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UCL16-17-E2-モナコ.vs.レヴァークーゼン

UCL16-17-E2-Monaco.vs.Leverkusen

まずはスタメンから
白がモナコ、黒がレヴァークーゼン(Fig.1)

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Fig.1 モナコvsレヴァークーゼン

 

モナコは4-4-2

ファルカオが頭部のけがのため欠場しているためジェルマンがCF、変更選手はジェルマンのみなのであまり大きな変更はないとみていいだろう。

 

レヴァークーゼンは4-4-2

ベンデウがスタメンを外れたことでヘンリヒスがLSB、L.ベンダーがRSB。チャルハノールはLSH、フォラントが1列目と1節とはだいぶ様子が違う感じである。

 

試合の概要

試合は1-1の引き分けで終える。72分にメフメディのクロスをJ.エルナンデスがヘディングで決めてレヴァークーゼンが先制するも、93分に攻撃参加していたグリックの素晴らしいミドルシュートモナコが同点に追いつく。内容としてはレヴァークーゼンのほうが大分よかったが、モナコは1節に続き苦しい試合展開でも勝ち点を得ることに成功している。

 

レヴァークーゼンのビルドアップ、モナコの前線守備


レヴァークーゼンのビルドアップは1節と同じくカンプルを中心に行う。すなわちカンプルがLSBの位置に、ヘンリヒスがSHの位置に移動する。4-4-2の1列目の脇を突くという意味で1節のCSKA戦でもうまくいっていたが、モナコは以下のように対応した。(Fig.2)

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Fig.2 モナコのカンプル対策

モナコの守備の基本形は4-4-2。バカヨコ、ファビーニョの守備重視のCH、ジェルマン、B.シウバが1列目となっており、ルマーとモウチーニョはその時々でお互いのポジションチェンジをすることが多い。

 

モナコの守備の約束事は以下の通りだった

・トプラク、ターに対して牽制はするものの積極的には追いかけない

・カンプルがLSBの位置でボールを受けようとしたら1列目のうち近い選手が厳しくマーク

・本来のSBヘンリヒス、L.ベンダーにはモウチーニョ、ルマーが厳しくマーク

 

つまり、「カンプルにボールを持たせない」がこの試合のモナコの守備のコンセプトだった。ただしモナコのこの守備は1列目が度々中央から外れてしまうため、ターやトプラクがある程度自由にボールを持ててしまう。実際レヴァークーゼンはカンプルを起点にしづらいと気が付くと、トプラクやターがロングボールを前線にフィードするようにシフトしていく。

 

こういったレヴァークーゼンに得意のビルドアップを試合を通してさせなかったことを考えるとモナコの守備は機能していたといっていいと思う。しかし、より上位のチームであれば、カンプルのようにビルドアップ-ゲームメイクできる選手を複数スタメンに擁していていることが多く、今回であればL.ベンダーやアランギスのような右側の位置の選手がもっとビルドアップ、ゲームメイクに絡めれば面白かったと思う。

 

モナコのビルドアップ、レヴァークーゼンの前線守備

一方でモナコがボール保持した時、レヴァークーゼンは4-4-2で迎えた。基本的には1列目をJ.エルナンデス、フォラントが務めるスタメン表通りのものだった。モナコのビルドアップの形も1節のトッテナム戦とほぼ同じ。基本はバカヨコがCBの間に落ちる、両SBがSHの位置で、両SHはより中央でプレーする。もしくはジェメルソン、グリック、ラッギの3人でビルドアップすることもあったが、基本的にレヴァークーゼンの1列目の脇から3人でビルドアップしようという狙いは明白だった(Fig.3,4)

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Fig.3 レヴァークーゼンの守備

 

レヴァークーゼンの守備の約束事は以下の通り

・J.エルナンデス、フォラントはそこまでCBにプレスせず、中央のエリアとファビーニョモウチーニョへのパスを牽制

・J.ブラント、チャルハノールはSBに激しくプレス

 

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Fig.4 モナコのビルドアップ

 

モナコがCLレベルで戦っていくうえで大きな障害となるのは、ボール保持攻撃、特にビルドアップの貧弱さにある。ファビーニョ、バカヨコは守備での貢献度は高いもののビルドアップであまり有効にプレーできない。これはシディベ、ラッギにもいえることで、モナコのビルドアップの多くは両CBもしくはSBからのロングボールのみ。そのロングボール精度もあまり高くなく、前線で無理やりボールを守ってくれる選手もいないのでボール保持攻撃は壊滅的だった。

 

カウンターと前線守備の質の差

両チームともボール保持攻撃はお互いの守備によってほとんど潰されてしまっていた。となると両チームの内容差を決めるのは、前線守備からいかにカウンターにつなげるか?がうまいかにかかっている。

 

モナコレヴァークーゼンのチャンスメイク

モナコのチャンス

28m50P(14-8-10-27-19)Grade4

31m20P(14-27-8)Grade4

42m50P(8-27-18-19)Grade4

43m50P(2-24-18-19-27M)Grade4

 

50m00P(24-10-24-8-10-27-19-10)Grade5

78m00P(8-25-11-10-19)Grade4

91m20P(24-11)Grade4

93m30P(19-11-25M)Goal

 

レヴァークーゼンのチャンス

03m10P(4-31M)Grade4

12m40T(21-39-31-10M)Grade4

40m40P(7-20-10)Grade4

41m30T(44-19)Grade4

46m30P(19-10-31-7)Grade5

 

46m50P(1-31-7)Grade4

51m40P(39-10M)Grade4

60m20T(21-31)Grade4

67m40P(39-31)Grade4

71m20P(10-7-44-10-7)Grade4

72m40P(20-14-7)Goal

83m40T(14M)Grade5

86m00T(44-7-20-10)Grade4

 

両チームともチャンスメイク数は少なく、

モナコはGrade3以上が15個(うちカウンターが1個)Grade4以上が8個

レヴァークーゼンはGrade3以上が23個(うちカウンターが9個)、Grade4以上が13個だった。両チームのチャンスメイク数の差はほとんどカウンターによるものであり、レヴァークーゼンは特に前線でボール奪取しショートカウンターに持ち込む回数も多かった。

 

レヴァークーゼンは前線に運動量を伴う選手を配置しているが、個の能力で特化した選手がいない。前線守備→カウンターという素晴らしい武器をチームとして持っているものの、得点になかなか結び付けられなかった。62分にJ.ブラントをキースリンクに交代し、キースリンク、J.エルナンデスの1列目にするものの、キースリンクの高さはあまり有効活用されていなかった。

 

モナコは76分までにジェルマン、バカヨコをカリージョ、ムバッペに変更しモウチーニョファビーニョをCHとする(Fig.5)

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Fig.5 76分以降の各チームのフォーメーション

 

この時間帯までほとんど有効なビルドアップができていなかったモナコだったが、モウチーニョがCHとしてプレーすることでボール保持攻撃の質が上がったのは間違いなかった。

 

ただしモウチーニョをCHにおくのは守備を考えても難しいものがある。ボール保持攻撃の必要性が重視されるのであればモウチーニョは重要なカードになりえるが、CLレベルのチームと戦うためにはまず守備が大事になってくる。

そうなればバカヨコ、ファビーニョのCHは動かせないため、モウチーニョは必然的にSHでプレーしなければならないが、SHに結構優秀な選手が集まりつつあるモナコにおいて、モウチーニョのSHが正しいのかはこの時点ではまだわからない。

 

グリックの謎の同点弾

この試合はっきり言ってモナコにチャンスはほとんどなかった。ルマーは持ち前のスピードを生かせるシーンがそもそも少なく、B.シウバも圧倒的なキープ力を見せていたもののチャンスメイクにつながるようなプレーは少なかった。

 

そんななかでシディベからのロングボールをカリージョが落としてグリックが豪快なミドルシュートを決めてしまった。レヴァークーゼンとしてはあと1プレー守れば勝ち点3だったことからも非常に手痛い引き分けとなってしまった。

 

 

余談

とにかくモナコは内容がよくなかった2試合で勝ち点4を得たという事実がとてつもなく大きい。ただし内容はそれほどよくないので、改善するのかボロが見え始めるかは今後の試合を見ていけばわかるだろう。