H30第2回-通信線路-問3 電気通信主任技術者(線路)

(1) 次の文章は、多重伝送技術について述べたものである。

多重伝送技術は、複数の信号を一つの共有された伝送路で送る技術であり、高速大容量通信の実現だけではなく、双方向伝送のための技術としても用いられている。
上りと下り方向にそれぞれ1心ずつ別の光ファイバを割り当てる方式としては【SDM】方式があり、光ファイバ1心で双方向伝送を実現する方式としてはTCM方式、WDM方式などがある。
TCM方式は、上りと下り方向のそれぞれの情報に対して【時間差】を設けて伝送することにより、光ファイバ1心で双方向伝送を実現している。この方式は、光ファイバが1心で済むため伝送路のコストを抑えることができるが、双方向伝送のために【時間差】を設けていることから伝送できる距離が制限される。
WDM方式は、異なる複数の波長の光を1心の光ファイバで多重伝送することができるため、上りと下り方向に別の信号波長を用いることにより、光ファイバ1心で全二重の双方向伝送が可能である。
また、多重伝送技術としてこの方式を用いた中継系ネットワークの利点は、1波長で伝送する場合と比較して、各波長の【伝送速度】を低く設定できるため、光ファイバの非線形性や【分散特性】による波形劣化が小さいことなどである。

(2) 次の文章は、WDM伝送技術、光変調方式の特徴、光ファイバ増幅器の利得などについて述べたものである。
(ⅰ) ITU-T勧告で規定されているWDM伝送技術などについて述べた次のA~Cの文章は、【Aのみ正しい】。
A WDMの周波数グリッドは、光アンプを用いたマルチチャネルインタフェースの中で規定されており、基準の光周波数は193.10 THz と定められている。
B 【DWDM】では、光周波数の有効利用を図るため、光周波数間隔が12.5 GHz 、25 GHz 、50 GHz 、100 GHz 及び100 GHz の整数倍となるように定められている。
C 【CWDM】では、波長安定化の要求条件を緩和するため、波長間隔は20 nm とされている。
メモ:https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-wdm/

(ⅱ) 光変調方式の特徴などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、 (④) である。
① 電気信号によりLDの出力光を強度変調する方式には、直接変調方式と外部変調方式がある。【直接変調方式】は、駆動回路においてLDにバイアス電流と変調信号を印加することにより変調光を得る方式である。
② 直接変調方式は、一般に、変調速度が1 GHz 以上になると、【チャーピング】の影響により伝送距離に制限が生ずるとされている。
③ LN変調器は、導波路構造のマッハツェンダ干渉計構成をとり、電極に電圧を印加したとき、【ポッケルス効果】により導波路の屈折率が変化し、光の干渉状態が変わることを利用して出力光をオンオフ制御している。
④ EA変調器は、PN接合のダブルヘテロ構造を持つダイオードに逆バイアスを印加したとき、電界吸収効果により導波層を通過する光が吸収されることを利用して出力光をオンオフ制御している。
メモ:https://www.manifold.co.jp/course/10shunin-gijutsusha/kakomon/20171218optical_modulation_modulator.html

(ⅲ) 光増幅器の利得、雑音指数の測定法などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、(④) である。
① 光増幅器の利得は、光増幅器の入力端での信号光パワーに対する出力端での信号光パワーの比として定義され、入力信号光パワーが低い領域では一定の値を示し、この領域は非飽和領域、線形領域あるいは小信号領域といわれる。
② 光増幅器の利得は、入力信号光パワーのほか、偏波面の変化によっても変動するため、利得測定中に信号光の偏波面が変化すると誤差を生ずることがあることから、偏波依存利得変動の大きい光増幅器の利得を測定する場合は、偏波スクランブルを行うか、測定ポイントごとに偏波面の調整を行う必要がある。
③ 光増幅器の入力側のSN比と出力側のSN比の比は、雑音指数といわれる。光増幅器の利得が1より十分大きい場合には、雑音指数の支配的要因は、増幅された信号光とASE光の間で発生するビート雑音と、ASE光とASE光の間で発生するビート雑音である。
④ 利得と雑音指数の測定方法は、電気的手法と光学的手法に大別される。光学的手法は、利得測定において電気的手法と比較してASE光の影響を受けにくく、また、雑音指数の測定において雑音指数総和値の測定に適しており、光増幅器の実使用に近い状態での値が得られる。


(3) 次の問いの 内の(ク)に最も適したものを、下記の解答群から選び、その番号を記せ。光ファイバ複合架空地線(OPGW)について述べた次のA~Cの文章は、 (全て正しい) 。

opgw.jpg

A OPGWは、光ファイバの無誘導かつ、軽量という特徴を利用して、光ファイバを送電線の架空地線に内蔵し、本来の架空地線としての機能と通信機能を兼備させたものであり、一般に、光ファイバを収納するOPユニットとアルミ覆鋼線を撚り合わせた架空地線部により構成される。
B OPGWは、架空地線内への光ファイバ収納方法により、固定型と非固定型の2種類に大別される。固定型の一つであるスペーサ型は、一般に、アルミスペーサのら旋状の溝に光ファイバを収納し、これをアルミパイプで保護した構造であり、耐側圧特性を向上させている。
C 架空地線は、電力線からの誘導電流、短絡事故などにより高温になる場合があることから、OPGWでは耐熱特性に優れたシリコン被覆光ファイバなどが使用されている。

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