体外受精治療が生まれてくる子供のがん発症リスクに影響を与えないのか?

 
私の知り得る限り、この問いに対する答えうるデータはこれまでに無かったと思いますし、重要な検討事項であると思ってきました。
 
 
デンマークで出生した子供についての検討です。
 
母親が受けていた治療別に、自然妊娠、クロミッド、hMG注射、体外受精、顕微授精、凍結肺移植で産まれた子供に分け、小児がんの発生率を比較しています。
 
検討の結果は、小児がん全体については、自然妊娠の場合で10万人あたり17.5人の発症リスクであったのに対し、
 
凍結胚移植で出生した児は、10万人あたり44.4人と、統計学的に有意に多いという結果でした。
 
がん種別には白血病と交感神経系腫瘍のリスクが増加したとのことです。
 
また、その他の不妊治療はリスクを上昇させませんでした。
 
今回の結果を大きなリスクとみるか小さなリスクとみるかは主観的な判断になると思います。
 
胚凍結は今の体外受精治療には欠かせない工程であり、多くのメリットがあります。
 
ただ、このような安全性の確認が十分に行われないまま、急速に広まってしまったことは否めません。
 
他の治療項目がリスク上昇につながらなかったことからも、胚凍結を扱う医師は、その子の将来に何らかの影響を与える可能性があることを常に意識する必要があると感じます。

少なくとも、「みんなやってるから安全だ。」などと、安易に言ってはなりません。
 
今のところ小児がんのみの結果ですが、今後、あらゆるがん種や成人病等の発症リスクについて、注意深く検討していく必要があると思います。