こんにちは
ホリスティック獣医Saraです
ここのところ、手作り食に関連したまじめな犬猫の栄養学のお話をしています
ちょっと難しいかもしれませんが、できるだけ分かりやすくなるように心がけて説明していますので、是非最後まで読んでみてくださいネ
ちなみに今回は連載第3回目ということなので、今まで読んできていない方がいらっしゃったら、最初から読んでいただくことをお勧めします
それぞれの記事はコチラです!
今回は猫ちゃんで起きたカルシウムやビタミンDなどに関連した栄養失調・骨折について
猫ちゃんに関しては、以下のような栄養失調に関連した病気の報告があります
英国からの報告:2015年
サプリメントなしで生肉を与えられていた猫で、栄養の問題によるホルモンのアンバランスが起こって骨折がおきた。
レントゲン検査すると、骨が薄くスカスカになっていた
(※解説:多くはカルシウム欠乏・過剰なリンによってホルモンのバランスが崩れて栄養性上皮小体機能亢進症というホルモンの病気になります)
手作り食にカルシウム源となる骨や卵の殻を使わない場合は、サプリメントを入れないといけません・・
ちなみに小魚を使っていても量によっては不足がちになります。
⇒こちらは英国獣医学雑誌 Vet times の2015年11月16日発行の記事に載っています(会員以外は見られません)。
<スイスからの報告:1999年>
6頭の3歳猫
栄養のアンバランスから、栄養性二次性上皮小体機能亢進症というホルモンの病気になった。
カルシウム欠乏、ビタミンD欠乏、骨が薄くなっていて肩甲骨、骨盤、鼻の骨、背骨などの骨折が見られた。
筋肉のひきつり、興奮、発作なども多く出た。
4頭は治療によって回復したけれども、2頭は状態がさらに悪化して回復の見込みがなかったため安楽死されたということです(1)。
デンマークからの報告:2010年
新鮮な肉と多少の牛乳、ヨーグルトを与えられていた2頭の猫(3ヶ月齢・アビシニアン)
びっこ、筋肉のひきつり、便秘、有痛性排尿困難(痛くてオシッコを上手くだせない)などの症状
離乳の時期から市販のフードをあまり食べてくれなかったとのことで、飼い主さんが生肉を与えるようにしたとのこと(おそらく骨なし・サプリなし・もしくは量の不足)。
骨盤や後肢あたりを触られるのを嫌がる(痛いため)などの反応が見られていた。
一般的な血液検査では異常なし。
ホルモンの検査で異常が見つかり、栄養性二次性上皮小体機能亢進症と診断された(2)。
レントゲン検査で骨が薄くなっていること、前肢や後肢などの骨折、骨盤も含め腰のあたりで背骨が折れていることが分かった。
イランからの報告:2008年
飼われている猫40頭と野良猫40頭における2年かけた調査の結果。
多くの食事は肉、内臓がメインで牛乳をかけた内容など。
野良猫でも飼われている猫どちらでも、とくに3ヶ月齢以下の子猫でカルシウムとリンのアンバランスによる骨の問題が多かった。
骨が薄くなって、骨盤、背骨の変形などが見られた(3)。
日本からの報告:2013年
2ヶ月齢のオス猫(雑種)
食事は鶏肉中心の手作り食(他の食材や骨入りかどうかは不明)
3日前に高いところから落ちてから右後肢のびっこを引くようになったため、診察にきたとのこと。
レントゲン検査を行ったら骨が薄くなっていて後肢の骨折があった。
(※解説:骨が薄くなっていたのは3日前に落ちたこととは関係ありません、たまたま見つかったということです)
血液検査を行ったら、カルシウムとリンの数値が下がっていた。
ホルモンの検査(PTH:パラソルモン)をおこなったら非常に高くなっていて、栄養性二次性上皮小体機能亢進症と診断された。
子猫用のキャットフードに切り替えて治療を行ったら改善していった(4)。
栄養性二次性上皮小体機能亢進症とは
手作り食に含まれる栄養のバランス(とくにカルシウムとリン)が悪かったりビタミンDやカルシウムなどの量が少ないと、上皮小体ホルモンが増えてバランスをとろうとします。
例えばこのホルモンは、血液の中に含まれるカルシウムが足りないので、今度は骨を溶かして(正確には壊して)骨の中に含まれるカルシウムを血液の中に移動させます。
血液の中に含まれるカルシウムが足りないと発作が起きるようになって命に関わるので、コチラのほうが重要ということで優先されるからです。
でもこれが繰り返されると逆に悪循環になって、別の問題が起きてきます。
血液の中のカルシウム濃度は保たれるけれども、骨の量が減ってしまうので次第に骨がスカスカになるのです・・。
そのため背骨などの骨が変形したり、ぶつけてもいないのにカラダのいたるところが骨折するようになります
ポイント
鶏肉がいけない、生肉がいけない、肉食がいけない・・などということではありません。
手作り食の栄養バランスが悪かったことが原因です・・
初期の段階では、血液検査ではカルシウム、リンの数値は殆ど異常も出ないし明らかな症状もないので、見た目平気だから問題ないだろうというのは言えません
実際に骨折していないから平気とも言えません。
骨折していなくてもカルシウム不足が疑われるケースがたくさんあるからです。
カルシウムやビタミンDの不足した手作り食を毎日続けて与えるようになると、徐々に身体のなかで不足していっていきます。
数値が下がってくる頃はかなり進行していて、痛みがでてきます
「びっこを引いている・・関節炎かもしれない?もしかして年のせい?」と思っている飼い主さん、
完全100%手作り食を与えているのであれば、それはカルシウム不足が関連しているかもしれません。
子犬・子猫のほうが骨の問題が出やすいですが、成犬・成猫でも報告があります。
そのため、手作り食を開始したら子猫や子犬の場合は1-2ヶ月後、成猫や成犬の場合は4-5ヶ月後くらいにレントゲン検査を受けるようにしましょう
ー栄養の問題はよっぽど進行しない限り検査しないと殆ど分からないですー
まじめな獣医栄養学の話でした~
参考にしていただけたら嬉しいです
それではまた
人気ブログランキングに参加しました
ポチっと押していただけると嬉しいです^^
<参考文献>
(1)Tomsa K, Glaus T, et al. Nutritional secondary hyperparathyroidism in six cats. J Small Anim Pract 1999; 40(11): 533-539.
(2)Moarrabi A, Mosallanejad A, Khadjeh B, et al. Nutritional secondary hyperparathyroidism in cats under six-month-old of Ahvaz. IVJA 2008; 3(1): 59-65.
(3)Dimopoulou M, Kirpensteijn J, et al. Nutritional secondary hyperparathyroidism in two cats: evaluation of bone mineral density with dual-energy X-ray absorptiometry and computed tomography. Vet Comp Orthop Traumatol 2010; 23(1): 56-61.
(4)Nagata N, Yuki M. Nutritional secondary hyperparathyroidism in a cat. J Anim Clin Med 2013; 22: 101-104.
最新の犬猫の栄養学のお話・ハーブ入り!手作り食のポイントについてもお伝えしていきます!
受付開始!!早割は6月末まで
7月15日(月)13時~:都内にてセミナー
※終了後にお茶会(健康相談会)も同時開催!
ハーブをうまく活用しよう【夏対策!ワンちゃん・猫ちゃんのためのホリスティックケア&手作り食】
夏に起こりやすい症状・気をつけるべきこと・ハーブの取り入れ方・食材の組み合わせ・犬猫の最新栄養学・調理の仕方などについても触れていく予定です
英国産オーガニックハーブティも試飲!
お申込み受付開始
詳細はコチラから
いよいよ受付開始!!
7月26日(月)12時半~:都内にて
FB Animal Clubランチ会
ペットフードのこと
手作り食のこと
抱えている病気のこと
自宅でのケアのこと
シニア犬の世話のこと
ストレス?行動の問題のこと
かかりつけの先生のこと
ワクチンのこと
ホリスティックケアのこと
などなど・・・・なんでもご相談OK!^^
ドッグカフェでざっくばらんにお話しできますヨ!
ワンちゃんを連れてきていただければ、直接その場で見てお答え可能です(ただし分かる範囲になります)。
検査結果・尿検査結果・アレルギー検査結果など持ってきてもOK!
猫ちゃん・うさぎさん・フェレットさん・ハムスターさん・鳥さんなど、他の動物を飼っている方でもOK!
これから動物を飼おうかなぁと考えている方もOKです!
お申込み受付開始
詳細はコチラから
著書(2018年出版)
ペットのお悩み解決!メール相談室「犬猫に長生きしてもらうためのホームケア」
アマゾンのアカウントをお持ちの方へ:もしもお時間がありましたら、レビューを書いていただけると嬉しいです!
今後新たに出版する際に参考にさせていただきますmm
メルマガ登録をご希望の方へ
メルマガでしかお伝えしていないことがあります!
「メルマガ登録したいのですがどうやったら登録できるのでしょうか?」とのお問い合わせが増えてきましたので、フォームを設置することにしました
ご希望の方はコチラのフォームからご入力くださいませ
(毎月1-2回のペースで発行しています)
獣医師の方へ
<獣医ホリスティック医療研究会のメンバーも募集中です>
日本だけではなく、イギリス、アメリカ在住の日本人獣医師も含め、現在少しずつ人数も増えてきています
研究会詳細についてはコチラをご覧ください
6月4日20時~WEB勉強会を行います。
(興味のある獣医さんはお気軽に直接メッセージください)
動物たちが健康的に,毎日笑顔で過ごせますように
イギリスからお届け!ホリスティック獣医Saraでした
※リブログ歓迎です
ご自由にどうぞ