長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ビリーブ 未来への大逆転』

2020-09-25 | 映画レビュー(ひ)

 RGBことルース・ベイダー・ギンズバーグ米最高裁判事が亡くなった。長年、ガンとの闘病を続けながら現役最高齢87歳での執務だった。女史についてはその生涯を簡潔にまとめたドキュメンタリー映画『RBG 最強の85歳』が入門編としてオススメなのでぜひそちらも見てほしい。それでも彼女の偉大さを知るには到底、不十分なのだが。

 ミミ・レダー監督、フェリシティ・ジョーンズ主演による本作もその点には自覚的で、1970年代にギンズバーグ女史が手掛けた男女差別撤廃訴訟に的を絞っており、#Me too以後の映画としての役割を果たしている。ドリームワークス初期に『ピースメーカー』『ディープ・インパクト』を大ヒットに導いたレダーが18年ぶりに劇場映画監督に復帰し、熟練の手腕を見せている事にも注目だ。新しさはないかもしれないが、“劇”を組み立てられる職人は貴重である。名優の階段を上り続けるフェリシティ・ジョーンズはモノマネ芸に陥ることなく、それでいて見れば見るほど本人を思わせる名演だ。アーミー・ハマー、ジャスティン・セローも好サポートである。

 映画の中盤、ギンズバーグ女史が娘の成長に触発されて訴訟を決意する場面は映画のための脚色との事だが、常に後世のために道を切り拓いてきた彼女のスピリットを捉えた名場面であり、本作のハイライトである(脚本は女史の甥ダニエル・スティープルマンが担当)。本作を1つのサブテキストとして彼女がアメリカ社会の何と戦ってきたのかをぜひ知ってもらいたい。


『ビリーブ 未来への大逆転』18・米
監督 ミミ・レダー
出演 フェリシティ・ジョーンズ、アーミー・ハマー、ジャスティン・セロー、キャシー・ベイツ、サム・ウォーターストン


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