5年前の7月22日、
実の兄から起こされた
「子の引き渡し請求」の裁判が終わった。

いえ、「和解」というカタチで終わらせた。


なぜ「和解」したのか?

「和解する」ということは、
「ハルをいつか引き渡さなければならない」ということ。

絶対に引き渡すわけにはいかなかった。

だって、ハルは 0歳のときから私たちが育て、ハルは私たちを「パパ ママ」と呼び、「親子」だったのだから。

『養子縁組をする』約束で、
ハルを「本当の娘」として育ててきた。

これが本当のこと。


だから、なにがなんでも 渡すわけにはいかない。そう思っていた。

でも 裁判官が言ったんだ
「これは判決は出せない!あなたたち兄妹でしょう」

そして、お世話になった保育園の園長先生
「ハルちゃんの幸せのために、私はどこにでも出るからね」と言ってくれて証言もしてくれた 
園長先生が 言ったのだ。

「大人が裁判なんかで争っているようなところにいる子どもが かわいそうだ。
にくしみよりも 子への愛情。
裁判なんかより、もっと子供のほうを見てあげなさい。一番愛情がほしい時期なのだから。

大岡裁判をやりなさい。
昔、勝ったほうが本当の母親だと言って 子どもの引っ張りあいをさせた。
けど、痛がる子どものすがたを見て、手を はなしたほうが 本当の親なんだよ。
あなたたちは親として、せい
いっぱいの愛情で 育てさせていただきなさい。
そのすがたを見れば、みんな きっと わかってくれると思うよ」と。

なやみになやんだけど、
私は園長の言うとおりだと思った。

ハルにとっては、どちらも親だし、あらそうべきではない。

あらそうことで、一番 きずつくのはハルなのだ


心が苦しかった。
本当は渡したくなんかなかった!

保育園の音楽会で、子どもたちの控え室担当だった父兄が教えてくれた
「ハルちゃん、ずーっと 「早くママに会いたい」って言ってたよ」と。
ほんのチョット離れただけでも、そうなのに...
ハルと離れるなんて...

でも、裁判なんか 終わらせるべきだと思った。

憎しみよりも 子への愛情。
もっとハルに愛情を注ぎたい!

それから 2年8ヶ月間、
せいいっぱいの愛情で、ハルを育ててきたよ。
本当に宝物のような日々だった。

ハルの成長が本当にうれしかった。

苦手な鉄棒も跳び箱も縄跳びも がんばってできるようになったり、
年下のお友だちのお世話をして、やさしくできるお姉さんになったり...


ハルは保育園を卒園して小学生になった。
ハルの心の成長には ママはビックリしたよ。

ある時、ハルは言ったね。
「みんなでハルちゃんをとりあって...
ハルちゃん生まれてこないほうがよかった?
みんなが仲が悪いの ハルちゃんいるからでしょ?」
って

その言葉を聞いた時、
裁判を終わらせたことは、正しかった!と思ったよ。

大人同士があらそうことで、一番つらいのはハルなんだよね。

ハルを「引き渡す」日が近づいてきても、ママは ハルと はなれる気がしなかったよ。
最後まで みんな わかってくれると信じていたよ。

だから、引き渡す日、
「ハルのために、大人同士が仲良くしていこう」って言ったんだよ。

そして、
たとえ ハルを引き渡したとしても、
すぐ近くに住んでいたから、またすぐに会える。
ずーっとずーっと近くで見守っていける
そう思っていたんだよ。

明日また会える
そう思っていたんだよ。

でも、
とつぜん、ひっこしてしまって 
会えなくなってしまった

ハル つらかったね。

自分でえらんだ お気に入りのランドセルも、買ったばかりの新しい筆箱もおサイフも、お気に入りの 絵本や おもちゃ、ぬいぐるみ、見なれた景色、通いなれた小学校、大好きなお友達や先生とも お別れすることになってしまうなんて。

ママはかんがえもしなかったよ。

ハルが ひっこしてしまったことをきいて、お友だちのママ、学校の先生、保育園のときの先生、みんな 泣いたよ。
ハルのお友だちもビックリしていたよ。

パパもママもないたよ。

ハル!
元気でいるの?
暑さに負けてないかな?
ハル!
きっと会える!
ママは今でも信じてるよ
あと1つの願い
かなえようね