久々に映画の感想文。
今回は緊急事態宣言で劇場が休館する前、3月20日に観に行ったこちらの作品です。
【あらすじ】
「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのレネー・ゼルウィガーが伝説のミュージカル女優ジュディ・ガーランドの晩年を熱演し、アカデミー賞主演女優賞をはじめ数々の映画賞を総なめにした感動の伝記映画。映画「オズの魔法使」で一躍ハリウッド・スターの仲間入りを果たすも、非情なショービジネスの世界で心身ともに酷使された末、47歳の若さでこの世を去ったジュディの亡くなる直前のロンドン公演の日々を中心に、最後までステージに立ち続けた偉大な才能が辿った波乱万丈の人生を描き出す。監督は舞台演出家として活躍し、長編映画は「トゥルー・ストーリー」に続いて2作目となるルパート・グールド。
1968年。かつてミュージカル映画「オズの魔法使」に17歳で抜擢され、一躍大スターとなったジュディ・ガーランドだったが、30年後の今は若いころからの薬漬けがたたって心身ともにボロボロ。映画出演のオファーもなく、巡業ショーで生計を立てるも借金は膨らむばかり。愛する子どもたちと一緒に暮らすこともままならず、やむなく彼らを元夫に預けることに。そして自らは、いまだ根強い人気の残るロンドンに活路を見出し、再起をかけて単身渡英するジュディだったが…。
(allcinema onlineより)
詳しいわけではないけれども、もちろんジュディ・ガーランドのことは知っていますし、子役時代にはいろいろな酷い目に遭わされて、若くして亡くなった程度の知識はあった・・・というよりも、その程度の知識しかなかったので、彼女の最晩年を描いたこの作品には僕の知らないエピソードが盛りだくさん。
そういった意味で、まずは伝記映画としてとても興味深く観ることができました。
あとは何よりもジュディを演じた、レネー・ゼルウィガーの素晴らしい演技!
全て吹替なしで演じたという歌はもちろん素晴らしかったですし、自分の思うがまま、わがまま放題に振る舞う迷惑な存在でありながらも、どこか憎めないキャラクターは彼女でなければ演じきれなかったのでは、と思わされるほど。
そして彼女以外にも、ジュディに振り回されっぱなしのマネージャーを演じたロザリン・ワイルダーや、バンドマスターを演じたロイス・ピアソンの「明らかにジュディを迷惑がってるけど、敬意も愛情も持っている」という思いが滲み出ているような演技も素晴らしかったなぁ。
彼らの温かな視線がなければ、この映画の印象はもっと冷ややかなものになっていたのかもしれません。
そんなこんなで、いろいろとグッとくるポイントがあったのですが、何よりもグッと来たのは、ジュディとステージとの関係。
もちろん彼女ほどのスターじゃないですし、それを生業としているわけではないけれども、僕自身、人生の半分以上に渡って音楽活動をして、これまでに何度もステージに上がってきた人間。
なので、本番直前の「きっと今日は全てが上手くいかないに違いない」という恐怖感だとか、やっぱり上手くいかなかった本番を終えた時の絶望感とか、たとえ良い感じに本番を終えても「でも、次はだめかもしれない」と嫌になる気持ちとかが、あまりにもリアルに感じられて、まるで自分も同じステージに立ったかのような気持ち。
で、そんなに嫌な気持ちになるくらいだったら、とっととステージを降りてしまえばいいのにと思いつつも、それでも止めないのは、この映画のラスト付近でのジュディのセリフと同じように
「もう一度、観客と演者の間にある愛を感じてみたい」からということなんだよなぁ・・・・と。
もしかしたら、それは演者側の勘違いかもしれないし、そんなものはもともと存在しないのかもしれないけれども、あのセリフにはすっかり胸を撃ち抜かれてしまったのでした。
というわけで、
ジュディ・ガーランドの晩年を描きつつ、同時に当時のハリウッドの闇(というかエンターテインメント界全般の闇)だったりとか、同性愛者への差別や偏見といったテーマまでも語っている・・・といった脚本の素晴らしさと、音楽のパワーにすっかり引き込まれた作品。
日本での劇場公開時にはいろいろとありましたので、見逃している方も多そうなのがとっても残念な、そんな逸品でした!
(2020年3月20日 チネチッタ川崎にて鑑賞)