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株式会社SEES.ii

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2019.12.24
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​​ss一覧   短編01   短編02   ​短編03​   ​短編04
        《D》については短編の02と03を参照。番外としては​こちらから。


 10月9日――午前9時。

 昨晩からのことを思い出す。

「……いったい、何が目的なんだ?」
 岩渕誠がそう聞くと、目の前の女は楽しそうに微笑み、フフッと短い息を漏らした。
「……岩渕さんとツカサ君は、お客様として丁重に扱い致します。もちろん、お答えでき
ない疑問も少しはありますけど……」
 女の仕草が自然すぎて、岩渕は顔をしかめた。

 わけがわからなかった。
 岩渕と鮫島ツカサは前夜――この"聖地"の洋館に連れ込まれ、特に説明もなく、簡単な
食事を与えられ、簡素な客室へ案内され、質素な着替えを貸し与えられ、「お話はまた、
明朝に――」と宇津木聖一に言われ、最初に案内された洋室に閉じ込められた。
 用意されたベッドに寝たツカサが言った。「あの人たちは、誰?」「これから、僕たち
はどうなるの?」「パパは来てくれるのかな?」
 岩渕は苦笑して「……すまない」としか言えなかった。言うしかなかった。

 閉じ込められた洋室の窓をのぞくと、月夜の光に浮かぶ茶臼岳の輪郭と、周辺に建てら
れた居住区の明かりが点々と瞬いていた。腕のタグホイヤーに目をやると、岩渕とツカサ
が拉致されてから、既に8時間が経過していた。……心配、させてるんだろうな。

「……僕のことは気にしないで。岩渕さんは、その窓から飛び降りて、逃げてもいいよ? 
僕はここに残るから……」
 目を閉じてツカサが言う。
「ふざけんな。……そんなことは二度と言うな」
「パパは……岩渕さんは『神様に愛されてやがる』って言ってたよ……。だから、別に僕を、
見捨てても……」
 ツカサの言葉を途中で遮り、岩渕は低く言う。「もう一度言う。ふざけんな」
「……ごめんなさい。足をひっぱって……僕……」
「気にしなくていい。お前は何も悪くない」
「うん……ううぅ……」
 ツカサはベッドの中にもぐり込むと、声を殺して泣いていた。その少年の父親もまた、今
ごろ泣いて叫んでいるのだろうな、と思う。


 何がきっかけで、何が理由で、何が原因で、何が目的なのか? 
 聖女とは? フィラーハとは? なぜ、《D》を狙うのか?
「わからないな……カネが目的じゃあないみたいだが……」
 思い当たることはまったくなかった。


 朝になり、客室の前から声がした。
「遅くなりましたが、朝食の準備が整いました。岩渕様、鮫島様、よろしければ部屋から
出ていただけませんか?」
 慇懃な口調で宇津木が言う。岩渕は「…少し待て」と言って舌を打った。ナメやがって
……クソが。この野郎、俺がツカサを見捨てないと"確信"してやがる……。

 作務衣のような黒い和服に着替えたふたりが案内されたのは、洋館の1階にあるダイニ
ングらしき広間であった。アンティーク調の燭台が置かれたダイニングテーブルの上には、
ホテルでの朝食を思わせる清潔な食器とグラスが丁寧に並べられていた。

「……結構なおもてなし、だな? 聖女様……」
 目の前に堂々と座る女と目を合わせ、岩渕は口を歪ませた。
「……昨日からのことは本当にすみません。……すみません」
 女は本当に申し訳なさそう動作で顔を下に向けた。

―――――

 たぶん……この男の人は、悪い人じゃあないんだろうな……。
 楢本ヒカルは思った。この岩渕誠という男も、不安げに視線を泳がせる鮫島ツカサとい
う少年も、決して悪い人間ではないのだろうなと考えていた。
 32歳のサラリーマンと10歳の少年は社会の一員として、懸命に働き、懸命に生きて
いるのだろうなとも思う。そしてヒカルも、今でこそ《F》の聖女として信徒の人々から
畏敬の念を抱かれているものの、かつて木造のアパートで病気の母を亡くし、ひとりきり
で懸命に働き、懸命に生き、社会の底辺でもがき、苦しんでいた。少なくとも自分と――
自分を拾い上げてくれた宇津木聖一だけは、そう思ってくれるのだろう。

 岩渕は、ここ数日間における、《F》と《D》のいざこざの原因を、川澄奈央人と田中
陽次の金銭トラブルが発端かと怪しんだ。岩渕の質問は、ヒカルの生い立ちからその後の
経歴、宇津木との関係や、フィラーハ様のことまで多岐に及んだ。

「……アンタの話がすべて真実だとして、そこの……宇津木聖一、アンタは何者だ?」
 感情を押し殺したような低い声で岩渕がきいた。同席していた宇津木が微笑む。
「私は元々――錦で投資ファンドを経営しておりまして……まぁ、成り金です」
「それがどうしてヒカル――聖女様と?」
「……恥ずかしながら当時、会社の経営に行き詰まりましてね……そこで、巷で噂になっ
ていた占い師、『フィラーハの聖女』の元を訪れた次第です」
「占い? それが……アンタの言う"神託"か?」
「そんな低俗な商売とは一線を画す――ヒカル様の"神託"は本物です」
「……具体的に、"神託"って何だ?」
「具体的? 意味はそれ、そのものですよ?」
「だから……こう、人生相談とか、占星術とか、手相とか? そういう意味か?」
「そんなものではありません。理解しやすく申しますと……ヒカル様は"未来を予知"し、
"未来を変える"力をフィラーハ様より賜ったのです……」

「……失礼だとは思うが――……ペテンだろ?」
「最初は皆様、同じことを言いますよ。別に気にしないでください……」
 ダイニングの室内は清潔な空気で満ちていて、暖かい陽光が射していた。テーブルの上
では朝食としてパンとスープとサラダとゆで卵とオレンジジュースが置かれていた。岩渕
はアンティーク調の椅子に座り、時折隣に座るツカサ少年の様子を伺いながら、宇津木と
"聖女"の、"ありえない奇跡"の話の数々を、冷静な態度で聞き続けていた……。


「なぜ、宮間を――いや、《D》を狙った? ……恨みでもあるのか?」
「恨みはありませんが、そういう命令をフィラーハ様から受けたので」
 不信感を隠さずに岩渕が質問を続ける。「……理由は?」
「わかりません」
 ヒカルは首を振る。御身の真意は、本当にわからないのだから。
 どういう態度を取っていいのかわからないのだろう、岩渕が沈黙した。
「でも……今は、少し、ほんの少しだけ……理解できます」
「――? どういうことだ?」
「最終的な目的は、今は秘密です。ですが、あなたとツカサ君は解放すると約束します。
それだけは信じてください。私たちも、この土地から離れます……」
「はぁっ? これだけの騒ぎを起こしといて、消えるだと? そんなこと……許される
ワケがねえだろっ?」
 岩渕が語気を強めるが、関係はない。
「"神託"さえあれば、可能です。……私たち《F》は既に、そうやって何件もの新興宗教
や教会を潰して回っておりましたし……」
 岩渕の目が丸くなる。相当に驚いたようだ。

「……結局は、犯罪集団って認識でいいのか?」
 そう言って岩渕は、ヒカルの目を睨むように見つめた。
「……誤解なきよう補足しますが、フィラーハ様は"絶対神"なのです。他の神々や象徴な
ど、まがい物でしかありません。淘汰されるのが自然のことかと」
 宇津木がそう言って微笑み、ヒカルも笑みを浮かべたが、岩渕とツカサは笑わなかった。



 彼と少年がダイニングを出ていった後で、私は今朝のことを思い出した。
 昨日の夜に見た"神託"では、《D》の名駅前店の3階で会議をする澤社長と幹部連中の
姿が見えた。……どうやら《F》の、この地に踏み込むべきか、否か、の協議中らしい。

 ……時間はまだある。まだまだ、ある。
 彼ら《D》が我ら《F》と邂逅し、対決する未来などない。永遠に、ない。
 例え彼らがここに踏み込んだとしても、《F》は既に消え去った後なのだから。

 でも……何でだろう?
 ヒカルにもわからないことがいくつか残っている。
 ……川澄奈央人、宮間有希、鮫島恭平の姿が見えない。それに――いつも、いつも、
相変わらず、あの女――……伏見宮京子の姿は見えない。
 
 ……どうしてだろう?

―――――

 10月10日――早朝。

 川澄奈央人は名大病院のロビーのベンチで自身が書き留めたメモを読み返していた。
 
 防犯カメラの映像。女の名前は楢本ヒカル。ヒカルは光? どうでもいい。
 住所は豊田市茶臼岳の奥地の集落。《F》。信者たちと暮らしている? 30代前半。
ていうか、若く見えるね。
 名大病院の駐車場の監視カメラの映像。宇津木聖一。オッサン。顔を隠す気はない?
逃亡? 失踪に自信アリ? 僕より? うざいね
。ちなみに、コイツの正体も調査済み。

ただの成金オヤジだと思ったけど、驚いたね。

 "聖女"の監視の目は大丈夫? まあまあまあ、いざとなれば、"川澄"を捨てれば、何
とかなるのかな?    


 早朝の病院のロビーには100人以上の患者とその家族が医師の診察を待ち、看護師や
医療事務の人々が右往左往している。木を隠すなら森、とはよく言ったもんだね。川澄の
顔に微かな笑みが浮かぶ。

 グーグルマップから見た衛星写真。規模。広いね。建物。居住人数。資産。まずまず。
イイね。屋敷。洋館。気に入らないデザイン。岩渕とツカサ少年がいそうな部屋の推測。
正味、助ける気は微妙。岩渕に危害を加えそうなのは? 田中だけかな? まあまあ、
臨機応変に対応予定。いつものように。

 
川澄は病院の売店で購入したカルピスのペットボトルの蓋を開けた。中身を少しだけ口
に含み舌に乗せて味わいながら――すいませんね、澤社長。ほら、僕って優秀で、天才で、
嘘つき野郎でしょ? 下調べに2日もかかるワケないじゃないすか。それにさ……もしか
したら僕、人に頼まれたら断れない性格かもしれないです……と考えた。

 最終確認のため、現地調査が必要。先行。めんどくさい。しかたない。
 足。借りよう。怒られたら謝ろう。


 メモを閉じ、川澄は腕のHublot Big Bangに視線を移した。そろそろ時間だね。ベンチ
から立ち上がり首を回す。ここ数日、寝不足やらPC作業やらが続いたせいで、今朝は肩
と首が凝っていた。
 片手に飲みかけのペットボトル、もう片方の手にカーボンのアタッシュケースを持ち、
川澄は歩いた。駐車場に置き去られていた"足"の前で立ち止まり、長い息を吐いた。

「……先輩、"彼女"、借りますね。無傷で返せるかは、わかりませんけど」

 川澄はニッと笑いながら、同僚の家から拝借したスペアのスマートキーを起動させ、"足"
であるフィアットのドアを開ける。すると、サイドミラーにスーツを着た男女と、ジーンズ
とセーターを着た若い女の姿が映っていた。3人の男女は無言のままフィアットに近づくと、
運転席に腰を下ろした川澄をじっと見下ろした。
「……そういやてめえ、免許持ってんのか?」
 苛立ちを隠そうともしない、野太い男の声がし、川澄は思わず苦笑いした。「いやー……
持ってないすよ……本物は」

「ねえ、この車……狭すぎない? 4人乗れるの?」
 黒いパンツスーツを着た女が、冷淡な口調で川澄にきく。
「一応、4人乗り車両の……ハズです……はい」
 女の想定外な質問にうろたえながら、川澄は微笑んだ。

「……では運転は鮫島さん、助手席に川澄さん。後部座席に私と宮間さんで乗ります。
いいですよね? 川澄、さん?」
 伏見宮京子が川澄を見下ろしてまた言う。「……いいですよね?」
「わかりましたよ……姫様」
 京子の顔は見ずに、川澄は運転席を飛び出した。

「……どうでもいいけどよ。川澄、お前の腕時計、派手すぎだ。もっと地味なヤツに
しやがれ」
 鮫島恭介が運転席にドカリと座り、「左ハンドルかよ」と呟いて舌打ちする。
「本当に狭い車ね。岩渕クンも、この車のどこがイイのかしら?」
 宮間有希が後部座席で足を上げ、「姫様の膝の上に足、のせてもいい?」と聞く。
「……しかたないですね。シートベルトはしてくださいよ」
 伏見宮京子は膝の上で宮間の足を持ち抱え、「出発してください」と小さく言う。

 
 まあ……囮役は多いほうがいいからね。お前もそう思うだろ?
 彼氏が消えた"彼女"に、川澄は心の中でそっと呟いた。
 フィアットの2気筒ツインエア・エンジンの排気音が、低く悲しげに響き渡る……。

―――――

 『聖女の《F》と姫君の《D》!』 hに続きます。
















 今回オススメはもちろん? sees大好きBANDMAID様……。


 BANDMAID……。
 コスプレハードロックバンド……。見た目のカワイさとのギャップに歌詞・曲調・演奏、
すべてがハードで重厚。ビジュアルはメイド調。イベントやライブを「給仕」と銘打つな
どパフォーマンス精神も旺盛。seesもすぐに好きになりました。
 ツインボーカルの曲が多く、seesはボーカル/ギターのミクちゃん推しw
 海外でも評判良く、女性ファンも多数とか……そりゃあそうだわな。だってカッコイイ
もんw
 コンサートメインの仕事でアニメタイアップなどの媚びた仕事あんまないのも好印象。
売れるとアイドルぶった仕事するヤツはちょっと苦手(別にアニメやドラマのタイアップ
仕事を嫌悪するわけじゃないが、節操ないヤツはね……)。そういう意味だと、岸田教団
なんかは……ちょっと別次元、かなwwあの人たちは書きおろしなんかにも力入れている
し、仕事は仕事としてキチンとしてそう……。



 ミクちゃん風に言うと「おかえりなさいませ、ご主人様」






 雑記

 お久しぶりです。seesです。
 東京で開催されるとあるフェスに行くために休み申請したけど、あっさり却下された。

 さて、今回も抑揚のない、説明&スルー回ですね。
 安定の岩渕氏を中心に、続々とDが集まる豊田市の山奥。ヒカル様の目的、取り巻きの
真意。川澄氏の本音。京子様の心配。そして、田中の動向……。
 まだまだ書き足りないこと多すぎですが、すんまへん。年内の更新は最後になるかも。
新年は挨拶程度の更新はしますが、物語自体はちょっと待って( ゚∀゚)アハ

 次回は澤社長の動きと、エフの人々との交流(今回ではできんかった)。
 到着した京子様と川澄、田中を探す宮間、…できればツカサ君パートも作りたい。
 でわ。
 しかし……この話、思ったよりも長くなりそう。たぶん、​「激昂」​よりも長くなるかも💦


 私、seesに関しての情報はもっぱら​Twitter​を利用させてもらってますので、そちらでの
フォローもよろしくです。リプくれると嬉しいっすね。もちろんブログ内容での誹謗中傷、
辛辣なコメントも大大大歓迎で~す。リクエスト相談、ss無償提供、小説制作の雑談、いつ
でも何でも気軽に話しかけてくださいっス~。"イイネ"もよろしくぅ!!

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いた
します。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。

 seesより、愛を込めて💓





             適当ショートショート劇場 『船酔い』

 sees    ……久しぶりの船と電車移動だし。良いよね💓

       そう。
       今日は津からセントレア、セントレアから名駅へと移動する予定の日。
       seesは朝からテンション爆上がりで津港に入る……前にちょっとコンビニ。

 sees   「良いよね。仕事前だけど、バレないよね……」
       ブォーーーー……。
       朝、10時、港を出発~フェリーで1時間かけてセントレアへゴー~🚢

       そして。プシュ。
 sees   「うめえ」
       銀色のヤツを開けましたw
       うめうめうめ……グビグビ😋
 sees   「そして……昨日買って食った残りのエイヒレ……をひとつまみ……」
       うめえ。

       仕事の前に飲酒。本来であれば始末書ものだが……今日は別に運転する
       予定もないし、仕事も簡単なものだ(言い訳)。というか、皆、ヤって
       るやろ? 当然やろ? そう思いたい。

       フェリーの中では誰もが静まり返り、放送されているニュース番組を見た
       り、新聞を読んだり、携帯をイジったりしていて……静かだ。その静かな
       場にひとり、seesのグビグビ音が響く……。
       大丈夫さ。大丈夫。別に1~2本ビール煽ったところで酔いはしない。
アナウンス 「……本日は波の影響もあり~~多少の揺れもございますぅ~安全には~
       問題ありまへへへへ~……」

       何か言ってやがるけど……聞こえねえな……プシッ。
       ああ゛……うめえわ。仕事前の酒……。

       ―――――
       ―――――
       ―――――

       案の定――……。
       顔真っ赤のフラフラで集合場所へ赴くseesであった……。

 女子社員 「……seesさん、ま・さ・かショック……」
 sees   「……いや……それがさぁ……二日酔いで……へへへしょんぼり……」
 女子社員 「……はぁ(白い目)」

       天罰か、自業自得か、ただのバカか、それとも全部か、猛省。
       海をナメてました。いや、自分を過信していました。
       はい。
       すみません。
       以後、気をつけます。この場を借りて、謝罪いたします(誰に???)。


                                  🍺了🍺


こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

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Last updated  2019.12.29 01:32:34
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