ワーク・ライフスタイル

ミレニアル世代に人気のFIREムーブメントとは?実現するための条件とは?

FIRE

“FIRE”という、ライフスタイルムーブメントを知っていますか?

2010年代からアメリカのミレニアル世代の間で人気が高まり、日本では2019年ごろから日本語に翻訳された書籍が書店で並び、若者世代を中心に注目が集まっています。

“FIRE”とは?

“FIRE”とは、”Financial Independence, Retire Early”の頭文字をとってつけられた略称で、Financial Independence(経済的独立)を達成して、Retire Early(早期退職)を実現することを目標とするライフスタイルを啓蒙するムーブメントのことです。

収入増加と節約でお金を貯め、不労所得で暮らせる状態を確立した上で早期にリタイアして自由な人生を送るというライフスタイルのことです。

従来のアーリー・リタイアメントとの違い

若くして仕事をリタイアして悠々自適に暮らす「アーリー・リタイアメント」という考え方は昔からありますが、それとは何が違うのでしょうか?

これまでは「お金持ちだけが実現できる夢のライフスタイル」というイメージが確立していました。

一方、”FIRE”では、特定のお金持ちに限らず、普通の人でもアーリー・リタイアメントが可能になるという点が大きく異なっています。

マイホームやマイカーをはじめとして「所有」よりも「共有(シェア)」することを当然のように捉える価値観を備えたミレニアル世代には、消費を抑えて自分らしい時間を獲得することを目指す”FIRE”のコンセプトに支持が集まるのは当然と言えるかもしれません。

少子化による人口減少と高齢化が進み、国家財政破綻が不安視され、将来の年金さえもあてにならない日本では、アメリカよりも支持が集まりそうな予感があります。

FIREを実現するための2つの条件

このムーブメントにおける基本的な考え方として、以下の2つの条件がFIRE達成の目安となっています。

FIRE達成の目安

  1. 貯蓄率を高めて生活費の25年分を貯蓄する
  2. 投資のインフレ調整後の利回りを4%以上にする

それでは、2つの条件についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。

①貯蓄率を高めて生活費の25年分を貯蓄する

“FIRE”では、リタイア後の資産の取り崩しを4%とするというルールを提案しており、年間支出の25倍の貯蓄額を目標として設定しています。

年間支出の25倍の貯蓄額を年利4%で運用していけば資産を減らすことなく生きていけるという考え方に基づいています。

この貯蓄額を早期に実現するために、FIREを目指す人はファイナンシャルプランナーが一般的に推奨する10〜15%に対して50%を超える貯蓄率を目標にしています。

仮に貯蓄率が75%だとすると、25年分の貯蓄には10年もかからないとされています。

②投資のインフレ調整後の利回りを4%以上にする

年間支出の25倍の資産の運用利回り4%= 年間支出額ですから、資産を減らさないためには年利4%以上で運用することが必要になるという考え方です。

想定運用利回りを4%以上と想定して、年間支出の25倍の貯蓄が必要と設定しているのですから、①と表裏一体です。

仮に利回りを3%と想定するなら、年間支出の33倍の貯蓄額が必要になる、ということですね。

“FIRE”に対する批判

“FIRE”に対する代表的な批判として以下の2つが挙げられます。

貯蓄額を達成することの難しさ

“FIRE”は高所得者のものであるとして、低所得の人がFIREに必要な貯蓄額を達成することは難しいのではないかという批判があります。

これは当然の指摘だと思います。支出が200万円の人(家庭)であれば必要な貯蓄額は5000万円ですが、収入が200万円では貯蓄に回すことができませんので、一生達成することはできません。

支出を抑えることは前提条件として、収入を増やせるかどうかということが達成に向けた大きな鍵となるでしょう。

一方で、支出が200万円であれば必要な貯蓄額は5000万円であり、1000万円の人であれば2.5億円となるので、ある程度の収入があるとすれば、”FIRE”の達成には支出額を抑えられるかどうかの方が大切なポイントになるでしょう。

投資実質利回り4%の難しさ

もう一つは、早期退職者の貯蓄が十分でないという批判があります。

人生100年時代においては、”FIRE”による退職後の期間は70年ほども続く可能性があり、30年の伝統的な退職期間のために開発された4%ルールを適用することは不適切であるという指摘があります。

一方で、2020年10月20日現在のS&P500の過去10年間の利回り(配当金と米国配当課税込み)は年13.01%(ドル建て)であり、アメリカのインフレ率は2%程度のため、インフレ調整後の利回りは4%を大きく超えています。

未来のことは分かりませんので断言はできませんが、根拠の薄い批判といえます。

“FIRE”を実現するためのポイント

“FIRE”を実現するための、「支出の25倍の貯蓄」「投資利回り4%以上」という基本的な考え方とは別に、”FIRE”を実現するために大事なポイントを筆者なりに考えたところ、以下の3点が思いつきました。

  1. 早く始めること
    若い頃はお金を使わなくても楽しめることは多いし、投資における”複利の効用”を得ることができる
  2. 価値観のあうパートナーを見つけること
    住居や車の所有・子供の教育方針・保険が支出額を大きく左右するため
  3. 自己投資はすること
    収入を最大化するためには自己投資も必要。ここをケチりすぎると支出の最小化はできても収入が増えない

終わりに

筆者は団塊Jr.世代にあたり、バブル崩壊による就職氷河期などを経てきているので、20代のころからこの”FIRE”のコンセプトに近い考え方は持っていました。

残念だったのは「投資」に対するリテラシーが全くなかったので、40代になるまで全く投資をせず、貯蓄に回していたので随分と機会損失があったことです。

あとは、人はいつ死ぬか分からないので、将来にばかり重きを置くよりも、節約はほどほどにして今を楽しむためにお金を使うことも意識していました。

30代前半で擬似アーリー・リタイアメント体験をした(この経験はこちらの記事に記載しています)ので、早くリタイアすれば良いというものでもないと考えて、働く楽しさも追求しつつやってきました。

何れにしても、価値観は人それぞれなので、どのような生き方も否定する気持ちはありません。私の経験談やこの記事が読者の方のご参考になれば本望です。

注)当記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、証券投資取引に関して何らの推奨・勧誘も目的とするものではありません。