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今日の筆洗

2020年12月03日 | Weblog

 作家の大岡昇平は野球ファンだった。日記「成城だより」にこう書いていた。「思えば、われ十四歳の頃、亡父六大学野球のネット裏席を買いてより、わが人生は野球に支配されしようなものなり」▼野球に支配される。思い当たる人もいるだろう。試合結果や個人成績はもちろん、トレード情報や高校、大学選手の動向まで気になる。これで米大リーグまで守備範囲に入れると、間違いなく一日中、野球のことを考えることになる▼「野球狂の詩」「ドカベン」などの漫画家、水島新司さんが引退するという。「水島新司を読みてより、わが人生は野球に支配されしようなものなり」とつぶやく。数々の作品を通じて野球の面白さや試合の見方まで教えてくれた。日本野球の大恩人である▼精密で躍動感あふれるタッチが教えてくれたのは野球ばかりではなかろう。水島作品の主人公はいずれも才能ある選手だが、弱みもある▼鈍足の山田太郎、背の低い里中智、直球しか投げない藤村甲子園、岩田鉄五郎には老い。困難を克服し、あるいはごまかしながらも活路を見いだす。それを仲間が支える。描こうとしていたのは人間そのものだろう▼漫画家生活は六十三年に及ぶ。プロ野球選手の現役はだいたい十年、どんなに長くても二十年。六十三年プレーヤーとの別れが寂しいのは当然である。「ドカベン」監督編を読みたかった。


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