何で笑ってるか分からん?…ジャルジャル | りおみーのブログ ニュースとお笑い芸人に不毛な突っ込み

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主にお笑いのネタに関して、時々ニュースに関して、「これってどういう事?」をロジカルに分析してます。


本領発揮!

【注:セリフは正確ではありません。】

□□□□□□はじめに□□□□□□

少し遡って「M-1グランプリ2018」のネタから。。。

ファーストラウンドの序盤は、
審査員の厳しい評価から、
場の空気が若干重くなっていました。

その重い空気を跳ね返し、
会場を沸かせたのが、
ジャルジャルのネタ。

今田耕司さん
「とにかく面白かった。」

オール巨人さん
「面白かったです。」

松本人志さん
「僕は面白かった。屁ぇこいた。」

…等と、絶賛です。(^_^;)

ところが、このジャルジャルのネタ、
「何が面白いか?」
が、よく分からない。

実際に、

今田耕司さんの「とにかく面白かった。」の前には、
「途中から自分でも何で笑ってるか分からんくなった。」

オール巨人さんの「面白かったです。」の前には、
「いや、何が面白いか分かりませんが、、、」
という一言がくっついています。


何が面白いか分からない、、、

……けど面白い?

どういうネタでしょう?

□□□□□□国名分けっこ□□□□□□

福徳:「小学校の時やってた遊びを久し振りにやると、楽しいですよ。」

子供の頃の遊びをモチーフにするのは、漫才の定番。

みんなが知っている遊びの、
遊び方を間違えるというパターンが多いでしょうか。

「10回クイズ」などよく使われます。

ところが、ジャルジャルは、

福徳:「例えば、鬼ごっこ、国名分けっこ、かくれんぼ、刑ドロ。」
後藤:「ちょっと知らんの入ってるわ。」

知らない遊びを持ち出します。

知らない遊びを持ち出す場合、
遊びそのものが訳が分からない、ディスコミュニケーションというパターンもあります。

例えば、「はんにゃ」の「ズクダンズンブングンゲーム」。

「何やねんその遊び!」
「『負けた!』ってどういう事やねん!」
と突っ込みたくなりますよね。

まぁ、「国名分けっこ」も、
「何やねんその遊び!」と突っ込みたくもなるのですが、
一応遊びとして成立しています。

福徳:「国名を分けっこする。それだけ。やったら分かる。……アメ…」
後藤:「……リカ?」
福徳:「イギ…」
後藤:「……リス」
福徳:「ちゅう…」
後藤:「ごく」
福徳:「にっ…」
後藤:「ぽん」
福徳:「そう!」
後藤:「平和な遊びやなあ、これ」
福徳:「何処で区切るか分からん。それがオモロイねん。」

□□□□□□ドネシア、ゼンチン□□□□□□

当然、遊びの展開の中で可笑しい所が出てきます。

福徳:「ドイ…」
後藤:「…ツ」
福徳:「ド…」
後藤:「…イツ」
・・・(中略)・・・
福徳:「インドネ…」
後藤:「…シア」
福徳:「インド…」
後藤:「ネシア」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「カナ…」
後藤:「ダ」
福徳:「ちゅう…」
後藤:「ごく」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「ギリ…」
後藤:「シャ」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
・・・(中略)・・・
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「ギリ…」
後藤:「シャ」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「エジ…」
後藤:「プト」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア、、、インドネシアばっかりやなこれ!ハイペースで出るな!」
福徳:「そういう戦法やん。」
後藤:「ほぼ、一回おきに『ドネシア』って!何?『ドネシア』って!初めて言う4文字や!変なとこで区切ってこんといて!」

福徳:「アルゼン…」
後藤:「チン」
福徳:「アル…」
後藤:「ゼンチン」
福徳:「アル…」
後藤:「ゼンチン」
福徳:「アル…」
後藤:「ゼンチン」
福徳:「アルゼン…」
後藤:「チン、、、アルゼンチンばっかりやなこれ!区切るとこ変えてるだけで!」
福徳:「そういう戦法やん。」
後藤:「ほぼ、『ゼンチン』『チン』って!『ドネシア』も初めてやったけど『ゼンチン』も初めて!止めて恥ずかしいから。」
福徳:「『アルジェリア』でもえぇねんで。」
後藤:「『ゼンチン』の口になってるわ!」

・・・(中略)・・・
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「アルゼン…」
後藤:「チン」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「アル…」
後藤:「ゼンチン」
福徳:「アルゼン…」
後藤:「チン」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「イン…」
後藤:「ドネシア」
福徳:「アル…」
後藤:「ゼンチン」
福徳:「アルゼン…」
後藤:「チン、、、頭おかしなるわ、これ!発狂するで、観てる人の精神状態によっては!『ゼンチン』『チン』『ドネシア』。怖すぎるやろ!」
福徳:「全然、惑わされへんなぁ。」
後藤:「ほぼ、2ヵ国しか出ないからや!お前の偏りスゴい!」
福徳:「何が一番耳にへばりつくん?」
後藤:「断トツで『ゼンチン』や!」

□□□□□□ディスコミュニケーション□□□□□□

ここにあるディスコミュニケーションの笑いは、
シンプルです。

ツッコミのセリフにある通り、
「区切り方がおかしい」とか、
「出題に偏りがある」とか。

別に「区切り方」や「出題」に正しいやり方がある訳ではありませんが、
違和感ありますよね。

< 基準 >:一般的に想像する区切る位置があるにも拘わらず
< ズレ >:想像しない位置で区切る
<ツッコミ>:「区切り方おかしいわ!」「何処で区切ってんねん!」

< 基準 >:たくさんの国名を出題できるにも拘わらず
< ズレ >:出題に偏りがある
<ツッコミ>:「偏りすぎや!」「もっとあるやろ!」

それをしつこく続けます。

単純なボケをしつこく繰り返すだけです。

……とは言え、
私的には、
飄々と「そういう戦法やん。」と主張し、
ディスコミュニケーションに無自覚な福徳さんと、
ゲームに付き合わされて、
ディスコミュニケーションに翻弄される後藤さんの対比が面白かったと思います。

ただ、審査員は戸惑っていたようです。

立川志らくさん
「最初はただふざけてるだけで、くだらねーなって思ったんだけど、、、」

オール巨人さん
「長いことやってるから、なんや、まだ続けるんかって思った、、、」

単純なボケを繰り返しているとしか、
捉えられなかった訳です。

□□□□□□テンションリゾルブ□□□□□□

でも、
その「変な区切り方」「出題の偏り」というシンプルなディスコミュニケーションをしつこく繰り返す事には、
他の笑いを生む効果があります。

単純なディスコミュニケーションを、
途切れないリズムの良いやり取りで続けるデュレーションは、
それこそ「まだ続けるんか」と思わせますよね。

それが、生み出すのが「緊張」。

耐えきれなくなって突っ込む事でゲームが途切れた瞬間が、
「緊張の緩和」。

これ、
過去記事で書いた事あると思うのですが、
「緊張の緩和」の一形態「テンションリゾルブ」です。

ボケがあるのに直ぐには突っ込まない事で生まれるモヤモヤ感を、
間を置いて突っ込む事で解消するテンションリゾルブ。

【↑「テンションリゾルブ」は音楽用語から拝借してつけた勝手なネーミング。音楽的には、テンションノートが作り出す不安定感をコードトーンに移って解決すること。】

< 基準 >:違和感のある出題の連続による緊張(テンション)
< ズレ >:連続を断つツッコミによる緊張の緩和(リゾルブ)
<ツッコミ>:「ツッコミ遅いねん!」「永遠に続くか思うわ!」

リズムの良いやり取りのデュレーションが、
効果的にテンションを醸成しています。

しつこい事にこそ意味がある訳です。

□□□□□□リズムの変化□□□□□□

福徳:「レベル上げるで!アル、アル、アル、アル…」
後藤:「……ゼンチン、ゼンチン、ゼンチン、ゼンチン」
福徳:「イン、イン、イン、イン…」
後藤:「ドネシア、ドネシア、ドネシア、ドネシア」
福徳:「アル、イン、アル、イン…」
後藤:「ゼンチン、ドネシア、ゼンチン、ドネシア」
福徳:「イン、イン、アル、アル…」
後藤:「ドネシア、ドネシア、ゼンチン、ゼンチン」

途中からゲームの難易度アップ。

でも、
ここで難易度アップより重要なのは、
リズムの変化です。

2拍子1小節のやり取りから、
4拍子2小節のやり取りに変わる感じでしょうか。

しかも、
旋律を付けたり(『ゼンチン』と『ドネシア』の高さをかえる)、
身体でリズムをとる(肩を上下させる)事で、
変化をより強調して見せます。

過去記事でも書きましたが、
リズムの変化は、
「思い込みの間違い」の笑いを生みます。

< 基準 >:2拍子1小節かと思ったら
< ズレ >:4拍子2小節
<ツッコミ>:「長いわ!」「続くんかい!」

後藤さんが戸惑った演技をするのも、
「思い込みの間違い」の演出ですね。

更に、

福徳:「アル、ゼン、アル、ゼン…」
後藤:「・・、チ~ン、・・、チ~ン」

突然の休符と裏拍で、
更にリズムを変化。

身体で大きく裏拍にのる様子を見せ、
リズムの変化を強調。

福徳さんの方は表拍から入る事とも対比しています。

< 基準 >:表拍から入るかと思ったら
< ズレ >:裏拍から入る
<ツッコミ>:「裏かよ!」

「そんな事が笑い?」と思うかも知れませんが、
「アル、ゼン、アル、ゼン…」
「チ~ン、・・、チ~ン、・・」
と表拍から入る場合とは全く違う事を感じてください。

その後、

福徳:「イン、イン、イン、アル…」
後藤:「ドネシア、ドネシア、ドネシア、ゼンチン」

と、一回リズムを戻した後、

両手を大きく広げて、
福徳:「ア~ル~♪」
後藤:「ゼ~ンチ~ン♪」
福徳:「イ~ン~♪」
後藤:「ドネ~シア~♪」
福徳:「オ~ス~♪」
後藤:「トラ~リア~♪」

リズムを次々と変えて、
「思い込み」を裏切ります。

最後は、
再びリズムを変え、
更に4つで終らず、

福徳:「アル、アル、イン、イン、インイン、アルアル、インイン、アルアル、オース、オース・・・・・・・」
後藤:(あたふたしながら)「ゼンチン、ゼンチン、ゼンゼンチンチン・・・」
福徳:「アウトー!」
後藤:「無理やろ、それ……」

ディスコミュニケーションの笑いとしては、
確かにツッコミの言葉通り、
「覚えるのが不可能な出題」
という事になりますが、

最初の4分音符4つの「アル、アル、イン、イン」という4拍子1小節を超過して、
「インイン、アルアル、インイン、アルアル」と8分音符の連続へと、
リズムの変化を感じた事も大きいと思います。

「リズムの変化」による「思い込みの間違い」の笑いです。

□□□□□□おわり□□□□□□

後藤:「無理やろ、それ。食らい付いた結果、ゼンゼンチンチン言うてもうてる。危ない、危ない。」
福徳:「でも、あの食らい付きは感動したもん。あのアニメより感動した。」
後藤:「アニメ?」
福徳:「『母をたずねて三ゼンチン』」
後藤:「何やそれ!こびりつくやろ『ゼンチン』が、耳に!」
福徳:「お前、急にド~ネシア?」
後藤:「『どないしたん?』みたいに言わんでえぇねん!もうえぇわ。。。」

…と、最後はダジャレ。

ここまでの連続性から逸脱する笑いで、
終結感を感じさせて終わり。

見事なアウトロ。


サンドウィッチマン富澤さん
「二人の人間力が出てくれると、もっと最強。マシーンを見てるよう……」

この漫才に関しては、
どちらかというと、
マシーンのようだったからこそ、
「テンション」「リズムの思い込み」を作る事が出来たと思います。

ナイツ塙さん
「ゲームの説明をあんまりしないで、だんだんとお客さんと一緒になって分かっていくというのが理想的な展開だったなと思って……」

今後の展開が分からないからこそ、
「テンションリゾルブ」
「思い込みの間違い」
が成立すると言えます。

的を射た意見です。

オール巨人さん
「長いことやってるから、なんや、まだ続けるんかって思ったら、何かそっからおもろなんねんね。継続は笑いみたいなもんで、天丼の変形的なもの。訳わからんけどおもろかった。」

継続や繰り返しこそが、
「テンションリゾルブ」「リズムの変化」の「前フリ」として機能していますよね。

そういう部分を捉えたコメントだと思います。


「ディスコミュニケーション」の笑いは単純、、、

でもそれに、
「テンションリゾルブ」や「リズムの変化」を巧みに組み入れて面白くする、、、

ジャルジャルにしか作れないネタだと思います。


m(__)m


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