
本部の壁を登って屋上を目指すスグル。
 

<下巻>
未来
屋上から展望台に侵入したスグルは、エレベーターで地下まで移動。エレベーターを爆破したスキに大金庫まで辿り着き、火の鳥が入ったケースを見つける。だがそれはニセ物。


多くの信者に捕らえられるスグル。そこに現れたのは教宣局長、義兄のナンブだった。妻から弟が潜入する事を聞いていた。

スグルの洗脳を指示するナンブ。
海底千メートルの収容所に送り込まれたスグルは、狼の形のヘルメットを被せられる。そこには受信機が仕込まれており、四六時中洗脳の教義が流れる。その苦しみに絶叫するスグル。
過去
瀕死の状態の犬上。マリモがやって来てその傷を舐める。それを口汚くののしるおばばだったが、一縷の望みをかけて一緒に傷を舐めた。
何とか傷が癒えた犬上のところへ、近江からの使者が来る。

先帝の墓を建てるのに男を二百名出せとの通達。それを断る犬上。

使者を返した犬上に、どうして仏教を嫌う、と聞くおばば。
近江の将軍、韓国が討伐の予告に来た。

なぜ逆らうのか理由が聞きたい。
古くから居る守護神を守ると言う犬上。決裂し、引き返す韓国。
燃水(石油)や武装した牛で対抗する犬上たちだが、毒の入った雨で牛が倒れ、山津波が襲って来た。四天王の一人の仕業。
そんな時に天狗の長、通風が犬上を訪れる。狗族の長ルベツとは親しい仲。霊界の天狗、亥族、鬼族、狗族らが結束して戦うため、霊力を使い易いこの地を貸してくれと言う通風。
戦いが始まるが、仏族の攻撃に歯が立たない。
そんな時に、狗族たちも知らない女が現われ、怪我をした者たちを治療出来る者が居ると言った。それは八百比丘尼。

天狗の通風がその女を怪しんで攻撃を仕掛けると、その女は光輝く鳥の姿になって去った。
再び四天王の攻撃が始まり、犬上はキリのない戦いを打破するため、自分が捕虜になって大友皇子に仏法の圧力をゆるめる様頼みに行く。
韓国らに捕らえられ、式部省に引き出されるが、裁きさえ受けられず牢に入れられた犬上。
様子を見に来た韓国が、犬上は明日処刑されると伝えた。
うたた寝をして首を刎ねられる夢を見ていた時に、韓国に起こされる。大友皇子との面会を繋いでくれた。
大友皇子に実情を話し、信仰の自由を訴える犬上だが、仏法を広めようとするのは父の決定であり、政治のための第一戦略なので止められないと言った皇子。
再び牢に戻される犬上だが、明け方に牢を破って脱出する。その時、犬上が捕まった事を笑っていた姫が、逃げ道の空井戸に案内。
彼女は大海人皇子の娘、十一媛(とおちのひめみこ)。

政略結婚で大友皇子と結婚する定め。
犬上も自分の素性を明かす。百済国王の血筋。

犬上に抱いてと言う十一媛。


そして父に渡す竹簡を託し、去って行った十一媛。

山に入り、逃げる犬上。
未来
収容所生活のスグル。洗脳の言葉に相変わらず苦しむ。

発作を起こして医務室に向かう時、自分をシャドーの人間だと言った事でスグルと知った女が襲いかかって来た。それはスグルが潜入した時、服を脱がせた女戦士。責任を取らされてここに送り込まれた。
決闘をさせる責任者。その場合はヘルメットを外せる。

ナイフでの決闘。戦いながら戦士として一級だと知るスグルだが、自分を守るため彼女を刺す。
彼女を処理する前に看取ってやりたいと言い、二人きりになったスグル。彼女の名は小沼ヨドミといった。以前から知り合っている感覚。
これも運だと諦めるヨドミだが、本当に好きになってしまったと泣くスグル。ヨドミもヘルメットを外した瞬間同じ思いだった。

 

火の鳥に訴えるスグル。
兵士たちが死体を処理しようと迫る中、ヨドミの体が輝き出し、胸の傷が治って行った。そして生き返るヨドミ。
スグルが芝居を打って、彼女が火の鳥の血を飲んでいたといい、それが地上にあると兵士を焚きつけて暴動を起こさせる。
どさくさに乗じて脱出ポッドに乗り、地上に出たスグルとヨドミ。
だが殺し屋の執拗な攻撃が待っていた。
別々に逃げようとヨドミが提案し、そこで別れる二人。
オヤジさんのところに戻ったスグルは、火の鳥が作り物だった事を報告して倒れた。
「光」の総統、大友にホットラインを繋ぐオヤジ。大友とは叔父甥の仲。
講和の申し入れをするが、回線を切る大友。
「決起の時がやっと来たか・・・・」
過去
吉野の宮で目を覚ます犬上。大海人皇子の住む寺に救われた。
十一媛からの竹簡で状況を掴んだ大海人皇子。
仏教に圧迫されている狗族を救いたいと言う犬上に、今夜戦に踏み切る決心の大海人皇子は、自分に付いたら狗族を助けようと言った。
十一媛の伝える、近江が食料を断ち自分らを餓死させる企みを臣下に話す大海人皇子。七月一日を攻撃開始の日とした。

密使の連絡により兄二人を逃がした十一媛は、自分も去ろうとした時母親に見つかる。
詮議する大友皇子にもシラを切る媛だが、密書が見つかり斬り殺される。遠くで娘の死を知る大海人皇子。
侵攻する大海人皇子の部隊を追う仏族の黒い雲。
開けた土地に矢印状の岩の列。犬上は、太陽神を祀るものだと推定。
その時、仏族による落雷攻撃が始まった。

だがそれは長くは続かず、ここが聖地であるためと思われた。
暗闇の中に光を見つけて岩を上る犬上。
そこに居たのは火の鳥。生き血が欲しいの?と聞かれて狗族の長の話を思い出す犬上。そんなもん、いらないと断る犬上。
火の鳥が太陽の化身である事を知り、仏教の侵略を受けている狗族を助けてくれと頼む。
火の鳥は、犬上を連れて千年先の世界を見せる。
「光族」と「影族」の争いの残骸がそこにあった。
私は人間たちが自然に解決するのをじっと見ていただけ・・・・
何故かと問う犬上に、宗教や人の信仰は人間が作ったものだから、どれも正しい。正しいもの同士の争いは止めようがない。

権力に使われた宗教は残忍なもの・・・


狗族を助ける事だけ考えていた犬上は悩む。
火の鳥は、犬上がやがて人間の顔に戻り、普通の人間として一生を送ると言って去った。
目覚めた犬上は近江権力と戦うために歩き出した。

大海人皇子の部隊に再び襲いかかる仏族。大海人皇子が祈りを捧げていると、光輝くものが雲を晴らして行き、星空となった。
家臣たちに話す大海人皇子。仏門に入ったのは、命を守るための方便。だがさっきは一心に祈った。

その結果あの光が救ってくれた。あれは太陽神。
そして我が国を「日の本」と名付けよう、と言った。

皆と合流するために走る犬上。だがその行く手を以前攻撃に来た、炎隆寺七人衆が阻んだ。
相手の技を見切り、倒す犬上。

だが犬上里へ五万の軍勢が向かっているという。
急いで向かうが、敵軍の兵士に崖から突き落とされる犬上。
未来
上界から戻って眠り続けていたスグルがようやく目覚めると、体中に毛は生え始めていた。
皆を集め、「光」への攻撃を指示するオヤジ。
シャドーの襲撃の情報が入り、大混乱する上界。怪我で入院している姉のユリカを病院から連れ出す夫のナンブ。

だがユリカが度々弟を泊めていた事を知って逆上し、彼女を絞め殺してしまった。そしてナンブも暗殺者に殺される。
無人機の空爆で足止めを食うシャドーの攻撃部隊。コントロールしている基地を爆破すると言って志願するスグルに同行する恋人のイノリ。
だがその途中でイノリは爆撃を受け、スグルも吹き飛ばされた。
過去
目覚める犬上。大海人皇子の味方の者に助けられた。

犬上は、里が助かったと聞いて安堵するが、明日大きな戦いがあるから、しばらく里へは帰れないという。
軍勢二万の大将はあの韓国。気が進まない犬上。
そして戦いが始まり、韓国との戦いになる犬上。

斬り合いの中で犬上が鼻を切られた。上あごまで届く深い傷。
戦いは勝利したが、鼻の傷がどんどんひどくなる。狼の顔が崩れて腐臭を放ち、その顔をひきむしる犬上。
その下から人間の顔が現れた。
未来
何とか爆撃から逃れてイノリの元へ歩き出したスグル。

だがイノリが騒いで逃げる。顔を手で触ると自分のものではない。

イノリに聞くとオオカミの顔だと言う。
自分の運命を感じて、このまま基地を爆破しに行くスグル。
装甲車を奪い、基地へ体当たりするスグル。

基地は爆破され無人機の攻撃は止まった。攻め入る部隊。
攻撃部隊からオヤジへの報告。残るは総本山のみ。

タワーは残しておけと言うオヤジ。そして「光」に代わって新しい宗教を作ると言い出した。それは「不滅教(エターナリズム)」
そしてスグルの死を知って、軍神に仕立て上げろと指示する。
過去
次々と敗戦の報を聞いて落胆する大友皇子。山越えをして逃げるが進退窮まった。
家臣に自分の首を切らせて果てる大友皇子。
勝利した大海人皇子は、人の顔に戻った犬上に側近にならないかと言ったが、里に戻る事を選んだ犬上。
人の顔に戻った犬上を見て涙を流すおばば。大海人皇子はどんな人?の問いに「恐ろしい方、頭が切れすぎる・・・」
支配者となり、疑心暗鬼が募る大海人皇子。

この国の神は天を照らす大神。私の神を崇めない者は断罪する!
帝よりの使者が犬上に官位を与え、赴任を命令するが、それを蹴っておばばと共に旅へ出る。
それを見送り泣き崩れるマリモ。

人間となってしまった犬上を、もう諦めろと言う父。
千年経ったとき、人の姿を借りて、ある男と出会うという。

その男こそ犬上の生まれ変わり。
未来
神殿で現存神、大友の前に引き出されるヨドミ。

彼女が不老不死の力を持っているかが知りたい。

大友は、火の鳥に出会ったが、捕えることは出来なかった。
胸を撃たれるが死なないヨドミ。額を打ち抜かれても。

集団での銃撃にボロボロになるヨドミ。
だが起き上がる。ついに火炎放射器で焼かれる。

その灰が動き出し、オオカミの姿になって外へ走り出した。
オオカミの顔で立つスグルの元に駆け寄るメスのオオカミ。

ヨドミ、スグルと呼び合う。
私たちが別れわかれになってから一千年も経つ。
肉体はもう死んだと言うスグル。
そこに火の鳥が迎えに来た。手を繋ぎ、光に吸い込まれて行く二人。