虚構の世界~昭和42年生まれの男の思い~

昭和42年生まれの男から見た人生の様々な交差点を綴っていきます

53歳の独り言「晩夏」

2020-11-25 07:24:46 | 小説
コロナ下で飲みに出ることがなくなった。

昨日は、夜、何だか無性に夜の街の中で過ごしたくなり、一軒の町中華の店に寄った。

私が20代のころから定期的に泥酔した後に訪れる店だ。

決しておいしいとは言えないが、洋楽のBGMと深夜2時までの営業時間が店の雰囲気を
より一層マニアックなものへと引き立てている。

私はチャーハンとギョーザを注文した。

料理が出てくるまで店の中を眺めながら、物思いにふけていた。

人生のいろいろなシーンが蘇ってきた。

料理は相変わらずおいしくなかったが、そのおいしくなさのまま30年も営業しているそのスタイルも
また粋に感じた。

何だかおいしくないことを確認することでほっとしている自分がいる。

帰り際、70を超えるマスターが「いつもどうも」と声を掛けてくれた。

「おいしかったです。また来ます」とお礼を言って店を後にした。

寂れたネオン街の店に佇む町中華の店が愛おしかった。

店も晩夏を迎えている。周囲の店が次々と閉店し、更地となっていく光景に一つの時代が
終わろうとしている予感がした。

今日も一日が始まる。

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