黒柴スポーツ新聞

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勝つための最善手~感情むき出しで悔しがった長谷川とムーアを交代させた工藤監督

いいもの見たな、と思った。日本シリーズ第3戦、2点リードのソフトバンクはさらに6回も満塁とチャンスを広げ、代打長谷川勇也が登場。鋭い当たりを飛ばしたが、セカンド吉川がダイビングキャッチ。素早く一塁に投げて、ヘッドスライディングの長谷川は惜しくもアウトになった。その時だった。長谷川が手のひらをグラウンドに叩きつけて悔しがったのだった。しかもそのまま額を上げなかった。ここで1点取っておけば巨人には相当のダメージを与えられる。長谷川はそれが分かっていたからこそ、何としてもセーフになる必要があったのだった。

が、繰り返すがソフトバンクは2点リードしていた。あの悔しがり方。勝負への飽くなき執念。これこそがソフトバンクの強さの源である。長谷川のヘッドスライディング&悔しがり方はまさにそれを体現していた。悪いが巨人はそれが乏しい。例えば最終回。岡本和真が三塁後方にゴロを放った。待って捕らざるを得なかった松田宣浩が急ぎ送球したが、微妙なタイミングとなった。ヘッドスライディングは必ずしもコンマ何秒を生み出せるとは限らないが、必死さや姿勢は伝わってくる。だが岡本は頭から突っ込まない。あそこで頭から行くことにはたとえアウトになったとしても意味がある。負けるにしてもファイティングポーズをとっていたかどうか。そこをファンは見ている。

2点で終わらず、と工藤監督もそこを評価していた。3点目、中村晃イムリー。4点目、グラシアルタイムリー。まだだ、もっと、もっと……その気持ちが得点につながっている。必ず勝つ。それを目指している。先発ムーアがノーヒットノーランを狙えるくらい好調だったとしても、そこは代える。かつて物議をかもした山井大介から岩瀬への完全試合リレーを思わせる展開で、ホークスファンの中にもムーア続投でよかったのでは?という声もあろう。しかし、勝つための最善手はムーアよりはモイネロだった。ただそれだけのことだろう。

勝つための最善手をめぐり、ある人は大和田常務かと思うくらい感情むき出しに悔しがり、ある人はドライに好投のピッチャーを交代させる。一見正反対ではあるけれど、目指すはチームの勝利、そして4年連続の日本一。常に全力。主力のユニフォームに毎日泥がつく。私はそんなソフトバンクホークスが大好きだ。


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