その日、ケイトは お城の庭や

二人のお気に入りの窪地を歩き回って

妹を探しました。

名前を呼んで お城の中も歩き回りました。

なのに、どうしても かわいいアンの姿が見えないのです。

 

空気はしだいに ひんやりとして

草には 夜露が 宿り始めました。

それでも妹はみつかりません・・・。

とうとう、探していないところは

台所の床の上げ蓋の下だけになってしまいました。

ケイトは ろうそく立てに火を灯し、

かび臭い 穴倉へ降りていきました。

 

古くて 壊れた樽の隙間に

丸まっている 妹を見つけて

ケイトは 驚きました。

 

「どうしたの?アン!」

「おお、灯りを消して、ケイト・・・。」

 

妹の声が 酷くしゃがれているので ケイトはもっと驚きました。

 

「まあ、あなた、ひどい病気なのね?」

「お願いよ、灯りを消して、そして私をここに

そっと置いておいて。」

「そんなこと、出来るもんですか。」

 

ケイトは 妹の傍にしゃがんで 優しく抱き起こしました。

 

すっかり変わり果てた 妹の姿!

華奢な首の上には 羊の頭が乗っている。

白い毛を濡らして 涙があふれていますが、

なんと、薄気味悪い顔でしょう。

けれど、小さい貝殻のような爪の ほっそりとした手は

たしかに 大事なアンのものなのです。

 

「いったい、何が起こったの?」

 

アンは 継母に呪いをかけられたことを 

泣きながら 話しました。

 

 

ケイトは じっと耳を澄ませ、それから

考えて 考えて

そして、アンに言いました。

 

「安心して。私が あなたを 元の姿に戻してあげる。

こわがることなんか、なんにもないわ。

さあ、行きましょう。

広い世界へ二人で出て行きましょうね。

幸せになるために、今すぐ。」

 

ケイトは 妹の頭を 白い布ですっぽり包み

夜の中へ 歩み出て行きました。

 

 

 

さて、

二人の 小さな国から、ずっとずっと 離れた場所に

美しい 王国がありました。

 

舞台は その国へと変わります。

 

高い塔をいくつも持った 大きなお城。

この国には 二人の王子がおりました・・・。