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3/25/2018

The Merry Monarch's Wife: The Story of Catherine of Braganza (Queens of England)(YL5)

The Merry Monarch's Wife: The Story of Catherine of Braganza (Queens of England) (語数約 107,360語)

ポルトガル本で、なにかないかなーと思って物色していて、英国のCharlesIIへ嫁いだポルトガルの王女Catherineが主人公のこちらを発掘。こちらは英国女王ものシリーズの中の1冊ですが、1冊で話としては完結していますので、単体で読んでも十分楽しめした。Jean Plaidyの本はやっぱり面白いですね。

主人公のCatherineはJuan Ⅳでスペインからのポルトガルの独立を企てた「王」の娘です。その為、なかなか周囲の国々には「王」と認められず、いつスペインからちょっかいをかけられるかわからない小国ポルトガルとしては、スペインとも対抗できる相手としてイングランドとの同盟にめをつけます。アルマダ海戦でスペインの無敵艦隊を破ったのが英国海軍ですからね…。

ということで王女のChaterineはポルトガルを守るため、幼少時にCharlesIIと婚約します。ピューリタン革命でCharlesIIはほとんど放浪の身、いったん婚約は棚上げになっていたものの、CharlesIIが王となったため、たくさんの持参金をつけてChaterineは英国へ嫁ぎました。

CharlesIIといえば、皇太子時代にピューリタン革命の危機で大陸に逃れ転々とした暮らしをし、Oliver Cromwellの死後、まもなく英国王に返り咲いた王ですね。さすがに王権を取り戻しただけあって(なにしろ父親のCharlesⅠは処刑されていますので)、政治的なバランス感覚がなかなかあった感じも伝わってきました。翻って、英国ではブラッディ・メアリーの悪夢から君主がカトリックなんて…、と思われるに決まっているカトリックの信仰を公言してしまう弟のJamesIIのセンスのなさときたら…!という対比もわかりやすく描かれていました。

Chaterineの英国での孤立無援ぶりも、本書を読んで了解しました!ゴリゴリのカトリックの国ポルトガルから突できたChaterineは当然カトリック信者。CharlesIIが王妃に感化されるんじゃないかと最初は警戒され、カトリックであることからChaterineはとにかく英国では人気がありません。王が王妃の信仰に感化されないことは次第に周囲にも理解されていくようですが、二人には跡継ぎができませんでした。HenryVIIIのことを考えれば、CharlesIIだって跡継ぎ欲しさに彼女と離婚する決断をするかもしれないし、周囲の者たちだって彼女と離婚させようと画策してきます。なにしろCharlesIIに跡継ぎがなければ、王位継承者は弟のJamesであり、カトリックの君主をなんとしても認めたくない人たちが英国にはたくさんいました。Chaterineと離婚させてはやくCharlesIIに正当な「跡継ぎ」を作ってもらおうというロジックで動くわけです。夫婦仲は悪くはないとはいえ、CharlesIIにはたくさんの愛人もいました。

Chaterineと愛人たちとのバトルはどうなるのかな、と思いながら読んでいましたが、Catherineは性格が良いですね。跡継ぎもできず、とても不安定な身の上で、さらに愛人の存在まで受容しなければならない中、彼女はキレもせず、政治的にもギリギリのバランス感覚で、つつましさでやりすごして英国生活を生き抜くんですね。こういう不安定な駆け引きの世界ではキレたら負けですね。

主な登場人物

ポルトガル王家

  • King Juan Ⅳ of Portugal…主人公の父親。Portugal王。
  • Queen Maria Sophia…Portugal王妃。Duke fo Medina Sidoniaの娘。かなりの野心家。
  • Don Francisco de Mello, the Marquis of Ferreira…Donna Mariaの兄。主人公の名付け親。
  • Alfonso…Chaterineの弟。
  • Pedro …Chaterineの弟。Alfonsoより5歳若い。
  • Maria Françoise Elizabeth…Alfonsoの妻。しかしQueen Mariaが亡くなったあと兄弟喧嘩が始まって離婚し、Pedroと結婚。
  • Maria Sophia…Pedroの後妻。Palatinate of Neuburg。

イングランド王室関係

  • Henrietta Maria…Charlesの母。熱狂的なカトリック教徒。フランスのアンリ4世の娘。
  • Princess of Orange…CharlesIIの姉。
  • James…Duke of York。Charlesの弟。
  • Anne Hyde…Jamesの妻。Chancellor Clarendonの娘。
  • Mary…Duke of York JamesとAnneの娘。
  • Anne…Duke of York JamesとAnneの娘。
  • Henriette…Charlesの末の妹。CharlesはMinetteという愛称で呼ぶ。フランス国王Louis XIVと仲がよいがLouisの兄弟Philippeと結婚した。
  • James Franci Edward…Jamesの息子。ゴットマザーはCatherine。
  • Prince of Orange…Jamesの娘Maryの結婚相手。オランダに嫁いだ叔母Princess of Orangeの息子だからChalesIIの従兄。プロテスタント。
  • Prince George…Denmarkの王子。Jamesの娘Anneの結婚相手。財産をあまり持ってないのでAnneは英国に留まれそうというメリットが。
  • James Crofts…フランスからきた大人びた13歳。Tomas Rossに師事する。とてもハンサム。EnglandではLord Croftsと暮らしている。Charlesの亡命時代にLucy Walterとの間にできた庶子。Anneと結婚してからはJames Scottと名乗るように。
  • Anne Scott…Duchess of Buccleuch。CharlesIIの息子Jamesの妻。

愛人たち

  • Barbara Palmer, Lady Castlemaine…Charlesの恋人。…Charlesの婚前時代からの浮気相手。Barbara Villiers。気性の激しい女性で次々子どもを産む。
  • Frances Stuart…16前後の物凄い美少女。Henriettaがフランス宮廷から呼び寄せた。物凄い無邪気。
  • Nell Gwynne…人気女優。無鉄砲なタイプ。庶民からは大人気。
  • Louise de Karoualle…Charlesの妹Minnetteの英国帰国の際、一緒についてきた随行員の一人。目を引くブルターニュの美少女。

イギリス宮廷・政治家など

  • Edward Hyde…Earl of Clarendon。Charlesの腹心。Catherineとの結婚を手配した人物だがその後ぱっとしない。自分の娘AnneがCharlesIIの弟Jamesと結婚しているから、Catherineが産めず目と知って結婚させたんじゃないかと思われている。
  • Duke of Buckingham…ロイヤリストだったけど、Cromwellと手を組み英国での自領を守り、議員の娘Mary Fairfaxと結婚。
  • True Clifford…新内閣Cabalのメンバーのひとり。熱心な Catholic。
  • Arlington…新内閣Cabalのメンバーの一人。ほどほどにCatholic。
  • Ashley…新内閣Cabalのメンバーの一人。哲学者。Buckinghamのシンパ。
  • Lauderdale…新内閣Cabalのメンバーの一人。プロテスタント。Buckinghamのシンパ。
  • Earl of Shaftesbury…熱狂的なプロテスタントでカトリックのJamesとCatherineを排除したがっている。
  • Titus Oates…短期間のうちに人々に国の救済者と言われ始めた男。無頼漢。イングランド国教会を追われて、あちこちでトラブルを起こしスペインでイエズス会に入ろうとしてそこも追い出される。
  • Israel Tonge…研究者でありロンドンの牧師だった。
  • Sir Edmund Berry Godfrey…審問前に自らの剣にさされて変死。カトリック教徒の陰謀を知るものとして復讐として殺されたこだという噂。
  • Christopher Wren…ロンドン大火のあとCharlesIIが呼び寄せた建築家。

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