復讐に身を焦がし誘惑のワナに身を投じれば人はダークサイド、闇落ちしてしまうのは「スター・ウォーズ」でも再三描かれたこと。
BSプレミアム「ダークサイドミステリー『ナチスをだました男 20世紀最大の贋作事件』」でオランダの画家、ハン・ファン・メーヘレン(1889年10月10日-1947年12月30)日の人生が紹介されていました。
フェルメールの贋作を得意としたメーヘレン
"Meegeren, Han van - Женщина, читающая письмо, 1940, 58,5 cm х 57 cm, Холст, масло" Photo by pixelsniper
source: https://flic.kr/p/2fxF7bt
人間の欲望や弱さについて考えさせられる内容でしたね。番組の紹介と私見を、と思います。
元々画家として将来を期待されたメーヘレンですが、彼の古典的な手法が新しい現代美術隆盛の当時評価されなかったそうです。
生活のため絵の修復をするメーヘレン。知人に頼まれて修復した絵を知人がオークションに出品、高値で売却。
しかし、その後専門家によって作品が贋作と認定され、メーヘレンは運悪く贋作事件の関係者にされてしまいます。
これはメーヘレンにとっては可哀そうな不運だったのですが、ここから彼は闇落ちしまったんですね。
メーヘレンはオランダ美術界に復讐すべく5年をかけて(!すごい負のパワーです)フェルメール風の贋作「エマオの食事」を描き、鑑定家に本物と認めさせ、まんまと大金を手にしたと言います。
その後も贋作を描いては莫大な金を手にしたメヘーレンですが、ある贋作をナチスの高官が購入したと聞き、バレたら命の保証はないという事態に・・・。
メーヘレン
"10-29-1947_03077 Han van Meegeren" Photo by IISG
source: https://flic.kr/p/9igg9w
「事実は小説よりも奇なり」と言いますけども、映画にでもなりそうな人生です。
贋作で得た金で富豪となったメーヘレンは酒とモルヒネと金に物を言わせた無茶苦茶な女性関係に溺れる生活だったそうです。
酒池肉林の生活の結果、メ-ヘレンの心身はボロボロに。
第二次世界大戦当時のオランダ国民は悲惨な飢餓状態だったので、余計に罪深い感じがします。
メーヘレンの人生と最期を考えると、美術への価値や世間の評価も水物という感じがしますが、それ相応の終わり方だったように思えました。
"Meegeren, Han van - Омовение ног, 1943, 122 cm х 102 cm, Холст, масло" Photo by pixelsniper
source: https://flic.kr/p/2fsZGEy
番組のコメンテイターの方々の語りがとても興味深かったですね。
なぜメ-ヘレンは天才贋作者となることが出来たのか?なぜ専門家たちや買い手は彼の贋作に騙されたのか?その理由についての解説がおもしろかったですね。
作者も鑑定家も買う側も自分自身の欲望のワナにはまってしまったわけですね。
欲望が強烈であるほど真実を見失うのが人というもの。そしてダークサイドへ堕ちてゆく。
戦後国家反逆罪に問われたメーヘレンは売却した絵画は自分が描いた贋作であることを告白、裁判でそれを証明した。
"10-29-1947_03077 Han van Meegeren" Photo by IISG
source: https://flic.kr/p/bgLcpV
そして、確かに本来美の基準は専門家ではなく個人のもの。自分が観て「美しい」と思えばそれが正解。
だから作者・題名を隠して作品だけ観て評価したって良いわけで。・・・
これは芸術に限りませんね。価値基準はすべて個人のものです。
メーヘレン事件にポジティブな点があるとすれば「美の基準は自分自身の価値観だよ」ということを考えさせられることかな・・・と思いました。
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