長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

コメット君

2020年07月20日 23時23分55秒 | 折々の情景
 旧暦五月はさて、どんな月になりましょうか…などと言っている間に、皐月も本日、晦日を迎えた。
 梅雨の晴れ間にちらりと覗く青い空は、旅情を誘う。罪つくりなやつである。

 「なんだか東京だけ罰ゲームみたいになっちゃってるじゃないさ」
 「寄席はもう開いているらしいね」
 「チドリに座らされるそうですよ、アベックで行っても離ればなれにされちゃうんですって」
 「それって、その時以外はアベックでいるんだからさ、もはや無意味なんじゃ……?」

 千鳥に座るって、ステキな言葉ですね。
 そいや、お裁縫で千鳥掛けってのがあったわね。
 違う意味で千鳥掛けな訳だわね。

 そいや、若かりし頃の宴席での、いざというときの心の持ち唄は、♪唐傘の…でした。
 いざというとき…というのは、ご接待にお呼ばれしたとき、小唄の一つでもご披露…という、昭和の宴席では極々当たり前に見かける、カラオケなんちゅう無粋なものではなく、万事心得た三木のり平が居たりするようなお座敷で、何曲も唄うのも嫌味ですから、ごく短めな一節を…というシチュエーションを想定して。
 長谷川一夫の映画『婦系図(おんなけいず)』だったかしら、真砂町の先生だった古川緑波がおもむろに♪からかさの~と歌ったのを、二十歳前後だった私は、これだっ!!と、早速参考にさせていただいたのでした。
 とはいえ、そんな状況が平成ヒトケタ時代の小娘に訪れるシーンは毛頭ない、と言っても過言ではなく。



 彗星がふたたび、太陽系を訪れたらしい。
 令和二年の宇宙の旅人(たびにん)さん、彼の名をネオワイズ彗星と、発するそうでござんす。
 次に地球で見られるのは、五千年後ということだから、夜空をしばし仰ぎ見ました。
 残念ながら薄雲に阻まれ…流れゆくのは地の流星、その名もJR中央線快速。



 そいや、先年…2013年の暮れにもほうき星がやって来ましたっけ。
 東伊豆のPホテルでの彗星観測プランに参じましたが、太陽の熱でアイソン彗星本人は消滅してしまったのでした。

 けれども、せっかく来たのだから…と、黎明より早起きして、明けゆく海岸で師走の日の出を鑑賞しました。
 藍色の闇から、曙染めに耀く水平線と群雲、寄せる波頭。
 そのとき、波がしらをチチチ…と鳴きながら、千鳥が飛んでゆきました。
 わぁぁぁ、千鳥って本当に、チチチと鳴くのだわ……!!
 と、大自然の奏でる風景にも増して、感動したのを覚えています。

 (長唄「四季山姥(しきのやまんば)」に、チドリの鳴き声を模した三味線の技法があります)

 さて、令和のコメットさんが五千年の時のかなたに失せるその前に、尻尾にめぐり合う機会はまだ、訪れるのでしょうか……。
 

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