前号続きです。
□□□□□□はじめに□□□□□□
ツッコミ総論1~4では、
以下のように、
ツッコミの外形を持つ言動の効果を、
大きく4つに分け、
さらにその4つを細かく考えてみました。
(A)笑いのフォーマットの再提示
(a)「笑いのフォーマットの存在を再提示」
(a')「笑いのフォーマットのズレを再提示」
(a'')「笑いのフォーマットの基準を再提示」
(B)笑いのフォーマットの落差拡大
(b)質的落差拡大
(b')量的落差拡大
(C)笑いのフォーマットの顕在化
(c)笑いのフォーマットの具象化
(c')笑いのフォーマットの掘り起こし
(D)笑いのフォーマットの創造
(d)ツッコミの機能を持たない場合
(d')ツッコミの機能を持つ場合
この様に、「ツッコミ」と一言で言っても、
その効果は色々ある訳です。
□□□□効果面からの解釈□□□□
ツッコミ総論1で引用した元祖爆笑王編『漫才入門』(リットーミュージック)の中では、
ツッコミの種類として以下の11種類が挙げられています。
・否定
・ドツキ
・ノリツッコミ
・例えツッコミ
・スカシツッコミ
・無視
・一刀両断
・リアクションツッコミ
・説明ツッコミ
・笑いながらツッコミ
・全力ツッコミ
ツッコミ総論1で書いたように、
これはツッコミの形式による分類ですね。
では、この11種類の形式のツッコミは、
効果面からは、
それぞれどのような効果を持っているのでしょう。
(順序を入れ換えています。)
○否定
「なんでだよ」「違うよ」など。
この言葉だけなら、そこにディスコミュニケーションのズレが存在する事を示すだけなので、既述の通り、
→(a)笑いのフォーマットの存在を再提示
加えて何が違うかを明示されるなら、
→(a')笑いのフォーマットのズレを再提示
あまり区別する意味のない分類のようにも思えますが、
ツッコミの基本型とも言えるでしょう。
○説明ツッコミ
説明の仕方にもよりますが、
基本的には説明により正しい有り様、つまり「基準」を示す事になるので、
→(a'')笑いのフォーマットの基準を再提示
ボケの言動がディスコミュニケーションになり、
明確な笑いのフォーマットを感受出来るのは、
〈 基準 〉が存在してこそ。
ボケ(=ズレ)が存在しても、曖昧、抽象的で笑いのフォーマットを感受できない場合などでも、
〈 基準 〉を明示することで笑いのフォーマットを成立させる、
場合によっては不可欠なツッコミの形式です。
○笑いながらツッコミ
「誘い笑い」の事だそうです。
ただのツッコミとの違いは、
「笑う事」が付加されているという事。
その「笑う事」は、
そこに笑いのフォーマットが存在する事を表現していますね。
→(a)笑いのフォーマットの存在を再提示
これだけだとただのツッコミ以上の効果は無いようにも思えます。
そんな訳ありませんね。
突っ込まなきゃいけない人が思わず笑ってしまうという感状表現の演技は、
意図的なディスコミュニケーション感の演出でしょう。
これは、
笑いのフォーマットの〈ズレ〉を、
より大きくみせている訳です。
→(b)質的落差拡大
○リアクションツッコミ
リアクションの程度によります。
相手の顔を見るだけなら、
→(a)笑いのフォーマットの存在を再提示
驚いたり戸惑った表情を見せるなら、ディスコミュニケーションを強調しているので、
→(b)笑いのフォーマットの質的落差拡大
○ドツキ
ツッコミの言葉と同時に相手を叩く事。
○全力ツッコミ
「どのボケに対しても、全力で突込むっていうやつです」と説明?されていました。
○一刀両断
「相手の話をばっさり切り捨てること」と説明?されていました。
これら「ドツキ」「全力」「切り捨て方」の作為的動作はディスコミュニケーションの大きさを誇張して表現していると言えます。
→(b)笑いのフォーマットの質的落差拡大
○スカシツッコミ
「『はいはい』というように、はぐらかすこと。」
○無視
「スカシツッコミを発展」させた形態と説明しています。
「スカシ」はいいとしても、
「無視」などの不作為は、
「何もしていない」、つまり何の効果も無いようにも思えます。
いえいえ、これ等の不作為的動作は、
「何もしていない」のではなく、
ボケのテンションとの落差を強調する事でディスコミュニケーションを演出しているんです。
→(b)笑いのフォーマットの質的落差拡大
○ノリツッコミ
既述の通り、
・分解して解釈すると、
→(b')笑いのフォーマットの量的落差拡大
したうえでの、
→(A)の笑いのフォーマットの再提示ですし、
・全体として見ると、
その言動に矛盾があるので、
→(d')笑いのフォーマットの創造(ツッコミの機能を持つ場合)
と解釈できます。
○例えツッコミ
既述の通り、一言で例えツッコミと言ってもその効果は様々です。
『漫才入門』の説明で挙げられていた例で考えます。
※結婚の挨拶で、緊張しすぎて、 足がガクガクと震えすぎている彼氏の動きボケに対して、
・「震えすぎだろ」(例えツッコミではない例)
→(a')笑いのフォーマットのズレを再提示
・「生まれたての小鹿か」(例えツッコミの例)
足元の心細さが強調されているので、
→(b)笑いのフォーマットの質的落差拡大
さらに、例え方にミスマッチを感じません?
例えば、
「そんな感動シーンちゃうわ!」
…とか突っ込みたくなりません?
ツッコミ自体にそんな違和感がありますよね。
< 基準 >:ただ情けなく、感動など無いボケにも拘わらず
< ズレ >:命の営みの感動的シーンに例える
<ツッコミ>:「誰も感動せんわ!」「そんないいもん違うやろ!」
そう考えると、
ツッコミ自体が笑いを作っているとも言えます。
→(d')笑いのフォーマットの創造(ツッコミの機能を持つ場合)
※相手のお父さんに「娘はやれん」と言われ「いやだ~いやだ~娘さんが欲しい~」と駄々
をこねる彼氏に対して、
・「子供か!」(簡単な例えツッコミの例)
この例えはそのままでしょう。
→(a')笑いのフォーマットのズレを再提示
…の枠を出ない。
・「おもちゃ売り場の子供か!」(細かい例えツッコミの例)
"大人げなさ"というディスコミュニケーションを強調していると言えるので、
→(b)笑いのフォーマットの質的落差拡大
□□□□□□まとめ□□□□□□
ツッコミの言動には、
ツッコミ総論1~4で説明したような効果がある事は間違いないでしょう。
そして今回説明したように、
ツッコミ方によってそこにある効果が異なるのも間違いないでしょう。
それぞれのツッコミの形式の効果が異なるからこそ、
それぞれのツッコミの形式独特の面白さがある訳です。
では、どのツッコミが一番面白いんでしょう?
ざっくり言うと、
色々な効果を併せ持つツッコミの方が、
面白いのかな?
…と思うんですが、、、
まぁ、その場にあったツッコミが正解って事ですかね。
m(__)m
にほんブログ村