裏口上場SPAC、ソフトバンクGが喰いつきニコラが失墜

新規株式公開(IPO)が2020年になって米国では様変わりしています。特別買収目的会社(SPAC)による上場が急増しています。

 

SPACとは上場の段階では事業を営んでいない「空箱」です。スタートアップなどの未公開会社を買収することを目的とした会社で、上場により投資家から得た資金で買収します。買収先が見つかるとその会社と合併しようやく実態のある会社となるわけです。

もし見つからなかったら?2年程度で買収先が見つからなければ投資家に資金を返す仕組みになっていることが多いようです(SPACとは)。

このスキームの鍵を握っているのは、SPACを設立する者がもつ優良企業を見分ける「選別眼」です。お目にかなった企業はIPOの手続きなしで上場できるので、その乱用への懸念から「裏口上場」とも揶揄されています。




ソフトバンクGが喰いつく

日経新聞10/15『ソフトバンクG「空箱」年内上場も』によれば、米市場では7〜9月のIPOによる市場調達額630億ドルのうち、半分をSPACが占めています。掲載のグラフによれば、2017年頃から増えてきたものの昨年の資金調達が200億ドルに満たないレベルでしたが、今年は伸びが突出しており早くも500億ドルを超えています。

ビジョン・ファンドの資金集めに苦しみコロナ禍の相場に翻弄されているソフトバンクグループ(SBG)が、SPACに喰いつきました。当記事によれば、数百億円規模の資金集めにとどまる見込みで、10兆円規模で運用するSBGにとっては潜在的な投資先に上場までの手続きや期間を短縮したいとのニーズがあるようです。

 

EVニコラが失墜

SPACの乱用を疑わせる事態がすでに起きています。日経新聞10/8『米新興EVに詐欺疑惑』によれば、クルマを1台も売ったことがない電気自動車(EV)メーカーのニコラが詐欺疑惑で揺れています。SPACによって上場した企業で一時2兆円もの評価を市場から受けていました。
しかし、試作車が自重で坂道を転がっているだけで電動でなかったり自社開発をうたう基幹部品が外部からの調達品だとの指摘を受け、ニコラは一部は認めているようです。株価は急落です。
SPACを設立したのが自動車大手GMの元副会長です。指摘の報告書が公開後、GM株は1割近く下落したとのことです。
因みに、ニコラの社名は、ニコラ・テスラという発明家にあやかったものだそうです。イーロン・マスク氏率いるEV大手テスラととの組み合わせで記憶に残りやすい名前ですね。

 

まとめ

ユニコーン企業がSPACによる裏口上場が主流となるのでしょうか。相場のバブルとならないよう願います。