089065 ランダム
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株式会社SEES.ii

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2020.02.07
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​​ss一覧   短編01   短編02   ​短編03​   ​短編04
       《D》については短編の02と03を参照。番外としては​こちらから
                         登場人物一覧は​こちらから


 10月10日――午前10時。

 田中陽次は《F》の敷地の端にあるベンチにうずくまっていた。広大な芝生の中心では、
ちょうど彼の息子くらいの歳の子供たちが楽しそうな歓声を上げて遊んでいた。洋館のと
ころでは使用人らしき中年の夫婦が洗濯物を干し、居住区の隣にある小さな畑では老人た
ちが土をいじって談笑していた。
 田中はそんな人々の姿をぼんやりと、力なく眺めた。

 ここ数日、田中は自分が何をしていたのかよく覚えていなかった。もちろん、職場には
一度も行っていなかった。何度も電話が鳴ったが、それにも出なかった。田中は数日前、
《F》の代表である宇津木から『このカネを持って他県へ行き、しばらく身を隠せ』とい
う命令を受けた。胸のポケットの中には300万ほどの現金が入っていた。

《D》の川澄からカネを奪い、宮間を痛めつけ、時計を破壊したことの影響だと宇津木か
らは説明を受けたが、納得はしていなかった。その命令を下したのは"聖女"であり、協力
してくれたのが宇津木本人だったからだ。……畜生、ふざけやがって。
 宇津木と"あの"川澄が裏で糸を引き、この《F》を解散させようとしているのは何とな
く知っていた。川澄が『岩渕に会える』とでもして伏見の……よくわからない女を連れて
《F》に来て、それを《D》の社長に知らせ、奪い返しに来るように仕向ける……そうい
う計画を立てているのは知っていた。
 確かに、俺は《D》の連中にとっちゃ目の仇だろうし、それぐらいのことをした。だが、
そんな程度のことで、そんな300万ぽっちのカネで《F》を退場させられることに納得
できるワケがなかった。
 岩渕とかいう男の待遇が良いのも、いずれ来る《D》との示談を円滑に進めるためだと
か何とか……俺がせっかく川澄から奪ったカネも、そのままヤツに返すだとか……ふざけ
やがって……。
《F》がなきゃ、俺の人生は終わりだ。名古屋に帰れば、待っているのは警察の手錠しか
ない。このまま《F》に寄生しつつカネを稼ぎ、ほとぼりが冷めたころに戻るしかない。
「……畜生っ ……いったいいくら貢いできたと思ってやがる……」
 田中は歯軋りした。ベンチの前を通りかかった幼い子供を連れた若い母親が、怪訝そう
に振り返って田中を見た。
「見るんじゃねえっ! 殺すぞっ!」
 田中が怒鳴ると、子供を連れた女は小さな悲鳴を上げて逃げるように走り去った。
 こうなってしまったのはすべて、宇津木のせいだった。いや、宇津木と、"聖女ヒカル"
――そのふたりのせいだった。
 そうだ。"聖女"だ。
 宇津木からはカネをもらった。なら……ヒカルからも……。
 そう。次はヒカルからも何か褒美をもらわなくてはならない。いや、宇津木以上の褒美
を、この"聖女"から――自分は祈りだけ捧げて命令するだけして、汚れ仕事のほとんどは
俺や若手の男どもに押し付け――さらに、一方的に《F》を解散するからと微々たるカネ
で縁を切ろうとする女には――相応の奉仕をしてもらわなければならない。
「……一生、俺の奴隷として使ってやる……覚悟しろよ? ……ヒカル、お前は俺のモノ
として……一生、俺のために"神託"を使え……」

 小さく呟くと、田中は拳を握り締めてベンチから立ち上がった。怒りと興奮に顔がプル
プルと震えた……。

―――――

 過去のものから遡ると、"神託"には実に様々な事象がこと細かく丁寧に書かれていた。
それはまるで――学生に物事を教える学校の教科書のような作りで、稚拙だがイラストま
で添えてあった。いや……少し違うな。これは……オーディションだ。
 宇津木が"聖女"に紹介した信徒の選抜。選ばれた社会不適合者たちの情報……。
 岩渕誠は思った。
 本当に救いたい女ひとりのために集められた生贄……か。


『●月✕日。妊娠中らしき女性が夫、夫の義父、夫の義母から激しい暴力と罵倒を受けて
いた。女性は顔に青アザができ、泣いて許しを懇願しているように見えた。夫たちの話を
聞いていると、どうやら女性の不貞行為を疑われているようだった……』

『●月✕日。初老の男がスーツ姿の女性に激しく詰問している様子が見えた……。女性は
薄ら笑いを浮かべ、男は顔を真っ赤にして怒っていた。話を聞いていると、スーツの女性
は生命保険の外交員で、男性は「話が違うっ!」とまくし立てていた。やがて制服姿の警
察官が到着し、男性は連れていかれてしまった……』

『●月✕日。家族らしき男女4人がひとつのテーブルを囲んで座っていた。母親は泣き、
父親は沈黙し、兄妹は顔を真っ青にしていた。テーブルの中心には、手紙らしき紙切れが
複数枚置かれていた。手紙には……"もういじめにたえられない、ごめん、さようなら"と
だけ書かれていた……』

『●月✕日。漫画喫茶の個室の中で、ソファに寝転ぶ若い男が見えた。男は体をエビのよ
うに折り曲げて、目を閉じ、ひたすらブツブツと何かを呟いていた。聞いてみると「……
なぜ……なんで、俺がこんなメに……どうして……どうして……どうしてなんだよお……
俺が何をした? ……俺は何もしていないのに……俺は何もしちゃあいないのに……何も
していないのが、罪なのかよお……」男はただ、呟きながら涙を流し続けていた……』

 おそらく、ヒカルはこの"神託"によって《F》の信徒を増やし、利用し、勢力を高めて
いったのだろう、とは思う。彼らを救いたいと願う気持ちに、嘘がないのであれば。

 ――《D》。
 これか……。
 岩渕の視線はそこにあった《D》という文字に釘付けになった。
 罫線の引かれたノートのページには、いたるところに《D》という文字、もしくは《伏
見宮》の文字が躍っていた。

『《D》の川澄が《F》の田中からカネを脅し取られていた。悔しい。このカネは貧しい
人々に分け与えるべきものだと、《D》に理解させる必要がある』

『《D》の連中がコメダ珈琲店の葵店で談笑していた……コイツらは何もわかっていない。
社会には、正さなければならない惨状が数多く存在している事実をっ!』

『なぜ、そこに伏見の姫様がいるのかはわからない。わからないけれど、《D》の連中と
同罪なのは変わりない……』

『川澄の隠れ家らしき倉庫に本人が入り、多額の現金を掴み取る……このカネが、本来、
田中を経由して《F》に運ばれるカネであることに間違いはない……』

『《D》の宮間有希が取引先の会社のビルから出て、近くのパーキングに停めた車に乗り
込み発進する。……汚れたカネを握り、汚れたヤツらに配り、汚れた《D》のために使う、
汚れた《D》の女……こいつには多少の痛いメを見せる必要がある……もちろん、伏見の
姫も同罪だ。同罪だ。同罪だ……』

『《D》の鮫島恭平の息子と、《D》の岩渕誠が病院を出て、《D》名駅前店へと移動す
る……。鮫島の息子は楽しそうに笑い、岩渕も笑っていた……。世間に溢れる悪意と絶望
の量すら知らず、貧しさから医療も受けられない人々を嘲笑するような笑いだ……。当然、
許されるはずがない……。息子のツカサはともかく、父親の鮫島には、それなりの恐怖を、
身を以って体験してもらうことにする……もちろん……伏見の姫、いいや、伏見宮京子に
も、"大切な人を奪われる苦しみ"を少しだけ体験してもらうことにする……』

「わざとらしいくらいの"煽り"だな……」
 そう呟いて岩渕は、また次のページをめくろうとして――手を止めた。
 ……なぜ、ここまで《D》への敵愾心を煽るような書き方をする? まるで故意に《F》
と《D》を対決させようとする宇津木の真意がわからない……。考えられることが、ない
ワケじゃあないが……推測としては少し、現実味がなさすぎる……。

 少考してから、岩渕は次のページをめくった。似たような文言が続き、《D》社員たち
の個人情報らしき詳細、《F》のヤツらがした行為の根拠や状況の"予測"が記されていた。
いつくかのページをめくり続け、その時――。
 不自然な、まるで整合性のとれない、曖昧で、あやふやな――まるで人の夢の中をその
まま文章化したような――そんな"神託"を見つけた。見つけてしまった。
「……嘘、だろ?」
 明らかに宇津木の差し金でない内容に、岩渕は戦慄した――。


『辺りを見回すと、そこには大勢の人々がいた。時間は夕暮れ、景色はオレンジ色に染ま
り、人々の顔には影が差し、誰が誰かはわからない。

 私は影の差す人々の顔をのぞき込んだ。そこには……同じような黒いスーツを着て、私
を取り囲むように立ち並び――怒りと軽蔑の眼差しを向ける男や女の顔が無数にあった。


 怖い。本当に怖かった。……本当に。


 人と人との間に見える向こうに、倒れて動かない別の人々が見えた。芝生の上に倒れて

いるのは大人だけではなく、老人や子供もいる。学生らしき制服を着た若い少年や、妊婦
らしきお腹の大きな女性もいた。
 私は神の名を叫ぼうとした。だが、まるで金縛りにでもあったように、口はおろか、体
もまったく動かせなかった。


 ……助けてください、フィラーハ様。私を……どうか……どうかお救いください。

 私は祈った。祈り続けた。
 次の瞬間、私の周囲から、豪雨のような罵声が浴びせられた。


『下劣な詐欺師女っ、死ねっ!』

『イカれた犯罪集団めっ、消えろっ!』

 全身を戦慄が走り抜ける。恐怖に目を見開いて両手を握り、天を仰いだ。


『死ねっ』

 黒いスーツを着た大勢の人々が自分をなじり、けなし、罵声を浴びせ続けた。

『死ねっ』

 スーツを着た人々はジリジリと歩みを進め、少しずつヒカルを包囲していく。

『死ねっ!』


 恐怖に凍りつきながら、うわ言のように繰り返す。夢であるはずなのに胃が痛む。

「……助けて……フィラーハ様……誰でもいい……誰でもいい、から……」


 その時――罵声を続ける男女の壁の隙間から、ひとりの男が姿を見せる。

『……うんざりだっ! もう、たくさんだっ! こんなことをして何になるっ? 
俺たちはっ、何も変わらねえじゃねえかっ!』
 それは……投げやりで、乱暴で、とても……とても力強い声だった……。

 黒いスーツを着た男女……? 倒れている人々……?
 岩渕には、そのスーツの集団や、その集団に倒された人々の正体がわかりかけていた。
そう。それは……。
 けれど、岩渕は認めたくなかった。それが現実に起こるのなら……俺は……澤社長と…
…敵対する行為に他ならなかったからだ……そんな野望を抱いていたことがないと言えば
嘘になる……でも、こんな形で……でも、そうしなければヒカルや、《F》の連中は……。

 震える手で、そっとページをめくる。
 そこには――何も書かれてはいない、白紙のページだけがあった。しかし――最後の文
章はヒカル自身が作った妄想か、宇津木の作った計画かはわからない……。

 カラカラになった唇を嘗めながら、最後のページを見直し、目を凝らすと――ノートの
中心に紙の切れ端が見える。一枚、ノートは破られ、持ち去られていたようだった。持ち
去ったのはもちろん――"聖女"だろう。
「……破いて持っていきやがったか」
 もう一度、唇を嘗めてから、「"聖女"は……いったい、何が望みなんだ?」と呟いた。

 そこに――。
 そこに、女の悲鳴が鳴り響いた。

―――――

「エアロスを呼べ……大型ヘリ3機や」
 社長室に入った総務部長である熊谷に、澤光太郎は自分の考えを伝えた。
 直立不動で顔を青くし、目を丸くして熊谷が澤を見つめる。その優しげな顔には、不安
と困惑が浮かんでいる。

「……総務と営業で20人連れて行く。お前は総務の残りと後で来い。……営業車は全部
使ってエエぞ」
 そう。宮間の報告にあったこと――。
 川澄が宇津木とかいう成り金と"勝手に示談の交渉"をしたこと。
 楢本とかいうクソ聖女の精神治療のために《D》を利用しようと計画したこと。
 ……そもそもだ。そもそもカネの力だけで《D》を利用しようとしやがったこと。
 許せるハズがねえ。そンなくだらねえ理由で、こちらの仕事を停滞させやがって……。

「社長……川澄君は穏便に事を済ませようとしていただけ、なのかもしれないですし……」
 熊谷は今にも泣き出してしまいそうだ。「なにとぞ、冷静に、落ち着いて……」
 澤は無言で唇を噛んだ。戦うことを恐れているわけではなかった。自分にとって、《D》
は人生のすべてだった。それを汚されたような気がした。
 ナメられるワケにはいかなかった。周りの嘲笑や愚弄は、力で制してきた。そうだ……
守らなければならない……どんなことをしても……どんなに汚いことをしても……どんな
に卑劣な行為をしてでも、《D》だけは守らなければならない……。

『――やっつけて。《D》の敵は、すべて、やっつけて……おじちゃん……』

 澤はさらに強く唇を噛んだ。
「社長……話し合いの場を持たれてはいかがですか? 岩渕君も鮫島の息子さんも無事な
ようですし……」
 直立する脚を震わせ、両の掌を広げながら熊谷が言った。「……慰謝料の請求も青天井
らしいですし……ここは、ひとつ一考してみては……」

『……お願い、だよ? ……やっつけて……やっつけて……サワの、おじちゃん……』

 
デスクの椅子の上で腕組みをし、澤は自身の肩に触れる少女の――かつて、本当の娘の
ように愛した少女の手を見つめた。そして、それが幻覚であることも、それが幻聴である
ことも、すべて理解した上で――話を続けた。
「……重量制限もあるからな……"盾"は諦めるが、"棒"は人数分持って行く」
「社長っ!」
 叫ぶ熊谷の顔を見る。頬が上気し、鼻息も荒いが、それでも、熊谷の顔は優しげだった。
「……宇津木の計画に乗ってやるだけの話や。ただ、ヤツの考えている以上のダメージを
《F》にくれてやるだけ……何も《F》全員を皆殺しにするわけやない……」
「……わかりました……ただ、くれぐれも……過剰な報復は……私は……もう、あなたが、
誰かと争い、奪い合う姿は……見たくはない……」
「……この稼業、ナメられたら終わりだ。そんなことぐらい、知っているやろ?」
「……はい。そうして、私とあなたは、名古屋の水を飲み続けた……だが……」
 澤は立ち上がると、共に《D》を創業した戦友の脇に行った。そして、歯を噛み締めて
震える男の背をポンと叩いた。
 
 ……岩渕は変わった……あの姫と出会ったことで。ヤツだけではない、宮間も、鮫島も、
この熊谷も……だが、俺様だけは変わらねえ。……変わってたまるかっ!

 総務と営業の部署が入るフロアに入ると、澤は大声で叫んだ。
「――先着20人だっ! 臨時ボーナスをくれてやるぞっ!」
 歓喜の悲鳴が、
 覚悟の叫びが、
 闘志の咆哮が、
 戦いを告げる鬨の声が、《D》に響く……。


 守る。守り続ける。そうやって、守ってきた。なにもかもだっ!
 ……お前も、そう思うだろ? ……佳奈?
 心の中で名前を呼んだ少女は――澤の目の前でニコニコと笑っていた……。

―――――

 礼拝堂の清掃を終えた時、入り口の扉が閉まる音がした。誰か来たらしかった。
「誰ですかー?」
 掃除道具を片付けながらヒカルは言った。返事はない。
 片付けが終わり、入口に向かって「もうお祈りの時間は終わりましたよ?」と問いかけ
る。腰をさすりながら、「よいしょ」と掛け声をかけて礼拝堂の入口に向かう。
 そこには、田中陽次が立っている。
「あっ、田中さん……」
「ヒカル様、ちょっと、いいですか?」
 田中の声はひどく低く、かすれていて、とても聞き取りづらかった。「宇津木さんは、
ここにいますか?」
「今は、館におられると思いますけど……あの……大丈夫、ですか?」
「……こい」
「え? ……田中、さん?」
「俺と来てもらう、こんなシケた場所とはおさらばだ」
 そう言うと田中は後ろ手で礼拝堂の扉を閉め、ドアに鍵を掛けた。そして、ポケットか
らビニール製の縄のようなものを取り出した。
「私に何の用ですっ! ふざけないでくださいっ!」
 思わず後ずさる。「宇津木さんに連絡しますよっ!」
 田中がバックから出した物を見て、ヒカルは悲鳴を上げた。男はゴツゴツとしたその手
に、鋭利な出刃包丁を握っていたのだ。

「聖女様……いや、ヒカル……俺のものになれ。逆らうのなら……」
 田中は充血した目でヒカルの胸や下半身を見つめてそう言うと、脂ぎった顔を不自然に
歪めて笑った……。

―――――

 電話の向こうで、岩渕は取り乱していた。
「どうかしましたか?」
『大変だ。ヒカルが……"聖女"が連れ去られた』
「へえ……それは、おもしろそうですね」
 心臓が高鳴り始めるのを感じながら、川澄奈央人は友人とじゃれあうかのように言った。
『犯人は田中陽次だ。こっちは大変な騒ぎになってる』
「田中さんねえ……そうですかそうですか……」
 瞬間、時が止まり、脳が勢いよく回転した。
 岩渕の声は震え、話を理解するのに苦労した。礼拝堂の掃除を終えた"聖女"は、突如現れ
た田中陽次に体を拘束され、用意された車に連れ込まれ、《F》の敷地から出て行った。
 田中は先日、宇津木から《F》の離脱を宣告され、心身ともに錯乱していた可能性があり、
しかも、ヤツは前々から"聖女"に対し不敬な欲望を抱いていたことも発覚――このままでは
彼女の身が危険と宇津木が判断し、岩渕さんに相談、僕に電話が回ってきた、みたいなこと
ですか? まったく、客人待遇に気を緩めすぎでしょ? 相変わらずですね、岩渕さん……。

「でー……どうします? 放っておきますか?」
 わざとらしく僕は言う。彼がそんな人間でないことは、僕が一番よく知っている。そう。
知っていて、きく。これから彼が僕に提案する内容も、察していて、僕はきく。
『……ヤツは車で、茶臼山の国道46号線を北上するルート、らしい……46号線は岐阜
県や名古屋に繋がる一本の山道だ。だから――』
「奇遇ですねえ……僕も今、46号線に入ったところですよ」
『宇津木からきいた……お前も、もうすぐここに来るんだろ?』
 まさか京子様と一緒だとは夢にも思っていないのだろう男の声に、僕は得意げに言う。
「……僕にヤツを止めろ、と? タダで? 無料奉仕しろと?」
『当たり前だろっ! できることなら、助けてやれっ!』
 岩渕が怒鳴った。……ああ、しかたがないかな、と思う。
 それに――……。

 フィアットの後部座席から、伏見宮京子が詰め寄った。「その電話の相手――岩渕さん
じゃないですか?」
 とりあえず彼女のことは無視し、電話を切る。電話を切る瞬間に、岩渕から『京子?』
という声を聞いたような気もするが、まぁ……どうでもいいか。
「ちょっとっ、川澄さんっ、人の話を聞いてますかっ?」
 今度は姫様が怒り出したので、僕は慌てて電話の電源を切り、スーツの胸ポケットに押
し込む。怪しむ視線を向ける姫様を無視し続け、僕は――彼女の隣に座る女に、今日最高
の笑顔を向けた。
「どうやら……見せ場が向こうから来るみたいですよ? ……宮間先輩?」
 
 宮間と呼ばれた女は、携帯電話をいじる手を止め、嬉しそうに微笑んだ……。

―――――

 『聖女のFと、姫君のD!』 i に続きます。
















 今回オススメはもちろん? sees大好きSALU様……。


 SALU……。
 あまりヒップホップの音楽の嗜みのないseesですが、この方の曲のみはよく聴く。ダウ
ンロードばかりで申し訳ないけれど( ;∀;)
『ヒップホップのカリスマ』と呼ばれて数年ですが、やはり存在感は群を抜いて素晴らし
い……。曲のテンポ、流れるような歌詞、比較的覚えやすいリズム……完璧す。甘えたよ
うな歌唱も、見た目も、ホント……非の打ちどころのないラッパーです。
 皆様も一度くらいは聞いてみて下さい。惚れてしまいます……。 KREVAさん以来だわ、
この感動……。



 
車の中で聞くと最高。



 雑記

 お疲れ様です。今回もお話も少し長めです。いろいろとFの事情を語っていくのはいいん
ですが、その度に説明する展開をどうしようか模索中……結局、なんだか読者様がたおいて
けぼりな感があって……正直、ごめんなさい。 

 近況報告も特にないなあ……寂しいけど、平和が一番、なのかなあ(*^。^*)
 ていうか、次回のDの話の妄想が膨らみすぎてヤバイ……どうせなら、映画風に告知して
しまおうかと画策中…具体的には、「聖女D」の最終話にて公開いたしますww

 さーて次回のお話ですが、ようやっと澤社長の再登場と、田中氏のくだりの終わりが見え
てまいりました。どう決着をけるのか、見ものですよ~。まぁ、たいしたことは何もないの
ですが(^_^;)(^_^;)

 最終話……果たして、岩渕氏はどうーなってしまうのか?? いや~seesも楽しみですっ!!



 私、seesに関しての情報はもっぱら​Twitter​を利用させてもらってますので、そちらでの
フォローもよろしくです。リプくれると嬉しいっすね。もちろんブログ内容での誹謗中傷、
辛辣なコメントも大大大歓迎で~す。リクエスト相談、ss無償提供、小説制作の雑談、いつ
でも何でも気軽に話しかけてくださいっス~。"イイネ"もよろしくぅ!!

 でわでわ、ご意見ご感想、コメント、待ってま~す。ブログでのコメントは必ず返信いた
します。何かご質問があれば、ぜひぜひ。ご拝読、ありがとうございました。

 seesより、愛を込めて💓




           適当ショートショート劇場 『思い出し泣き』

sees   「う……ううぅ」
      最近……思い出し泣きをよくするseesです……。
      昔見た映画や漫画やアニメを思い出しては泣いています。そう。
      今日もまた……。

後輩   「せっ、先輩っ? どうしたんスか? 急に泣きだして、何かあったんスか?」
sees   「いやね……実は、かくかくしかじか」
後輩   「……あの~……今、運転中ですよ💦」
      そうだった(-_-;)テヘヘ
      そうやった。今は岐阜に向かう車の中で高速移動中やったっけww

後輩   「……こういうこと、よくあるんスか?」
sees   「いや……最近」
後輩   「ビックリしましたよ……いきなり号泣するもんだから……」
sees   「すまねえ……」
後輩   「……しっかりしてください。次のPAで運転交代しますから……」
sees   「アイツラ(会社の人)には黙っといてちょーだい」
後輩   「……ムリすね」
      なんでやねんっ!!

      しゃーないやん。こんな退屈な運転……。それに……思い出してまうんやから」

後輩   「……何を思い出し"泣き"してたんすか? ていうか、聞いてもいいですか?」
sees   「引くなよ? 笑うなよ? 楽しい話じゃあないぞ?」
後輩   「はぁ」

      たぶん、後輩はseesの過去の失恋やら別れやらの話を想像している様子だが、
      違うんだよなぁ……。

sees   「……ロボコップ3、ルイス巡査との別れのシーン。それに……ロミオと青い空
      でアルフレドとの死別のシーン……後、ローガンでウルヴァリンの最後の――」
後輩   「アニメとアメコミかよっ!!」
sees   「うう……思い出しただけで……うう、泣けるぅぅ……」
後輩   「……(昔のアニメの最終回で泣く人?みたいな? はじめて見たわ……)」

      後日、このネタを同僚に話したところ、返ってきた答えは……。
     「知らない」もしくは、「覚えていない」のふたつのみ。マジきゃ?


                                号泣号泣


こちらは今話がオモロければ…ぽちっと、気軽に、頼みますっ!!……できれば感想も……。

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Last updated  2020.02.09 21:04:39
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