劇場 | ヤンジージャンプ・フェスティバル

ヤンジージャンプ・フェスティバル

基本はシュミ日記です。
…遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん…
  

今から1か月ちょい前の7月26日。

緊急事態宣言の影響で、しばらくの間は営業もしていなかったりしたこともあって、3月20日以来4か月ぶりに映画館へ。

向かった劇場は横浜・日ノ出町近くのシネマ・ジャック&ベティ

 

 

このレトロな佇まいが好きで、訪れるたびにワクワクしてしまうこちらの劇場。

休業期間中にはミニシアター・エイド基金のクラウド・ファンディングで超微力ながらサポートしたこともあって、今回はそのリターンでもらえたチケットを使用しての鑑賞。

こうして再び来訪できるよろこびを噛み締めつつ、まずはあらすじの紹介です。

 

 

【あらすじ】
 人気お笑い芸人にして芥川賞作家の又吉直樹の同名恋愛小説を「キングダム」の山崎賢人と「蜜蜂と遠雷」の松岡茉優主演で映画化。演劇界での成功を夢見ながらも理想と現実のはざまでもがき苦しむ男と、そんな男をただひたすらに支え続ける女の純愛と葛藤の行方を描く。共演は寛一郎、伊藤沙莉。監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」「ナラタージュ」の行定勲。
 中学からの友人と劇団“おろか”を立ち上げた永田だったが、上演した舞台はことごとく酷評され、劇団員たちも離れていってしまう。そんなある日、偶然同じスニーカーを履いていた沙希に思わず声をかける永田。女優を目指して上京し、服飾の学校に通う沙希は、生きることに不器用な永田と一緒に暮らすようになり、彼の夢のために公私にわたって懸命に支えていくのだったが…。

(allcinema onlineより)

 

いや、もうこれは他人事とは思えない作品。

とにかく胸に突き刺さりまくりな作品でした。

 

この作品の主人公:永田は、学生時代に演劇の虜になり、劇団で一旗揚げよう!ってんで上京。

しかしながら、上演する舞台は酷評。

さらには高すぎるプライドと低すぎるコミュニケーション能力のせいで、周囲の人たちとはことごとく衝突してしまう・・・という人物。

 

そして、私。

かつては音楽で一旗あげよう!と活動していたものの、酷評とまでは行かずとも、少なくともそれで生活はできてなかったし、彼ほどの大きな衝突はなかったものの、当時も今もコミュニケーション能力は高くないし・・・という共通点もあったりするので、この主人公が繰り返しつぶやく「いつまでもつだろうか」という言葉だったり、同年代の作家の舞台を観て感じた気持ちだったりは、どこか他人事のように思えなかったりしました。

 

と、共感できる部分がある一方で、主人公:永田が、公私ともに彼をささえてくれる恋人:沙希に対して放つ言葉や態度はあまりにも人でなしすぎるので「うわ、さっきこいつにちょっとでも共感したオレがアホだったわ・・・」と、劇場の闇の中で何度も拳を握りしめる私。

しかしその一方で、沙希に対しては「いや、もうそんなヤツとはさっさと別れちゃいなよ」とか「逆に君が彼を受け入れすぎるから、彼は全てがダメになっていくんだよ。」とか、よけいなアドバイスをしたくなったりもしたのでした。

 

そんなこんな。いろいろな想いを抱えながら2人の姿を見守っていたのでしたが、ラストシーンで永田が沙希に対して、自分たちの未来を語る場面が猛烈に感動的で、思わず落涙。

ここのところ、いろいろと抑圧されていた感情が、一気に溶け出したような、そんな気持ちになったりしたのでした。

 

コロナ禍以降。

世の中は「必要/不要」「緊急/不急」の2つに分けられてしまっているような部分があって、映画、演劇、音楽なんてものはすっかり「不要不急の最たるもの」みたいな位置づけにされてしまっている感がありますが、今回こうして久々に「映画館に出かけて、映画を観る」という体験をしてみると、自分たちの生活は不要不急のものに支えられていた部分が大きかったんだなぁと改めて実感。

 

作中に「演劇は何でもできるし、演劇でできることは現実でもできるんだ」というセリフがあったんだけども、それはアート全般に対して言えることだなと思ったし、フィクションでしか表現できない現実ってのはやはりあるものだよな・・・ということを改めて実感したような、そんな気がしたのでした。

 

というわけで、久々に劇場で観たのがこの作品で本当によかったと思えるような作品!

劇場公開はもう終わっているようですが、同時公開されたAmazonプライムビデオではまだ配信中なので、興味のある方はぜひご覧になってください。

(2020年7月26日 シネマ・ジャック&ベティにて鑑賞)