アレルギー専門医試験を振り返る:④アレルギー性鼻炎。

2020年のアレルギー専門医試験を振り返るコーナー。
第4回はアレルギー性鼻炎についてです。

吸入アレルゲン

  • ヤケヒョウヒダニ 学名Dermatophagoides pteronyssinus Der p 1/2
    喘息リスクでもある。乳児期のダニアレルゲン感作は、喘息発症や呼吸機能の予後と関連する。ダニアレルゲンは水溶性である。Der p1はシステインプロテアーゼ活性を持つが、Der p 2は持たない。プロテアーゼはTh2型免疫応答を誘導する。ダニの至適発育温度は25℃、湿度70%。ハウスダスト1g中のダニアレルゲンDer 1は2μg/g dustが感作の閾値、10μg/g dustが喘息発症・発作誘発の閾値。
  • コナヒョウヒダニ 学名Dermatophagoides farina Der f1/2
    ツメダニは咬んでくるダニ。アレルゲンにはならない。ヒョウヒダニは別名チリダニ。
  • チャバネゴキブリ 学名Blattella germanica Bla g 1/2
  • イヌ 学名 Canis familiaris Can f 1
  • ネコ 学名 Felis domesticus Fel d 1 犬と猫に交叉反応性はない。環境中にFel d 1が多いと喘息発作を起こしやすい。感作閾値は1μg/g dust。
  • スギ 学名 Cryptomeria japonica Cry j 1/2 トマトと交差
  • ヒノキ 学名 Chamaecyparis obtuse Cha o 1/2
  • ブタクサ 学名 Ambrosia artemisiifolia Amb a 1 メロン、スイカ、キュウリなどのウリ科、キウイ、バナナと交差。ヨモギもブタクサと同じキク科で、ウリ科と交差する。プロフィリンである。秋に飛ぶ
  • カモガヤ 学名 Dactylis glomerata Dac g 1
  • シラカンバ 学名 Betula verrucosa Bet v 1 リンゴ(Mal d 4ではなく1)、モモ(Pru p 3ではなく1)、サクランボ(Pru av 1)、イチゴ、大豆(gly m 1ではなく4)と交差。PR-10である。春に飛ぶ。サクランボとモモは交差する。コナラ花粉と交差抗原性をもつ。
  • アルテルナリア 学名 Alternaria alternate Alt a 1
  • アスペルギルス 学名 Aspergillus fumigatus Asp f 1 真菌が喘息の原因になるかはまだ証明されていない。飛散胞子は真菌アレルゲンとして重要。
  • アニサキス Ani s 1

アレルギー性鼻炎

  • 3主徴はくしゃみ、鼻漏、鼻閉である。
  • 通常は食物アレルギーのほうが先、アレルギー性鼻炎のほうが後。
  • アレルギー鼻炎の有病率は約4割.近年花粉症の増加が顕著である.スギ花粉の感作年齢も低下傾向である。
  • 鼻炎の学童の20-30%が喘息を合併する。
  • スギ花粉は秋も飛んでいる。
  • ペットの飼育は喘息やアレルギー性鼻炎の原因となる。
  • 一酸化窒素は鼻炎の原因となる。
  • アレルギー性鼻炎の遅発反応は、暴露後6-10時間。
  • 鼻噴霧ステロイドは遅発反応に効くが連用すれば即時反応にも効く。効果発現に1-2日かかる。
  • TH2サイトカイン阻害薬:スプラタストトシル酸塩(アイピーディ)はTh2サイトカイン阻害薬であり、抗ヒスタミン作用はない。鼻炎でも、鼻閉型に効く。

アレルギー性鼻炎に対する免疫療法

  • 免疫療法の効果は3~5年程度持続するとされる。
  • スギ花粉舌下免疫治療薬(シダトレン®)はスギ花粉特異的IgE陽性の5歳以上のスギ花粉症に適応がある。最低2年間の投与が必要.3~5年の投与が望ましいとされている。スギ花粉飛散期からの治療は出来ない。
  • ダニの舌下免疫療法治療薬は、気管支喘息には適応はない。鼻炎に喘息が合併する場合には使用できるが、コントロール不良な喘息を合併している場合には使用しない。
  • 2種類くらいまでが限度。多種抗原アレルギーでは適さない。
  • 皮下免疫療法は小児にも適応がある。
  • 妊婦には安全性が確保されていない。
  • βブロッカー内服患者は禁忌。ACE阻害薬も避けたほうがいい。
  • 副反応は1か月以内に高率に発生する。
  • 4ヶ月程度で効果が現れ、3年目ぐらいで効果が最大になる。量は決められたプロトコールに従い、症例毎に量の調節は不要.皮下免疫療法の場合は投与開始量の調節が必要なのとは対照的。
  • 効果の機序については明らかになっていないが、抗原特異的IgGの量が増え、IgEとの結合が抑制される可能性が考えられている。

アレルギー専門医試験を振り返るシリーズ一覧

アレルギー専門医試験を振り返る:①アトピー性皮膚炎。

2020年2月4日

アレルギー専門医試験を振り返る:②食物アレルギー。

2020年2月5日

アレルギー専門医試験を振り返る:③気管支喘息。

2020年2月6日

アレルギー専門医試験を振り返る:④アレルギー性鼻炎。

2020年2月7日

アレルギー専門医試験を振り返る:⑤免疫に関する知識。

2020年2月10日

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。