空手3
(自画像 BY 有明)

 中年空手百条委員会の有明省吾です。

 前回に紹介した山城美智先生の本は実に示唆に富んだものです。

 
 この中に、山城先生がフルコンタクト空手についてその対策を述べている部分があります。これが、今の私の求めているものに極めて近いものでとても驚きました。
 以下、重要箇所を引用してみます。

 〇フルコンタクト空手で第一に重要なものは打撃力ではない。

 (1)最小限のエネルギー消費で、で何回戦もをこなすだけのエネルギーを保持すること。
 (2)少ないエネルギー消費で最大の効果を持つ突きを打つこと。
 (3)無意識にも出せるほど、それを身につけること。
 (4)蹴りなどの他の攻撃との連携がしやすいこと。


 ううむ。これは冷静にフルコンの競技を観察しているなあと思いますね。試合は当然として、普段の稽古でも連続でスパーリングをしますし、昇級、昇段では連続組手があります。試合に出ない中年空手家にとっても、若い連中と戦う際にとても参考になることではないでしょうか。

 まあ、これは「修行の目標」とでもいうべきもので、実際にこれをどうするのか・・・・ということで、追究すべきは以下の技術だということです。

 (1)疲れない体
 (2)疲れずに打ち続けられる打撃
 (3)最少エネルギーで最大の効果のある突き方


 前回の記事で私が取り上げた「手の先」という技術は、そんな攻撃の具体的な方法の一つです。まったくいいことづくめの目標ですが、果たしてこんなことが可能なのか疑問をお持ちの方も多いでしょう。

 しかし、私も3年前、黒帯取得直後に、パワーとスピード、スタミナ、ともに若手に押される自分にほとほと愛想が尽き、空手の基本技と形に可能性を求めて、剛柔流の稽古会に参加しはじめたことは、このブログでも何度も書いている通りです。そこで、私が実際に身につけるべきだと思った技術は、まさに山城先生のご指摘と同じようなことだったのです。

 私が最初に取り組んだのは以下の三点です。

 ① 腰を回さないで突く。
 ② 肩を動かさないで突く。
 ③ 後ろ足で蹴って前進しない。
 
 攻撃のパターンをこのように変えるだけで体力の消費がかなり抑えられます。
 当然、突きは腰の入らない「手打ち」の形になりますが、腰の回転の代わりに「落下する力」「伸びあがる力」「股関節の開閉の力」「重心の移動」を使います。形はまさにこうした体の使い方を教えるためにあったということを学びました。

 この結果、筋力やスピードがそこそこであっても威力を維持できる攻撃ができるようになります。また、肩が動かなくなるので、初動を読まれにくくなり、突きの命中率がかなり上がります。

 こうした突き方を身につけるために「三戦」の形が極めて有効であることを学びました。そして、
セイエンチン、シソーチン、セーパイでは股関節の切り返しや、開閉を学びました。そして、前屈立ちでの移動稽古では、前方へ落下する感覚での移動を、四股立ちでの移動では、重心のスムーズな移動、とりわけ体の軸を運ぶことをを学びました。

 いずれもが、ローコストで効果の高い攻撃をするための技術です。

 さらに、相手を見る「見方」を変えました。相手の全身をぼんやりとピンボケ気味に見ます。こうすることで「周辺視」と呼ばれる作用が起きて、相手の攻撃をかなり的確に把握できるようになります。この辺のことは以下の記事に書きましたので興味のある方はご覧ください。昨今ではバスケットや野球にもこの「周辺視」を取り入れた練習をしているチームがあります。

 中年空手家のためのガードの基本

 こうした周辺視によって、あわてて対応したり、不意の打撃を食ったりということが激減しました。そうすると呼吸が安定するので、スタミナ切れを起こしにくくなります。この周辺視のことは、昔の剣術では「遠山の目付」といってやはり重要視しています。

 こうした稽古の積み重ねによって7~8人とスパーリングをしても息が切れなくなりました。かつてはもう呼吸困難な状態になっていたものですが、大きな進歩です。攻撃をセーブして受けに回っているわけではありません。しっかりと相手を攻撃して、この状態が維持できるのは驚きでした。攻撃のローコスト化と、周辺視によるところがとても大きいと思います。

 こうした方向性を持つことによって、57歳の私が、なおフルコンの組手を続けられています。

 山城先生は「ナイハンチ」「セイサン」などの形から、こういう体の使い方を導き出しています。私が学ぶ剛柔流のそれとは技術的に微妙に違う点もあるのでしょうが、目的とするところ、方向性が私の求めているところと一致していました。

 山城先生は泊手の技術がフルコン空手に応用が可能だと断言されていますが、同様にして私もまた剛柔流の基本や形がフルコン空手に活かせると感じています。もしかすると、首里手系の空手でも活かせる部分がきっとあるでしょう。

 特に、体力に不安を感じ始めた中高年の方には大きなヒントになると思います。基本や形をもう一度見直してみることです。そして、その意味をしっかりと理解することで、若い連中とは一味違った空手になってくるでしょう。
 私は幸運なことに、剛柔流の稽古会でこうした目的にあった稽古ができていますが、昨今では動画が非常に豊富に見ることができます。それらを研究し、自分で反復してみれば効果は必ずあると思います。

 中年こそ、形、基本を意識したフルコンタクト空手に取り組みましょう。

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