ストーリー(2)提案

おはようございます、南塚納慧です。

つづきです。

そんなわけでその他の子たちと共に、スタッフとして関わってもらうことになりました。

事務仕事、庶務的なことをお願いすることから始めようと思ったものの、私自身が3つの教室を行き来する生活なため、顔を合わせられる時間も多くはなく、本当にざっくりとした事柄のみ伝えていました。

同じ状況下で、明確にスタッフの子たちに差が出てきました。

その差は、社会経験の濃淡かなと思っています。

私が様々な仕事をしてきた経歴があるので、どこに能力の差が出るのかもわかっています。（舞踊家に転身する前の職業は企業コンサルタントでしたから。）

その目で見て、彼女はある程度何をしてもらってもできるだろうというのがわかったのです。

その仕事ぶりから、テーマパークダンサーを職業とできる子はレベルが高いのだなと知った感じです。

そして、早々につまらなくなっていたのでしょうけど。

なかなか顔を合わせられなかったので、私が「彼女は一通りルーティンはこなしてしまって、することがなくなっているな」と気づくまで、つまらなくても粛々と頑張ってくれていました。

それができ、更に「他に何かできることがないか」を探してくれている姿に、このままは勿体ないという判断に至りました。

とは言え、その頃にはお腹もずいぶんと膨らみ、妊婦であるということが誰の目からも明らかになってきた時期でもあり、レッスンに携わってもらって云々というのも今更です。

そして私なりに持っている妊娠の知識と、彼女が妊娠期間にもバレエを心身が求めているという様を見て、「マタニティバレエ」のレッスンを作ってみないかと提案することにしました。

国内の実例を探したところ今のところほぼ実践しているところが無いことを確認。

海外から英語版で市販されているDVDを入手。

国内の妊娠期のためのエクササイズを説明した書籍を入手。

etc.した上で、やってみないかと。

私が行なっていることの中で「バレエストレッチ」というのがありますが、それも対象は健康な人に限らず様々な体調の方がいらっしゃって、それをケアさせてもらってきているので、マタニティ版も可能だという確信がもともとあったのです。

でも妊娠生活をフルで過ごしたことのない私より、実際妊娠している人の方が説得力があるとは思っていました。

それに、これを彼女が考案していく形にすることで、ライフステージの変化に悩むダンサーたちを先導していってあげられる存在になってもらえるのではないか、と考えました。

まだ信頼関係も築けているか怪しい中での提案でしたから、正直不安はありました。

「何言ってるんだろう、この人？」と思われないかと。

でも、「実はそういったものがないか探していて、産院もわざわざそれで探したけれど産後ケアでバレエを取り入れているところしかなかった」という回答でした。

「それならご自身でやってみない？」

入手しておいたものを全て渡し、「後は好きにしてみて、難しかったら手伝うから」と。

「とりあえずやってみます」と取り組みが始まりました。

その時はまだ、映像にすることまでは考えておらず、彼女の今という時間を過ごすのに役に立てば、という程度の気持ちでした。

つづきます。

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