その気持ち悪さが突っ込み処です。
□□□□□□はじめに□□□□□□
昨年の話です。
昨年7月のももいろクローバーZの番組「ももクロChan」(テレ朝系)では、
ももクロの最年少「あーりん」のソロコンが特集されていました。
その中で放送されていたのが、
アンコール前に上映される映像コント「あーりん講座」の舞台裏の様子。
「あーりん講座」は、
イラストレーターのニイルセンさんがホワイトボードに手描きで描くイラストや文字を、
早送り、編集したものにナレーションをいれたアニメーション。
もちろん、
盛り上げるために面白く作られています。
とは言え、
あーりんのソロコンに来た人向けの笑い。
あーりんの事を知らなければ、
面白くないでしょう。
一応説明すると、
あーりんは、
ももいろクローバーZのピンク。
佐々木彩夏。
メンバーの中では最年少で、
押しが強い、圧が強い、いわゆるアイドルキャラ、ぶりっ子キャラ、、、というかキャラ設定。
□□□□□□替え歌□□□□□□
それを踏まえた「あーりん講座」のテーマは、
「夏あーりんがカワイイ理由」。
その中に、
「自分が調子にのるため」の「替え歌」を歌うシーンがありました。
実際の映像を見ないで、
文字情報だけでは伝わりにくいと思いますが、
その替え歌がこちら。。。
(何となくでいいので、実際に歌ってみて欲しいです。。。)
●『あーりんがじゃんけんする時』には、、、
「最初はグ~、じゃんけんポン!」ではなく、、、
♪「最初はグ~、でも最後はあーりん、結局あーりんって可愛いじゃ~ん、けんポン!」♪
●『あーりんがにらめっこする時』には、、、
「だーるまさん、だーるまさん、にーらめっこしましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷ!」ではなく、、、
♪「だーるまさん、あーりんとにらめっこしても、その可愛さに、みんなニヤけて負~け~る!」♪
…………(^_^;)
□□□□□□表向きの笑い□□□□□□
繰り返しますが、
ももクロのファンじゃないと面白くないでしょうし、
文字情報だけでは伝わりにくいと思います。
ただ、突っ込む事は出来ますね。
これらに突っ込むなら何と突っ込みますか?
もちろん、オリジナルと異なる事自体にも突っ込めます。
じゃんけんには、
「普通にやれや!」
等と突っ込めますし、
特に、
にらめっこに関しては、
ゲーム性すら否定されてるので、
「勝ち負け決まってるんかい!」
とかどうでしょう?
でも、それ以上に突っ込みたいのは、
「みんなが自分の事を可愛いと思っている」という事を疑わない、徹底したあーりんのキャラクター。
突っ込むなら、
「自分を何や思てんねん?」
とか。
< 基準 >:普通の人の自己評価
< ズレ >:あーりんの自己評価
<ツッコミ>:「どんだけ自分好きやねん!」「評価高すぎるやろ!」「自分を何や思てんねん?」「『謙虚』って言葉知ってるやろ!」
そんな常人と異なる自意識過剰なキャラクターがディスコミュニケーション。
……と、それが表向きの突っ込み処。
□□□□□□舞台裏では?□□□□□□
ところが、、、
実際の「あーりん講座」の映像内での突っ込みは、違いました。
もちろんあーりんのキャラが前提ですが、
制作者側が意図する笑いはそこじゃなかったようです。
その種明かしが、
舞台裏の映像の中にありました。
ナレーション収録現場における、
あーりんと東京03の飯塚悟志さん、
脚本を書いた作家のオークラさんらスタッフのミーティングでのひとコマ。
歌をメロディーにのせられず、やりにくそうなあーりんと、
それに対して説明するオークラさん、
さらにその説明に突っ込む飯塚さんのやり取り。。。
あ:「このあとリズムが分からないんですけど、、、」
オ:「(中略)『あーりんって可愛いじゃ~ん♪』、、、で止めると思いきや、、、」
あ:「思いきや、じゃんけんが始まる、、、」
……(中略)……
あ:「『だーるまさん♪(中略)ニヤけて負~け~る♪』……これであってますか?」
オ:「そうそう。」
あ:「あってた。」
オ:「こういうのは、そのまま替え歌にしたらそんなウケない。少し字面をズラした方がウケ易くなる。」
飯:「何を教え込んでんだよ!」
オ:「ネタ書く時ね。将来。」
飯:「ねぇよ!将来ネタ書く事ねぇよ!」
□□□□□□実際の突っ込みは?□□□□□□
過去記事、
「リズムをずらせっ!」
「何で笑ってるか分からん?…ジャルジャル」
などでも書きましたが、
アクションのタイミングを予想させ、
その予想させたタイミングをはずす事で、
「思い込みの間違い」の笑いのフォーマットを作る事が出来るという話です。
< 基準 >:予想したタイミングかと思ったら
< ズレ >:予想しないタイミング
<ツッコミ>:「リズム狂うわ!」「そのタイミング?」
ただ、リズムやタイミングが、
本来のリズムやタイミングと違うというだけ。
これ自体はシンプルだけど、
他の笑いのフォーマットと組み合わせる事で、
かなり効果的に笑いに結び付ける事が出来ると思います。
「あーりん講座」の「替え歌」も同じ。
「替え歌」で、
「言葉の意味を変える」事とは別に、
オークラさんが「字面をズラす」と表現するように、
「文字数」を替える事で、「リズム、タイミングをズラす」事も笑いに繋がる訳です。
予想がハズれて、
あるべき所に無かったり、速かったり、遅れたり、
そういう「つんのめる感じ」「引きずられる感じ」の気持ち悪さが突っ込み処です。
< 基準 >:終わるかと思ったら
< ズレ >:終わらない
<ツッコミ>:「続くんかい!」「結局じゃんけんする!」
< 基準 >:予想したリズム
< ズレ >:予想と異なるリズム
<ツッコミ>:「メロディーにのれてないやろ!」「文字数あってないやん!」「気持ち悪いわ!」
オークラさんは、
上記の笑いを前提に、
意識的にそういう作り方をしているという事です。
…という訳で、
「あーりん講座」の中での実際の突っ込みは、、、
♪「最初はグ~、でも最後はあーりん、結局あーりんって可愛いじゃ~ん、けんポン!」♪
→「何だそのリズムは?」
♪「だーるまさん、あーりんとにらめっこしても、その可愛さに、みんなニヤけて負~け~る!」♪
→「リズムが気持ち悪い!」
でした。
ただ、個人的には、
リズムのズレの笑いは、何が面白いかを気付かせずに笑わせる裏技で、
フォーカスすべきポイントではないと思います。
表向きの笑い、突っ込みは、
「どんだけ自分好きやねん!」
等の方がいいんじゃないでしょうか。
リズムのズレでも笑うという事に自覚的ではないかも知れない観客にとっては、
「リズムが気持ち悪い!」等の突っ込みは、
「あーりんの自意識過剰というディスコミュニケーション」の笑いを阻害してしまう欠点があると思います。
□□□□□□おわり□□□□□□
過去記事「リズムをズラせ!さすれば、、、」で引用した例では、
充分な前振りがありました。
タイミングを予想させる「基準の設定」。
しかし「あーりん講座」に関しては、
ホワイトボードに手描きで描くのを早送り、編集するという見せ方で、
スピード感が大事なので、
充分な前振りが入れられません。
「だーるまさん~」
「最初はグ~」
という部分がオリジナルのままなのは、
短いながらも、続くリズムを予想させる大切な前振りの役割な訳です。
みんなの脳の奥底に刻み込まれて、
しかも容易に引っ張り出せる、
「慣れ親しんだ遊び」「音楽」という存在だからこそ出来る方法だと思います。
あ、でも「最初はグ~」に関しては、
志村けんさんがテレビでやって定着したものだそうなので、
脳に刻まれているかどうかは、世代にもよるんでしょうけど。。。
m(__)m
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