ティミーの裏切り:後編 | ラスベガス的リタイアの法則

ラスベガス的リタイアの法則

在米30年をハワイと南カリフォルニアで過ごしたのちに、ラスベガスで始めた引退生活。ところが主人が悪性脳腫瘍に。ラスベガス大好き♡なヨメが、愛する主人のために古巣カマリオへ。
主人が天国に行き、ラスベガスに戻って来ました。時に泣きながら、一生懸命生きてます。

Hi everyone!

お元気ですか?

昨日、親切な読者の方にご指摘いただいて、「ティミーの裏切り:前編」内の情報に誤りのあることが判明しました。

市民権がないと遺された配偶者は遺族年金が貰えない、と書きましたが、2009年に法が改正されていました。現在では永住権保持者だけでなく正規ビザがあれば、言い換えれば不法移民でなければ貰えるそうです。ここに訂正させていただきます。

私は911の時に、今後は移民に対する規制が厳しくなるんじゃないかとビビって市民権を取ったのですが、アメリカってやっぱり太っ腹。爆笑

さて。
ジェニファーがいつだかポツリと言いました。

「でもさ、サンディエゴに引越してたら大変なことになってたね」

そんなことがあったのも忘れていましたが、そういえば一時はティミーにほだされてサンディエゴで家探ししたのでした。
ジェニファーに指摘されて、私もギョッとしました。

ホンマやわ〜。

サンディエゴには他に友達もいないし、頼りはティミー一家だけだったから、私はあわや四面楚歌になるところでした。

最初にティミーが遺産の話を持ち出した時、私はそれとなく言いました。

「お金は絡んでないねん。ただトラストには記載されてないけど、アンタのお父さんが3000ドルずつあげようっていう話はしててん」

するとティミーは吐き捨てるように、

「3000ドルてか」

ひとりにしたら3000ドルは端金でも、8人全員に払う私にはまとまったお金。砂を噛んだようにざらりとしたものが喉元を通り過ぎました。

この1年間、ティミーの存在がどれほど心の支えになったかしれないし、心の底から有り難かった。ティミーの子供ペイトンとキャミーもとても良い子たちだから、彼らには将来的に援助してあげたいと思っていました。

今回主人が逝ったことで、夫婦共同で作成したリビングトラストを書き換えなければなりません。その中で私の遺産は、私の息子たちとペイトンとキャミーの4人で分配するようにお願いしていました。

それくらいティミーには感謝していたし、その恩返しはしたいと思っていたのです。

私の遺産について詳しいことを言うとまた揉める素なので、さりげなくペイトンとキャミーには何かしてあげるつもりであることだけ伝えました。

その時ティミーは、

「Oh, thanks!」

と言ったけれど、それは皮肉にしか聞こえませんでした。
 
弁護士ザックにティミーが主人のドクターの名前を聞いて来たと言った時、ザックはさらりと言ったのです。

「共同名義にした時にご主人に判断能力があったかを調べようとしているんですよ」

ガーンガーンガーン

この時のショックは、言葉では言い尽くせません。

ティミーが?!
一番信頼してたティミーが?!

電話ではごく普通に喋っていたのです。私がラスベガスにいると言うと「それは良かった」と安心したように言ったのです。その舌の根も乾かないうちに、思い出したようにドクターの名前を聞いたのは、私を訴えるためだった?!

私はショックで言葉も出ませんでした。

「向こうに勝ち目は一切ありませんが、もし弁護士を立てて来たら、僕に電話するように言ってください。あなたはもう誰とも話したらダメです」

何事もなかったようにティミーからテキストが来たのは翌週のこと。

「オヤジの死亡証明書を送ってくれる?」

その直後に今度は電話がかかって来ました。無視して後で留守番を聞くと、やはり死亡証明書を送ってほしいとのこと。よほど急いでいるようでした。

死亡証明書が必要なのは法的事務のみ。本来ならティミーに死亡証明書の必要性はありません。

ティミーがお金を出して弁護士を雇ったとは思わなかったけれど、知り合いの弁護士にそれとなく相談した可能性は高く、どっちにしても共同名義に異議を申し立てる心積もりがあるのは確か。

これでティミーの魂胆に確信を持ちました。

後で知ったことですが、ティミーは主人の友人トムにも電話していたのです。トムは病院にも来て数日一緒に座ってくれたので、その時に連絡先を聞いたのでしょう。

トムは、

「子供と上手くいってないという話は聞いたことがあるけど、誰に何を遺すつもりだったとか僕はよく知らないし、関わりたくないから知らないと答えた」

何がショックだったと言って、口では私の味方の素ぶりをしつつ陰で工作していたという事実。

主人の最期を見守りながら病室で一緒に座った数日間に、主人の遺族年金が貰えるようになる2年後までは、賃貸の家賃が唯一の収入源だと私は何度もティミーに話していたのに。

だからあの家が私の命綱であることは重々承知しているはずなのに。

第一それよりも。

臨終の枕元で主人に、私のことは自分たちが守るからと言ったあれは嘘だったのか。
最期の最後まで主人に嘘をついたのか。

私はそれが許せませんでした。

その日はテキストも留守番も無視して放っておきました。

とりあえず弁護士に相談しましたが、ティミーは息子なので主人の死亡証明書を取り寄せようと思えばできるから、私が送ってあげても私の不利になることはない、ただすぐには送らない方がいい、とのこと。

誰がわざわざ送るかい。プンプン

翌日またティミーからテキストが。

「昨日返事なかったけど大丈夫?」

そこで2日後に返信しました。

「全然大丈夫ちゃう。私はアンタのことを一番信じてたのに。アンタは私のことが信じられなくて残念です。すべてが解決するまで連絡しない方がいいと思います」

これがティミーとの最後の会話になりました。1カ月以上前のことです。

それにしても。

最初にメリッサに弁護士に相談するつもりだと打ち明けた時、「そんなことしなくていい。ティミーは今のままでいいから」と言っていたのに。

お金の威力は凄まじい。

でも遺産をアテにしていた彼らにしたら、私は遺産を独り占めしようとしているごうつくババァなんだろうな、きっと。

父親を幸せにしてくれて感謝していると弔辞では言ってくれたけど、欲が絡むとそれとこれとは別問題なんだろうな。

多分日本でもそうだと思うのですが、アメリカでも夫が死ぬと遺産はすべて妻が相続し、妻が死んだら子供たちで分配相続するのが一般的。夫は遺される妻のことが心配だから、たいていすべてを妻に遺すのです。

アメリカは離婚率が高いので当然再婚率も高いから、再婚夫婦であっても結婚していた年数が長ければ同じことです。

だって遺された妻は、夫の他界後も生きていかなくちゃいけないから。

主人の入院中にメリッサが、私にふと漏らしたことがありました。

「あなたはまだ若いから、またいい人が見つかるよ」

その時は、主人の臨終の際にそんなことを持ち出すことすら不謹慎に思えて、

「こんな思いはもう一生したくないから、再婚なんてあり得ない」

と答えたのですが、今になればこれが実は彼らの密かな懸念なのではないかと。父親の遺産を元手に私はまた誰かと再婚するに違いない、と踏んでいるのでは。

実の子なら喜んで応援することでも、ここがなさぬ仲の非情な部分。

明日はレイチェルのお話など。もうね、3人それぞれに追い詰められて、ホントに大変。
主人の生前中は、主人と彼らの関係にはなるべく関わらないようにしていたけれど、主人がいなくなった今は、ますます主人が不憫になりました。

主人は何度も何度も痛い目に遭いながらも、ずっとこの3人を愛し続けていたのだと思うとやり切れなさでいっぱいに。

「他に誰もいらん。お前だけや」

と言っていた言葉の重みが、今にしてなおさら骨身に染み入ります。

では、お元気で。

Have a nice day!

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