楽園の泉

自転車とかカメラとかのブログ、たまにねこ。

フェイクとクローン

2020-11-28 | カメラ
最近”お熱”なソヴィエトカメラの件。

当初、レンジファインダー機として中古のライカを探していましたが、ふと脇道に目が逸れたようで、ソヴィエト製のライカ”ゾルキ”が気になってました。この時”キエフ”のことは片隅にも無し。寸暇を惜しんで調べているうちに、ゾルキがフェイク・ライカ(の一角)ということを知った後、ナチス・ドイツの象徴だった「ライカのカメラ」に対しそのコピーを作って抵抗をする象徴が”フェイク・ライカ”という記事を見つけて胸が熱くなりました。この辺は連合国寄りな性格が出ますね。

カメラのような精密機器に、「ソヴィエトの」とか「中国の」とかいわゆる旧共産圏の名前が付くと、「ちょっとヤバいもの」っぽさを妄想して指先がもぞもぞするのは、数寄モノならだれもが感じるところかもしれない。車で言えば油圧サスペンションの頃のシトロエンがその入り口みたいなものか。(あくまで「入り口」としての例)

で、ソヴィエトのカメラ。簡単に見てゾルキのほかに”FED”と”キエフ”という製品がありました。ゾルキとFEDはライカのコピーから始まり、こっちはその後、製品を改良してライカとは異なる製品に進化していきました。



さて、キエフ

こっちは第二次世界大戦後、ドイツのドレスデンにあったドイツのカメラメーカーのもう一つ『ツァイス』の工場や部品を一切合切「購入」してウクライナで生産を始めたもの。同じドイツに起源を持ち、同じようにソヴィエト連邦で生産されたカメラですが、ゾルキとは全く違う由来を持ちます。ちょっと官製品っぽいですね。

官製品っぽさを象徴するのが、モデルが年を経るに従って、工作精度がいい加減になっているということ(らしい)。手に入れた4aMはモデルとして末期にあたるため、ヴィンテージとしての価値はほぼ底とのこと。発売が1970年代ですが、手許に来たのは1980年製。手持のカメラの中では OLYMPUS L-3 に次ぐ新しさ。L-3 がズームやピント合わせ、フィルムの装填まで電気駆動になっていて、フィルムを使うデジカメ、あるいは「鉄人28号化」しているのに対して完全にマニュアル駆動なのは、ちょっと眩暈がします(褒め言葉)。

そんなキエフの元ネタがツァイス・イコンで作られたコンタックス(1930年代より生産開始)で、そのいわばクローンを延々と作り続けてここまで来た、のがなんとなくイメージする「旧共産圏的」なところが、食指をそそったのかもしれません。キエフに決めた直接の理由は、シャッター幕が「幕」ではなく本当の「金属製シャッター」という点。開くと本当に商店のシャッターが中に入ってます。写真を撮るたびに「ヂャッ、ヂャッ」っていかにも機械的な音がするのが、ちょっと快感です。

ヴィンテージとしての価値はほとんど無いにしても、その中身はヴィンテージとほとんど変わらない(かちょっとオチる)怪しさを持つキエフ、搭載するジュピター8Mというレンズがこれまたツァイス・ゾナーというレンズのデッドコピーで実は良く写るんです。写真は「カメラ本体ではなくレンズとフィルム」と考えると、本家ツァイス・イコンのコンタックスとゾナーを「ソヴィエト製」ということでお手軽に手に入るのは、「水たまりのつもりで踏んだら…」に近いかもしれません。

雑な来歴を書き連ねましたが、面白い経験でした。今回、ジュピター8MにカラーネガフィルムのFUJI100を合わせましたが、最近モノクロづいているのでACROS2をあわせたほうが結構いい雰囲気に撮れるんじゃないかと感じています。


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