Happy go Lucky

美術館・ギャラリー・撮った写真や好きな絵、そしてひとりごと

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

2020-09-13 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
東京都現代美術館へ、「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を見に行ってきました。



前に見たのは、原美術館にて2006年2月!
まだ大学生のときだよー 若かったよー
音楽を聴くような、体感する作品だった記憶がありますが、今回は「環境」「地球」「気候」といった作者からのメッセージを強く感じる企画展でした。




「あなたの移ろう氷河の形態学(過去)」2019年
「メタンの問題」2019年
「あなたの移ろう氷河の形態学(未来)」2019年

入場してすぐ目にするのは、淡く優しい絵画が3枚。
グリーンランドの氷河と絵具が紙の上で溶けていくことでできた作品で、このあとの展示室で気候変動により氷河が20年の間にすっかり減っている現実をみると、この滲みをただぼんやりと見てはいられなくなります。




「溶ける氷河のシリーズ 1999/2019」2019年

先の作品のもっと近くに展示すればよかったのに、後半の方に写真シリーズで展示されてました。
20年の間に確実に氷河の位置が後退している…



「太陽の中心への探査」2017年

たぶん、この企画展の中で一番のフォトスポット。みんな写真撮ってた。
多面体に反射した光がいろんな色になって壁にも投影されててキラキラきれい。
光は太陽光発電でまかなっているそうな。




「ときに川は橋となる」2020年

暗い部屋の大きなカーテンをまくって中に入ると、中央に水たまり、見上げるとスクリーンに水の波紋が12個映し出されていました。

水たまりが揺れるのは断続的で、前の揺らめきがあるうちに次に揺れたり、しばらくしーんとしてたり。
暗い空間なので、ぼんやりと水面と頭上を見比べたりしながら、なんで12個なんだろう?
時計的な?
星座とか?
1年を月で表して12ヶ月とか?
違うと思うけど、干支も12だわ…
などとぼーっと考えてました。


見て、中に入って、考えておもしろい企画展でした。

オラファー・エリアソン
ときに川は橋となる@東京都現代美術館
2020/6/9〜9/27

ピーター・ドイグ展

2020-09-05 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
かなり久しぶりに、美術館へ行ってきました。
六本木の塩田千春展以来なので1年振り!
こんなに美術館行かなかったことって今までない気がする…
そしてやっぱり美術館ていいなぁ
絵っていいなぁと改めて思ったのでした。




行ったのは、「ピーター・ドイグ展」@東京国立近代美術館
ピータードイグは知らなかったけど、パンフレット見て一目惚れ。

1959年生まれのイギリスの現代アーティスト
展示室に入ってまず、大好きなムンクの匂いを感じて「こりゃわたし好み」と確信。
期待感が溢れてしまったので、急いで入り口に引き返して、音声ガイドをゲット。
ナレーターはのんさんでした。
あまちゃん懐かしい…




左 「エコー湖」1998 個人蔵
右 「カヌー=湖」1997-98 ヤゲオ財団コレクション

湖の向こうからこちらに向かって叫んでる人がいる。
森や湖の色はそんなに暗くはないし、
水面に鏡のように映る様子とかきれい、なはずなんだけど、なんだろうこのザワザワする雰囲気…

近づいてみると、手を口元にあてて叫んでいると思ってた人物は、どうやら頭を抱えてるようだと気付く。
何があったんだ。
これは、、、湖にスマホ落とした、とかそんな話ではなさそうよ。

それと対のように展示されているのは、湖に静かに浮かぶボート。
無人…と思ったら、人がいる。
腕をダランとして。。事件の香り

ムンクの絵ほど、絶望的じゃないし、ぱっと見美しい景色を見ている気がするのだけど、見れば見るほど、これは心象風景なんだと気付く。
これはピータードイグ自身の経験や思考の表現なのか、
それとも鑑賞者それぞれに心当たりを探させるアイテムとしての絵画なのか。。




「馬と騎手」2014 個人蔵

この被り物はなんなんだろ…
こんな格好で馬乗る人、いないよね…
占いページの挿絵とか、タロットカードの図柄にありそうな不思議な絵。
けっこう大きい絵で、思わず足を止めてしまった。
馬の黒と、背景の青がきれい。
ストライプみたいに背景の青が3分割されていたり、下の方の長方形の組み合わせがおしゃれで、なんか凝っている。




「赤い船(想像の少年たち)」2004 個人蔵

映画や、紙面でみかけた写真等、触れたものの中からイメージを切り貼りして作品にしているらしい作者。
これは、カリブ海の島国トリニダードトバゴの風景が現れたもの。
タイトルに丁寧に「想像」と書いてあるので、6人の少年は作者によって生み出された登場人物なんですね…

島国の暮らしの風景と思ってみれば、自然と人の穏やかな一瞬ですが、
想像上の風景と宣言されると、最初のほうにみた緑のボートと腕の記憶が蘇ってきて、なんだか穏やかじゃない予感もしてきます。



「スピアフィッシング」2013 作家蔵

またボート!
しかもこれは完全に自信をもって、不吉な感じがするよ!
ボートの緑、ウェットスーツのオレンジ、頭からかぶった黄色の何か、空の青と黒い水面、さりげなく下弦の三日月
色のお手本みたいにきれいでマティスかな?!と思うけど、画面全体から漂うこの陰鬱な感じ…
これは作者のみたものをもとに描いた作品のようですが、この瞬間を残しているのがすごく現代アートという感じに思えて。
スピアフィッシング=素潜りの漁なら、水中の様子や、まさに獲物を捕らえたところとか、他に描く瞬間いっぱいありそうなのに。
ウェットスーツの人は直立不動で銛を構えているし、同乗者はミイラみたいに姿勢良く座っている。
漁という生のイメージがまったく伝わってこなくて、黒い水面と三日月ばかりが記憶に残るちょっと怖い絵だと思いました。


今回の日本初の企画展にあたり、作品の展示順や並べ方を、作者本人は展示室の色合い等を気にしていたそう。
年代順でも、描かれたモチーフ毎でもなく、作品同士の色やそれによって生まれる雰囲気を大事にしているのかな。
そう思うと、このアーティストが「見たことのない世界を見せる」と評される理由もわかる気がしました。

新型コロナの影響により、会期延長中
2020/10/11まで開催中です。
行ってよかった。おすすめです。

金剛宗家の能面と能装束

2018-09-26 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
三井記念美術館へ、「金剛宗家の能面と能装束」を見に行ってきました。

能を観たことはないけど、能面にどうも心惹かれる私…

京都にある金剛流宗家が所蔵する小面「雪」が、三井記念美術館が所蔵する小面「花」と並べて公開され、とても貴重な機会だということで楽しみに行ってきました。

能面に関して私が知ってることといえば、
若い女→小面
それより年上の女→増女
くらい。
能が大好きだった秀吉が大事にした小面3面を「雪・月・花」と呼ぶそうで、ちなみに「月」はもう在りかがわからないらしい。どんな能面だったのかなー
この3面の中でも、雪よりは月、月よりは花の方がより若い女になっているらしく、確かに見比べると「花の小面」の方がつるんとした華やかさがある…気がする。

人間の顔は左右非対称で、左半分に感情が出る と言われますが、「雪の小面」の方が顔の左右で印象が違う。
右半分だけみると微笑んでいるように見えるけど、左半分だけみると真顔っぽい微笑みというか、いわゆる「目が笑ってない」みたいな印象。
同じ小面でも、年齢を重ねると女はこんな表情をするようになるんだな〜

ところで、今の「若い」と当時の「若い」って差があるよね…と思い調べてみたら、なんと
小面は15〜19歳くらいの女
増女は20代の女
だと!
ハタチ超えたら年増扱い!!辛すぎる!!
80歳超まで生きられる現代と、40歳くらいで寿命を迎えた当時とでは区切り方が違うのは当然なのだけど。
展示をみながら「私は増女だわ」とか思ってたけど、すでに充分「深井」だ。。


かなりたくさんの能面の展示がありましたが、なかなか足が動かなかったのは、やはり「増女」でした。
よく「能面のような〜」と表現されたときに皆んなが想像する、あの何の感情も読み取れない能面。
感情が現れる顔の三部分のどこにも、ほとんど特徴がないのです。
強いて言えば、口元がちょっと「嫌悪」の特徴があるような気もする。
でも能面全体をパッとみると、ほんと「無」表情のんですよね。そういう風に作れるってすごいことだと思います。
この面をつけて演じたときに、その動きによって陰ができ、様々な表情に解釈できるのですねぇ。

キャプションに美術品としての能面の解説がたくさんありましたが、私はただ、能面に現わされた表情や感情のおもしろさや奥深さに引き込まれて長居してしまいました。


「金剛宗家の能面と能装束」
@三井記念美術館 〜2018/9/2 会期終了



ひとり遊び

今回みた増女とは違うものですが、メイクアプリを使って 若く←→老け にメイクしてみました。
増女 増阿彌 東京国立博物館蔵


まずは増女 若返りバージョン
美肌効果つけて、マスカラ多め、チークとシャドウを入れて顔の余白を減らし、イエベの増女さんに合いそうなオレンジがかった赤の口紅にしました。


次は増女 老けバージョン
ファンデーションと、ほんの少しだけチークを入れて、マスカラやシャドウは最小限にし、目元のシワっぽさを出すためクマを入れ、老けて全体的に顔のパーツ(とくに目)が小さくなった感じに仕上げました。


…うーん 若返りバージョンはただ化粧が濃いだけな気もするなぁ。

須田悦弘 ミテクレマチス

2018-09-22 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
ヴァンジ彫刻庭園美術館へ、「須田悦弘 ミテクレマチス」を見に行ってきました。

近所のギャラリーのチラシ置き場で見かけて、即決。
原美術館のトイレの花のあのセンスも好きだし、絶対行こう!と思って有休使って行ってきました。

この企画展では、建物の至る所に作品が配置されているというしかけ。
あらこんなところに!って所に草花が出現して、不思議な体験・不思議な感覚を味わいました。



入口から入るとすぐ、天井近くから白い花がこんにちは
「テッセン」須田悦弘 2012年

紫の色が落ち着いててきれい。
パンフレットによれば、作品は全10点。
美術館で宝探しゲームをするみたいです。

階段を降りながら、吹き抜けになってる所の壁に発見。難易度高いなー
「白万重」須田悦弘 2018年


振り返ると、いました。
無機質なコンクリートの壁から、花。不思議。
「ミケリテ」須田悦弘 2018年


同じ空間にはあと2つ…
ミケリテと色が似てるけど、スズランっぽい形で可愛い。
「ソフィー」須田悦弘 2018年


反対側にもう一つ。実は見落としていて、係員の人が教えてくれました。
「モンタナ」須田悦弘 2018年


地下に作品が続きます。
葉っぱの虫食い具合が妙にリアル。
「カザグルマ」須田悦弘 2018年


近くのエレベーターにもありました。
花びらがキュッと反ってるのが華やかだなぁ
「踊場」須田悦弘 2018年


美術館の過去資料や、須田氏のインタビュー動画がある部屋にも作品があるらしい。
あれ?無くない?

たまたま居合わせたおじさんが、そこの隙間にあったよ!と教えてくれました。
この隙間かー!
「雑草」須田悦弘 2018年

ほんと、このセンス大好き。

残すはあと2つ。難易度は低め。
先ほどのエレベーターの裏側にありました。
「カリシナ」須田悦弘 2018年

花びらの内側の色がきれい。なんか、甘い香りがしそう。

最後に、こちら。
「睡蓮」須田悦弘 2018年

この花びらの色、すごく好き。


これら全て、木彫なのです。本物の草花にしか見えない。
近づいて、よーくよーくみると木でできているということがわかる。繊細な作品でした。

木でできているからでしょうか、どの草花からも、あたたかみや、やわらかさを感じました。
あと、枯れないという安定感。
花びらや葉の色が、ほんわかしていてすごく好みなんですが、インタビュー映像で「日本画の画材を使っている」と話していて、納得。

派手さはなく、むしろ植物園に行った方がよほど華やかでたくさん草花を見られるのだけど、美術館で宝さがしをワクワクは初めての体験でとても楽しかったです。

須田悦弘 ミテクレマチス
@ヴァンジ彫刻庭園美術館 〜2018/10/30

ヴァンジ彫刻庭園美術館 2

2018-09-19 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
ヴァンジ彫刻庭園美術館1のつづき

クレマチスの丘には、他にも美術館やショップ、散策路があります。
少し早めの腹ごしらえ…
イタリアンのお店がすごく気になったのですが、きちんとした店のようだったので一人で入る勇気がなく、和食のお店 にしました。

なんかかっこいい!
2階は懐石料理など、1階はカフェ風になっていて、私は1階のうつわ茶房KEYAKIのテラス席にしてもらいました。
ちょっとずついろいろ食べられる女性好みなランチ↓
自家製ふりかけをいくらでもどうぞ、と言われたけど、おかずがこれだけあったら白いご飯すぐ無くなるよね〜

美味しかったです。量少なかったけど…笑。
クレマチスの丘、ゆったりするのが良いから、今度は誰かと一緒に来たいなぁ。
そしてイタリアンの方も行ってみたい〜

さて、昼食後にもうひとつ行きたかったIZU PHOTO MUSEUMに行きました。

こちらでは、没後20年特別展「星野道夫の旅」を見ました。
「どうぶつ奇想天外」の撮影中に熊に襲われ命を落としたカメラマン。
取材で実際に使われていたカヤックが入口にありました。旅というテーマにぴったり。

アラスカを中心とした極北のそのままの姿がたくさんありました。
カリブーの群れ、ホッキョクグマやグリズリーの眼差し、ザトウクジラが水面から飛び上がる姿、地平線の向こうまで見えそうな風景や空、そしてそこに暮らす人々が、穏やかに切りとられていました。

写真や映像の間に配置された、本人の言葉(詩みたいな)も、やはり温かくて、写真に人柄とか雰囲気って出るんだなぁと思ったり。

カメラマンというと、好奇心旺盛な冒険家のイメージでしたが、この部屋は、哲学者の部屋だなぁと思ったのでした。



敷地内には、徒歩15分程の散策路があり、吊り橋があるとのことで再び散歩してみました。
おぉー森林!フィトンチッド!!
日向は日差しが暑いけど、森の中はさわやかです。

それにしても、誰もいない。
週末は混んでるのかしら。夏季有休消化でふらっと来たけど、ほんとうに良い一日だわ…心の洗濯…

と思ったら、倒木が私の行く手を阻んできた!
今年の夏は台風やゲリラ豪雨が多かったし…倒れてしまったのですね。

ん?ていうか散策路ってみんな通らないのか?
だからさっきから人が居ないのか。

見えてきましたー吊り橋。
想像したより、ずいぶんと立派だ。

これだけ大きかったら、そんなに揺れないだろうと思ったけど、それなりに揺れました。
さっきの倒木を見た後なので、この吊り橋の保守状況に不安を感じながら通行…怖い…

思ったより長い…
ここから先、渡りながら写真撮ったりマイナスイオンを深呼吸したりする余裕はゼロでした。

森林の中の癒しタイム終了…そろそろ〜と歩いて橋を渡りきると、なんと吊り橋の乗り換え!

階段を降りて、歩き、また階段を上がって吊り橋パート2でした。あぁービクビクしちゃった。


今回は、彫刻庭園美術館とフォトミュージアムだけでしたが、敷地内には他にもベルナールビュフェ美術館や井上靖文学館もあり、ショップやカフェも充実していました。
都内だけでも美術館はたくさん楽しめるけど、少し足を伸ばして日帰りアート旅も良いな、と思った一日でした。
とってもおススメ!

ヴァンジ彫刻庭園美術館 1

2018-09-19 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
前から行ってみたかった、ヴァンジ彫刻庭園美術館へ行ってきました。
三島駅から無料シャトルバスで20分ほど。
「クレマチスの丘」と名付けられたエリアに、3つの美術館と1つの文学館、6つのレストラン・カフェ・ショップ、そして一年中クレマチスその他の草花が楽しめる庭がありました。

バス停からまずチケットカウンターへ行き、お目当ての2館共通券を買いました。

さっそく、お目当てのヴァンジ彫刻庭園美術館へ!
謎の男の人も、美術館に向かって歩いています。
歩いているというより…建物に向かってなにか言ってる??


広い庭を抜けると、見えてきました!
現代イタリアを代表する彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジの作品を中心に、企画展示も行う美術館でした。誰だろう…ヴァンジさん…
かなり広範囲に散らばった石の庭が、どこかの惑星に来たような感じ。


平日の朝イチに行ったので、人がいない!
けどさっきの謎の人といい、ここにも謎の人が。
美術館には、こんな泥棒みたいなことしなくても入れますぞ〜


ヴァンジ氏がどんな作品を作る人なのか全く知らないまま来ましたが、雰囲気がだんだんわかってきたような。。
これなんかは、私のような凡人には思いもつかないヴァンジワールド

「チューブの中の女」ジュリアーノ・ヴァンジ 1967〜68年
なーんーでーそんなとこに入りました?!しかも真顔で…そこ、落ち着く?

あたあた…あたまがぁー
つかえてるよぉー 背筋ピーンてできないよー

「立方体の中の男」ジュリアーノ・ヴァンジ 2006年


このまま可笑しなヴァンジワールドでいくのかと思いきや、こんな、、絶望

「耕された土地」ジュリアーノ・ヴァンジ 2006年
何もなくなった世界で途方に暮れているのかと思ったけど、タイトルからすると、耕作が終わって疲れているところでしょうか。それとも、たくさん収穫できる土地でありますように、というお祈り中?うーん、そんな風に見えない。



一番のお気に入りは、
「歩く女」ジュリアーノ・ヴァンジ 1993年
さっそうと歩く女の人の晴れやかな表情が清々しい。
着ている服がサラサラとなびいて、身体にまとわりついています(でも彫刻)。
それなりのスピードでどんどん歩いているようで、勢いを感じます。かっこいい彫刻って、地面に落ちた影もかっこいいのですね。



年代で作風が変わるというよりは、作品によって違う人が作ったみたいな印象を受けました。

全体的にツモリチサトのマネキンみたいな…人の身体のかたちがちょっとおかしめな感じ。
胴が長い 顔のエラが全くない 目が離れている
後頭部が伸びてもはや宇宙人みたいetc
独特の世界観に少し笑えるところも。

美術館の傍から外に出ると、クレマチスガーデンがありました。
きれいに整備された敷地に、庭木と彫刻が。
池にはハスの花が咲いていました。天気に恵まれてよかったです。

庭は結構広いので、花を見ながらはじからはじまでゆっくり歩くと30分くらいかかります。
ベンチが所々にあるので、写真撮ったり座ってみたりしながら、のんびり散策。

クレマチスは、時期によってみられるのが変わりますが、一年中楽しめるように栽培されていました。

この時点で「遠かったけど来てよかったなぁ!」と大満足。
でもここ、まだまだステキな所がたくさんありました。

つづく

リー・キット「僕らはもっと繊細だった」

2018-09-17 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
原美術館へ、「リー・キット 『僕らはもっと繊細だった』」を見に行ってきました。


事前に何も調べることなく、チラシの印象だけで足を運びましたが、その印象そのままの作品でした。

展示室に絵画や布を配置し、そこにプロジェクターで光や映像を当てるもの。
また、小さい展示室には、字幕のついた映像が延々と映し出されていました。

映像それぞれには、ストーリーは無く、人物が何かしたりということもありません。
ただの光だったり、はたまた木の揺れ具合が映し出されていたり、あるいは足を絡めながらさするような仕草だけをずっと映し出していたり。

あまりに仕掛けが少なくて、本当にあっさりと展示室を一周し終わってしまいます。



例えば、映像の中に登場人物がいたら。
その人がどんなことをするか、どんな服装をしているか、ほかの登場人物との関係は…などとその映像の中に入って行きやすいかもしれない。

例えば、音楽が付いていたら。
その音楽のタイトルだったり歌詞から、アーティストが伝えたいメッセージを読み取ることができるかもしれない。


今回の展示で見たリー・キットの作品は、そういうわかりやすさがほとんどありませんでした。
ただし、どの作品も独特の雰囲気を漂わせていて、『リー・キットっぽい』何かは感じられる。
でも、それが『何なのか』は、わからない。

作品の中には、字幕が印象的なものがありました。
ただし、その字幕をもってしても、特別なにかを主張したり、語っているわけではないのです。

チラシにも印刷されたこの脚だけの映像では、うろ覚えですが

あなたはこの秘密を手放さない

というような字幕が現れます。
一体なんのことを言っているのか?
リー・キットが香港出身のアーティストと知って、政治とか国とかアイデンティティ等について表しているのか、とも思いました。
でも、なんとなくですが、そういう話のためだけに作られた映像でもないような気もしてくる。

見た人それぞれが自分の『秘密』に思い当たるかもしれないし、当たらないかもしれない。
わかる人にはわかるし、わからない人にはわかってもらわなくてもいい、、そんな突き詰めた印象を受けたのでした。

企画展のタイトルには『僕らはもっと繊細だった』とあります。
世の中を知り、ルールも、ルール外のことも知った人たち。
いいこと悪いこと、あらゆる感情を経験して、ちょっとくらいの刺激なら慣れてしまった人たち。
そういう人たちへの冷ややかな皮肉なんだろうか、と思いながら展示室をもう一周しました。

すると、先程は気づかなかった貼り紙を、原美術館の中で一番ステキな窓の部屋のガラスに見つけました。
無造作に貼り付けられたコピー用紙には、

人生は素晴らしい


圧倒的な肯定感に包まれて、原美術館を後にしたのでした。


リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」
@原美術館 〜2018/12/24 1,100円


SEITEIリターンズ!渡辺省亭展

2018-09-16 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
加島美術へ「SEITEIリターンズ!渡辺省亭展」を見に行ってきました。

広くはないスペースに、みっちりと並べられた省亭の絵!
ガラスケースに入ってるでもなく、そのままに掛けられています。
そしてこんなにたくさん見られて、無料!
なんということだ〜


今回の展示を見てまず思ったのは、「生き物図鑑だ〜」ということでした。
私がもともと省亭に惹かれたのは草花の描写の方なのですが、今回並んでいた作品は、主に鳥を中心とした生き物がとても活き活き。


1Fの展示で印象に残ったのは、やはり『十二ヶ月』でした。
季節の花鳥画がずらっと十二幅並んでおり、圧巻か…と思いきや、ぱっと見た目は地味なのです。
冬はともかく、それ以外の季節も色が少ない世界みたいなのです。
フィルターで言えばginghamみたいな…Instagramされる方はわかると思いますが、ginghamはモノクロとは違う、全体的に色の鮮やかさが落ち着いてグレーがかったような、白いなにかで透かして見たような…そんなフィルター。
その感じで草花を描いて、鳥は見たままに、あんなに上手に描いちゃうのです。
視線はどうしても鳥に集中してしまいます。

あ〜冬の鳥の羽毛のフワフワした感じ、暖かそう。
あ〜もふもふしたくなってくるなぁ。

鳥の様子を省亭がじっとり観察している姿を思わせるような、生き物の世界を人間が覗き見している絵であり、
逆に、鳥がこちら人間側を観察してるような、生き物の世界が人間の暮らしに向こうから近づいてきたような印象の絵でもありました。
これってやっぱり、省亭の決定的瞬間を写真でとらえるような描きとめる技能と、絵の中の花鳥に命を吹き込むような省亭の眼によるんじゃないかなと思うのです。
絵が上手いだけでもつまらない、ですよね。


2Fには、先日迎賓館赤坂離宮でたっぷり見てきた濤川惣助との共同制作により生まれた七宝焼きの作品もありました!
迎賓館のレリーフよりずっと小さい瓶にも美しく再現された省亭の絵に驚きました。
濤川惣助、天才過ぎる…

窓のある日当たりのいいお部屋には、牡丹、菖蒲など大好きな花の絵もあり、うっとり。
紫とか青の花ってきれいです。
涼しげな感じと、花らしい華やかさがあってとてもいい〜!

来週にはトークイベントもあるので、また京橋でたくさんの省亭の絵を見に行く予定。

日本画はちょっと…という人にぜひ省亭おススメです〜 今回も大満足でございました。

「SEITEIリターンズ!渡辺省亭展」
@加島美術 〜2018/9/29 無料

没後100年 渡辺省亭特別展(迎賓館赤坂離宮)

2018-09-15 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
また病気が始まってしまった…
加島美術の「SEITEI リターンズ!」がスタートし、また省亭をたっぷり見られる季節がやってまいりました〜
しかし、私は銀座ではなく四ッ谷に降り立っていました。。

来たのはこちら迎賓館

接遇がなければ基本的に10時〜17時で一般公開してるらしい。
ちなみにこの写真だと、まるで正面のこの門から入っていったように見えますが、これは全て見学し終わって帰るときに出て振り返りながら撮った写真です。

まず西門(とてもしょぼい)から入って、手荷物検査、金属探知機を通ります。
すごい職員?警備員?の数で、悪いことしてないのに何故かドキドキしてくる…

今回は省亭の下絵をもとにした七宝がお目当てですので、本館+庭園の2,000円券を購入。
ほかに、和風別館も見られる2,500円券や、庭園だけ見る300円券もあるようです。

庭園や外観は撮影可ですが、建物内は撮影NG
10m置きくらいに警備やら職員やら立っていて、
絨毯からはみ出して歩かないように とか
壁もドアも窓も一切触らないように とか
あれこれ注意事項を唱え続けてる!
粗相のないように緊張しながら順路に従って進みました。

建物の中に入った感想は、、
なんか凄すぎて…口が閉まらない……笑。
床は大理石もしくは寄木細工の凝った床
真っ白な壁に、複雑な彫刻が施されて金ピカだったり、神殿みたいな太い柱は、見たことないような変わった柄と色の石でできてるし、壁紙だと思ったら織物だし、シャンデリアは有り得ないくらい大きくて複雑でぴかぴかだから目がチカチカしてくるし、、、異世界でした。


写真ないので、パンフレットから…
表に見えるクラシックな木製彫刻は、花鳥の間にある大食器棚の写真です


部屋毎に用途(控えの間、調印式や会見、晩餐会)があり、それぞれがいろいろな時代に流行した様式で設計されているとのこと。

白地にゴールドの装飾が華やかな正面ホール。
同じく白地にゴールドの装飾と何枚もの鏡がある彩鸞の間。
省亭下絵の七宝焼きがあり、板張りで落ち着いた雰囲気の花鳥の間。
窓がたくさんあり明るく、素晴らしく豪華なシャンデリアが目立つ羽衣の間。


お目当ての省亭が下絵を描いた七宝は、「花鳥の間」にありました。
枝や葉、花びら、鳥の羽の細かい濃淡が忠実に再現されていました。

壁や天井の花鳥画は西洋画
三方等間隔に飾られている七宝の花鳥は、日本画
…日本画と言っても省亭なのでちょっと西洋風だけど。

草花や鳥が美しいのはもちろんですが、
省亭独特のお洒落な感じがそのまま七宝焼きのレリーフになっていて感動。
描かれた花鳥から、ただ「季節を感じる」とか、「きれい」とか感じる以上の「詩的なもの」省亭の絵にはあるように私は感じるのですが、それが30枚も!しかもこれ焼き物なの!という驚きでした。

七宝焼きでは、有線七宝の並河靖之(庭園美術館で見たぞ〜)、無線七宝の濤川惣助(今回見た、花鳥の間の七宝焼を作った人)と言われてるそう。
両方ともナミカワさん。覚えやすくてよろしい。


ぐるぐる見て回って決めた、私のお気に入りTOP3

『駒鳥に藤』渡辺省亭・濤川惣助
蔓が自然に落ちてるところをみるに、風は吹いてないようです。
房の先まで満開に咲いた藤の甘い匂いが漂っていそう。コマドリも春の陽気とその香りに誘われてやってきたのかな。



『鶉に蓼・野菊・釣鐘人参』渡辺省亭・濤川惣助
花が3種も描き込まれているのに、蓼の葉っぱが印象的。向きを変えると色が違ってみえる石みたいな、色のグラデーションがきれいです。
釣鐘人参の紫、蓼の赤、野菊の白が、秋らしさを伝えると同時に、冬の前のお祭りといった感じ。


やっぱり牡丹が素晴らしい…
一番お気に入りは、こちら

『尉鶲に牡丹』渡辺省亭・濤川惣助
満開に咲き誇っている牡丹がすごい!
花びらの色の濃淡が、中に詰まったものを感じさせます。開花を微速度撮影動画でみているような気分。なぜなら、花が大輪であればあるほど、この後散っていく様子が想像できるから。
牡丹の花が散るさまは、『崩れる』と表現するそうです。短期間に一気に花びらが一枚ずつハラハラ散っていく… ジョウビタキのつかの間のたわむれなのですね。



建物から出ると、大きな噴水がありました!
噴水にも美術館の庭にありそうな彫像があり豪華な雰囲気〜
噴水を入れて、裏側から撮ってみました。

省亭目当てで行ったけど、建物自体もかなり面白かったです。
ここに行った後に、岩崎邸とか庭園美術館とか行ってもかなり貧相に見えると思う。

警備員の監視から解放され、外の空気を吸ってお腹が空いてきた…
キッチンワゴンが2台来てました!
クロワッサンサンドの文字に惹かれて休憩してみました。クロワッサンが、、小さいよ〜(味はまぁまぁ美味しい)


迎賓館 赤坂離宮
「没後100年 渡辺省亭特別展」
〜2018/10/9 2,000円

ゴードン・マッタ=クラーク展

2018-09-08 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
東京国立近代美術館へ「ゴードン・マッタ=クラーク展」を見に行ってきました。

私が生まれる少し前に、今の私の年齢で亡くなったゴードン・マッタ=クラーク。
様々な活動を、残された資料とともにたどる展示でした。

企画展パンフレットなどで印象的だった、既存の建物を真っ二つにする「スプリッティング」など、解体前の古い家や倉庫をカットしたり穴をあけたりやりたい放題。
すごく問題意識の強い人だったんだろうなぁ
そして同時にすごく強気な人だったんだろうなぁ

役目を終えた古い建物が解体されていく…前にやってしまえ〜やられる前に俺がやらねば〜と思ってそうな、そんな強気な印象を受けました。
こんな風にパフォーマンスして、新しいものに生まれ変わったわけではないし。。
すでに壊す予定だったとしても、これで決定的に建物としての機能は失ってしまった。
もしこれが自分の家だったら?
刺激的なパフォーマンスであるだけに、私の気持ちをザワザワさせるものでした。

それにしても、この感じ何か他に記憶にあるような…真っ二つに切る…
あぁ!!罪と罰だわ!

もうだいぶ前ですけど、椎名林檎のシングル「罪と罰」のジャケットを思い出しました。
真っ二つに切られてるのは、椎名林檎の愛車であった黄色いベンツ。
廃車予定だったのでPVに使ったとか読んだ覚えがあります。
10代だった私は、このジャケットやエピソードも「椎名林檎すごー かっこいいー」とか思っていたように思います。あれ?今日のスプリッティングには拒否反応が出てるのに…
歳をとったのかしら。
私の中の、ドライとウェットの狭間。

長く使われてたくさん手垢がついた物に、軽やか(な風にみえる)に手を入れていく姿が、うーーん 胸がチクリとします。


「スプリッティング 四つの角」

ゴードン・マッタ=クラークが今も生きていたら、どんな活動をしていたでしょうか。
アートが人に受け入れられたり、流行する要因はいろいろあると思うけど、この人が世界的に支持を得たのはなんでだろう?
個人的には、
「ヤコブの梯子」1977年
のような、そうせずにはいられなかった、そうする理由があるようなパフォーマンスに強く惹きつけられたのでした。

双子の兄がアトリエから転落死した翌年のパフォーマンス。
高い煙突にロープをかけよじ登っています。


美術館の外には、東京のゴミをかき集め再作成された「ごみの壁」。
かなり懐かしいJ-Phoneの携帯が!使ってたやつ!ゴミだとしても、よく出てきたな こんな古いの!



ゴードン・マッタ=クラーク展
@東京国立近代美術館 2018/6/19〜2018/9/17
1,200YEN