前回デュラン・デュランの「A VIEW TO A KILL」のお話をしましたが、今回は本編「007/美しき獲物たち」(1985年)。ロジャー・ムーア最後の007です。
"Bond - A View To A Kill - 1985 _03" Photo by Michael Newhouse
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ある特殊なマイクロチップの解析結果からエレクトロニクス事業を営むマックス・ゾーリン(クリストファー・ウォーケン)が怪しいと睨んだMI6にミッションを命じられたジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)。
ボンドはゾーリンがシリコンバレーを壊滅させて市場独占を狙っていることに気づく。
さらにボンドはゾーリンと女殺し屋のメイデイ(グレイス・ジョーンズ)が、ステロイド実験による強化人間であると知る。…というお話。
悪役のグレイス・ジョーンズのインパクトが素晴らしい。
強靱でしなやかなフィジカル。美しき野生の豹のようです。
エッフェル塔やゴールデンゲートブリッジでの攻防シーンも印象深いですね。
ロジャー・ムーアの007は、それまでの007像を壊してきたところがありまして、パロディや公開当時の流行やポップカルチャーを柔軟に取り入れた作風が特徴です。
肝心の映画の方ですが、ムーアが当時57歳というご高齢ゆえ、アクションはスタントマンがかなり吹き替えております。
元々ムーアはアクションがアレですけども、12年という時間のなせる技もあり、致し方ないですね。
僕はムーア版007に辛めではありますが、それを差し引いても本作の出来はう~ん…。
悪役の設定も現代的だと思うので、余計に残念な感じでした。
これもムーア・ボンドの限界だった気がします。
でも、ムーア・ボンドのユーモアや、涼しい顔でピンチをクリアし、敵方の悪女がボンドに惹かれた後に改心する「らしさ」は良かったですね。
あとはミッションを成功させたボンドがボンドガールに愛を囁き、MI6の面々に「邪魔しないでね」となる定番のラストシーンも。
こういうエンディング(「007的ハッピーエンド」と言ってよいだろう)は時代的にもう作られないのでしょうね。
往年のファンとしては正直寂しいところがあります。
そういえば、以前マシュー・ヴォーンも「スパイ映画がつまらなくなった」と言ってましたね。
"Tanya Roberts" Photo by rocor
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ボンドガールのステイシーを演じたタニア・ロバーツはインパクトが薄く、ここももったいないかな、と。
ロジャー・ムーアの007では、ボンドガールが物語のあくまで花を添えるくらいのポジションでした。
ボンドガールがストーリーに重要な影響を与えるような、大きな立ち位置になるにはもう少し時を待たねばなりません。
そういう意味では、悪役でしたがボンドガールと言ってよいグレイス・ジョーンズの方が役的にも大きかったですね。
タニア・ロバーツは「チャーリーズ・エンジェル」シーズン5(1980~81年)でエンジェルの1人、ジュリー・ロジャースを演じています。
健康美が眩しい80年代的美女のタニア・ロバーツはこちらの方が印象深いと思いますね。